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お値段以上のお買い物 下

りょうじ 2019年12月01日18:40
>美優様

 「あのー、タグ……」
 「あ、はい。外しときますね」
 女子高生風店員さんはとても気が利く方でした。
 「あ、お願いします」

 ショーツとブラを慎重にハンガーから外すとタグを切ってくれます。

 「普段使いですか? ギフト包装もできますけど」
 「あ。普段です」
 「これから自分で身につけます」という言葉は飲み込んでしまいました。

 「値札はお持ちになりますか?」

 「いえ、けっこうです」
 「じゃ、処分しますね。ポイントカードはお持ちですか?」
 「いえ」
 「今すぐ、つくれますけど」
 (今すぐ、支払いを済ませて帰りたいんですけど)

 「200円ごとに1ポイント。500ポイントで500円分のお買い物券と交換できますよ」
 「ああ、いえ、いえ」
 「全然いいですよ。公式アプリもできたんで、ダウンロードの仕方、入れときますね」

 ショーツを小さく小さくたたんで、ブラはふたつに折りしながら、女子高生風店員さんは口を休めません。

 ここでまた思わぬ一言。

 「あ、すいません。値札捨てちゃうと交換できなくなりますけどいいですか」

 「そうですかあ。じゃ袋に入れといてください」
 (身につけて、サイズが合わなかったら取り替えにこれるかな?)

 ずいぶんやりとりしました。

 でも、幸い後ろにお客さんはいません。
 ここでもうちょっと貴重な体験を長引かせて、自分をいじめたいというマゾの欲求が膨らんだのです。

 「PAY PAYって使えます?」
 もしPAY PAYで払うとしたらけっこう時間がかかります。画面が暗いと読み取れなかったりするし。
 スマホを取り出し、画面で「設定」を開いて、読み取りやすいように明るさをアップしようとしたら。
 「すいません。カードだったら大丈夫ですけど」

 仕方なしに現金で支払うと、こんなに客に「ありがとうございました」と女子高生風は微笑んでくれたのです。

 でも、結局、最後まで自分用とは伝えられませんでした。

 まだ娘になりきれてないですね。

 本当にごめんなさい。



美優  2019年12月1日19:12
>りょうじ

 こんばんわ。
 詳細なレポートありがとう。緊張感が伝わってきたわよ。自分で着けると言えなかったのは残念だけど、初めてにしてはよく頑張ったわね。
 店員さんは言わなくても気づいてると思うわよ。後できっと女装趣味の変態がきたと噂してるわよ。
 良かったわね。

 ご褒美も考えとくね。

りょうじ 2019年12月1日19:19
>美優様

 「女装趣味の変態がきたと噂してる」

 ああ、あの店員さんたちみんなに知られてしまったんですね。

 その通りですもんね。

 とにかくこの後、自宅に戻るまでの時間が本当に長く感じました。
 そして商品を広げるのにこんなにどきどきしたことはありませんでした。

 ブラはD80。ショーツはLでした。
 ブラをつけるのはちょっと難しかったです。
 フックをかけて輪っかになったのをかぶるか、はくか。
 やっぱりかぶるのが正解ですよね。

 胸の圧迫感と肩紐の感覚。リュックとは違います。
 初めてですもん。
 ああもっとちゃんと女の子になりたい、と願っている自分がいました。
 なんかふんわり包み込まれた感じ。
 優しく、温かく胸を抱かれた感覚?

 男の人に抱かれるってもっといいんだろうなぁ。

 ショーツはあまりに柔らかなフィット感に驚きました。
 それにひきかえ男子のボックスブリーフは麻袋です。

 大きな鏡に裸にブラ、ショーツの自分をうつして何回転かしました。
 おなかがたるんでる! ヒップラインが垂れてるのが恥ずかしい。ヒップアップしなきゃ。でも年だしなあ。

 スマホを取り出して、セルフタイマーをセットして写します。
 でも緊張してたんで、身体検査みたいですよね。

前

 醜いけど後ろも。

後ろ

 この変態ぶりを大勢に晒されたいとも思いました。

 そのあとは自分でも信じられないことが起こったのです。
 自分のなかのサドの血が騒いだのかもしれません。 
 男モノの下着を、ショーツ、ブラの上に履き、服を着てみました。
 うふん。胸の膨らみがセーターの上からも分かっちゃう。


 80のDカップ。自分でそっと胸を揉んだりしてみました。
 乳首がパットに触れてちょっとくせになりそう。

 この写真をあちこちで晒されて欲しいんでしょ。でもその前に女装マゾぶりをもっとリアルで知ってもらいたいんでしょ。

 そんな声が頭の中で何度も響きペニクりが膨らみました。

 でも、美優様のミッションを十分に果たせなかったからペニクリをいじっちゃダメ。

 どんどん自分を責める自分がいます。
 そう、今度はもっと人の多いイオンモールに行くのよ!
 女性の下着をつけたままショーツ売り場に足は向いていました。
 外見は男のまんま、でも心はどんどん女性になってます。

 イオンの2階フロアの真ん中あたりにある女性用下着は実用品ばかりでした。
 そう、かごに入れてまとめ買いをする商品がずらり。
 年少さんから老婆用まですべての品揃え。

 でも、ふと前をみると、ずっと奥の壁際にワコールコーナーがあるではありませんか。
 女の子だから、すいすい近づきます。
 だって、お見せできないけど、下着はブラとショーツだけですもん。
 ブリーフを重ねてはいてたら変態なので、出がけに脱ぎました。
 近づくと、売り場には熟女店員さんと、レジには20代の美しい女店員さんがいらっしゃいます。
 熟女店員さんは生命保険のセールスレディ風。下着のことはもちろん、人生設計も、世の中にはいろんな人や家族がいることも、多くの人が秘密を抱えていることも、すべてをわかってらっしゃる。

 意を決してお店に入って、レジ横の壁に飾ってある高級品の前に立ちました。

 生保レディさんが横にさりげなくつきます。
 サルートという商品でした。わざと手に取ったTバックは薄い水色で、4000円台です。こんな小さくて、穴だらけなのに。セットのブラの曲線も申し分ありません。
 いやいや。これです。この洗練された芸術品。

 生保レディは目を合わせるとニッコリ微笑まれました。

 「ブラのサイズはお分かりですか?」
 (そう。お客のニーズ把握ですね)

 「80のDです」

 「自分用です。今もつけてます」

 頭の中で言葉がうごめきますが、ひょっこり男の自分が顔を出し、恥ずかしくて口にできませんでした。

 でも大胆にいくつか手に取りました。だって、壁にはきれいな芸術品が陳列されてるんですから。高価そうなのは値札が隠れたりしてるし。ひっくり返してよく確認しないと。

 「ブルー系、好みなんで…」

 生保レディはこう推測したはずです。たぶん奥さんか恋人にプレゼントするんで悩んでいる。さりげなく勧めなきゃ。

 「これでしたら、ほうら、こんなにかわいいから、きっとお似合いになりますよ」
 (顧客の課題解決へ向けたソリューション営業ですね)

 「もうちょっと検討させてください。すいません」

 まだ胸が高鳴っているのを感じながら帰宅してショーツを脱ぎました。
 ちょっと汚してしまいました。
 お洗濯しなきゃ。
 いやいや、これは「使用済み」というやつ。売れるかも?
 女と男がいったりきたりしました。

こんな一日でした。 

本当に中途半端でごめんなさい。

 最初の一歩を踏み出したことで、濡らしながら反省しています。
 もちろんオナニーなんかしてません。ほんとです。

 ご報告を終わります。

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