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カミ様少女を殺陣祀れ!/28話

【目次】【1話】 / 前回⇒【27話】

レッドブルの闘牛アイコンに埋め尽くされたヘルメット、開いたバイザーの内側で、女の人が奇妙な物を見る眼差しを僕に向けた。神社で目を覚ました時に会ったけど、名前が思い出せない。僕は咄嗟に何も言えなかった。
ライオンのバッジが光る薄汚れた近未来的スクーター。ダメージジーンズを穿いて跨る彼女は、けばけばしい意匠のパーカーを脱ぐと、おもむろに僕へ突き出した。パーカーの下のTシャツには、巨大な一つ目のデザイン。
「これ着てろ。フルチンはまあ、どうしようもねえから我慢な」
「は、はあ」
何ともパンクだ。そう思いつつ、僕はパンクお姉さんから借りたパーカーを全裸の上に羽織った。大事な部分はしっかり露出していたが。
「取り敢えず、乗れよ」
パンクお姉さんが面倒臭そうに溜め息。片手の親指でリヤシートを示した。
「エッ!? ヘルメットは……」
「んなもん気にしてる場合かオメー! いいからさっさと乗れ!」
怒鳴り声が僕の鼓膜を震わせた次の瞬間、周りの音が洪水のように脳味噌に流れ込んできた。事故現場の騒乱だ! 僕が考えるよりも早くスクーターの後部座席に飛び乗ると、お姉さんがヘルメットを閉じて、急アクセル!
「掴まってろ!」
スクーターが加速して、景色が流れ出す。壊れたガードレール、乗り上げた車の下に散らばった肉片。お巡りさんたち、死んだろうな。僕は遣る瀬無い気持ちで唇を噛み、パンクなTシャツの背中から、腰に両手を回した。

――――――――――

アパートの一室。壁際に物を寄せて、足の踏み場を辛うじて確保した空間。
僕はシャワーを借りて身体を洗い、パンクお姉さんが部屋のそこかしこから拾い上げた有り合わせの服で、一先ず身体を覆い隠して全裸を脱した。
「な、何から何まで……本当にありがとうございます」
僕はTシャツの腹を摘まんで、ポップな血塗れのキャラクターのデザインに目を落としてから、アシンメトリー銀髪のお姉さんに正座して一礼した。
「本当だよ。これで二回目だぞ。前より少しは綺麗になったろ、部屋」
「は、はあ……」
僕の生返事に、お姉さんは怪訝な顔で歩み寄って腰を下ろした。
「お前、私のこと覚えてるか?」
「ええと、はい。昨日会いましたよね。でも、名前までは……すいません」
「フカシてんなら張ッ倒すぞコラ。ゴミ捨て場に頭突っ込んで、一文無しでピーピー泣いてたのはどこのどいつだ? 誰が助けてやったんだ?」
顔が近い。耳のピアスがヤバい。タバコと香水の混ざった臭いがキツイ。
「すいません、本当に覚えてないんです……」
「本当に、何も覚えてねえのか?」
お姉さんが身を乗り出し、唇からタバコが落ちる。僕は正座したまま僅かに後退って、お姉さんに組み伏せられるように、床に押し倒された。
「エッ、エッ、エッ?」
「じゃあ、こんな感じでヤッたのも覚えてねーってワケ。ふーん、そう」
「か、からかってるんですか!? 冗談はやめてください!」
僕が抗おうと伸ばした手を、お姉さんが手首から掴んでニィと笑った。


ガサリ。お姉さんに覆い被さられて、もがく僕の横に積まれた物が崩れた。
「いやちょ、勘弁してくださいよもう! って……ヒッ!?」
床に押さえつけられた僕の指先で、グロテスクなサバイバルナイフの刃先がギラリと光る。僕はナイフの存在に気付くと、悲鳴が口をついて出た。
「ああ、それな。バックマスター……パチモンだけど。イカすだろ」
「ナ、ナナナナイフ!? そんなモン、一体何に!?」
「使い道なんざ一つしかねーだろ。ブッ刺して、殺すんだよ。クソ野郎を」
Tシャツの血塗れキャラ。その意味を理解して僕は文字通り震え上がった。
「ぼ、ぼぼぼ僕は食べてもおいしくないです! ていうか多分、刺されても僕は死なないですし、痛いだけなんで止めてください!」
お姉さんはキョトンとした顔で僕を見ると、掠れた声で笑った。嘲うような表情がゆっくりと近づく様を、僕は身動きできずに見つめていた。
「お前殺してどーすんだ……私が殺してえのは元カレだよ。女に金をせびることだけは一丁前な、あの腐れヤリチン野郎。今にして思えば、何であんな人間のクズと付き合ってたかな。金も身体も差し出してさ、捨てられた時はショックで自殺しようとまで考えてたんだぜ? お笑いだよな。何であんなクソ野郎のために、私が死ななんきゃならねんだよ。意味わかんねえ。私が首括って何の得になる、だったらあいつ刺し殺した方がマシだろ?」
お姉さんは僕の耳元に唇を寄せて、低い声で囁いた。淡々と放たれる言葉の節々に滲み出る怨讐のアクセントに、僕は背筋が粟立つのを感じた。


お姉さんの吐息に耳をくすぐられ、僕は背筋がゾクリとした。
「お前はどうなんだ、ノゾム。お前だって酷い目に遭ってんだろ。この前は頭ブチ抜かれて、今日はマッパで道路に転がってる。何でお前がそんな目に遭わなきゃならねえんだ? お前はやられっ放しで泣き寝入りすんのか?」
「だからって、殺していい理由に――」
「なるね。私にはよく分かる。クソ野郎は無茶苦茶なんだよ。人の優しさを食い物にして、手前の要求を幾らでも吊り上げてくる。こっちが潰れようとお構いなし、役に立たなくなれば無責任にポイ捨て。クソな性格は死ぬまで治らねえ病気みてーなもんだ。今は黙って我慢してれば、いつかは分かってくれるだろう。そんな『いつか』は来やしねえ。クソ野郎に理屈やお情けは通用しねえ。力づくでぶちのめすか、ぶちのめされるかしかねえんだよ」
お姉さんが僕の両手に指を絡め、痛いくらい力を込めて握りしめる。
「生きるか死ぬか。戦いなんだよ、ノゾム。自分勝手な理屈で無茶苦茶やるクソ野郎は、やるかやられるかしかねえ。お前が選ぶのはどっちだ?」
僕はその言葉を聞いて、ゴスロリ女とお巡りさんの死に様を思い浮かべた。
「お巡りさんたちは無関係なのに……何で死ななきゃいけなかったんだ」
「ハァ……こんな時でも人の心配かよ。全くお前ってヤツは……お前って……」
ドタタドタと廊下を歩く足音。ばたんと跳ね開けられるリビングのドア。
「みず姉か? チッ、今からがいいとこだってのに……」
「ココ、いるかァ。って……何だあああァ! お前誰だそいつはコラァ!」
顔を上げたお姉さんの背後に、モノトーンの服装で金髪を逆立てたロックな男が見えた。憤怒の形相で、意味不明な言葉を喚いて駆け寄る姿が!


僕の脳裏に咄嗟に過ったのは、発狂したお巡りさん。この状況はマズい!
「お姉さん逃げてッ!」
「どの面下げて戻って来やがったテメー!」
「オオオオオウガガガオアオアバババババッ!」
お姉さんが咄嗟にナイフへ手を伸ばすけど、男が殴り飛ばすのが早い!
サバイバルナイフが目の前に転げ落ち、ロック男が迷わず拾い上げた!
「ウラアアアアアアッ!」
「フングギイッ!?」
ロック男の容赦ない前蹴りが僕の股を一撃! 激痛で意識が一瞬遠ざかる!
「ノゾム、逃げろーッ!」
「ホアアアアアハハハハハガガガガガガッ!」
来る……来る……来るぞ! 覚悟を決めろ! 僕はロック男が両手で突き出す刃を見つめながら、全てを察した。ああそうかい、ゴスロリ女。あくまでも僕を殺る気なんだな! そうと分かれば、僕も覚悟を決めるしかない!
脈打つ鼓動が全身を駆け巡り、灼熱が身体の芯から湧き上がる! 奥底から力が漲ってくる! そう、力だ! トモヨシ君を救い、不良どもを一蹴した人外の蛮力! そうだ、僕には力が必要だ。化け物の力だろうが何だろうが使える物は何でも使ってやる! 僕を、お姉さんを、殺させないために!
「ノゾムーッ!?」
「ギャババババババッ!」
鼻血を垂らして手を伸ばすお姉さんの姿が、泡を噴いてナイフを振り下ろすロック男の姿が、スローモーションで見える。僕は両の瞼を閉じて、暗闇の深奥で燃え盛る黒い炎、邪悪な力の根源に手を伸ばした。掴み取った!


仰向けになったまま、両手足の四点に力を込めてジャンプ! そのまま足を振り上げて、逆上がりの要領で宙返り! ロック男の腕を蹴り上げる!
骨を蹴り砕く感覚と共に、ロック男の腕を上に弾き飛ばし、振り下ろされたナイフが跳ね返されて天井に突き刺さる! 空中で更に回転して着地!
「グギャオウッ!?」
赤く染まった視界で、両腕のねじ曲がったロック男がよろめいた。あんたに恨みは無いが、済まないな。と思ったのも束の間、ロック男は大口を開けて突っ込んで来た! チクショウ、腕が折れてもまだやるつもりか!?
「ウガーバババババッ!」
「この野郎ッ!」
横合いからお姉さんがタックルで割り込む! ロック男が腰に組みつかれて前のめりに倒れた! ロック男の背中にお姉さんが圧し掛かるも、凄まじい力でロック男が暴れて、折れた両腕でお姉さんを弾き飛ばした!
「ウギャギャギャギャギャギャギャッ!」
今度はロック男のタックル! 僕は腰を沈めて、片膝を突き上げて迎撃!
「ガバッ!?」
顔面に膝を浴びたロック男が、床を数回後転して沈黙。完全に気絶した。
直後、天井から抜け落ちたナイフが、僕たち三人の間の床に突き刺さった。


どうにか殺さずに済んだか。僕は焼けつくような暑さに包まれて、仰向けで動かないロック男と、這いつくばったお姉さんを順に見て、息を吐いた。
まだ終わっちゃいない。僕は脳裏に閃いた直感の赴くままに、大窓へ走って引き開け、バルコニーへ飛び出した。アパートの裏手、路地に人影。僕らの部屋を見上げるゴスロリ女。僕は窓辺から邪悪な人形遣いを見下ろした。
次の瞬間、背中を叩かれるような衝撃。胸からナイフの切っ先が飛び出す。
「あ……れ……?」
咄嗟に身体が凍りついた。ロック男は両腕を圧し折った上、気絶させたから動けないはずだ。じゃあ一体誰が? ずぶり、刃が深く押し込まれる。
「ノ……ノゾ、ム……」
「お姉……さん……ゲボッ」
あぁ、そっか。人形はもう一体、残ってたってワケかい。僕は全身から力が抜けて、バルコニーの手摺にもたれかかった。チクショウ、とことん卑劣なクソアマめ。この程度じゃ死なない、けど……やっぱ痛いのは嫌だなァ。
僕の両足が持ち上げられ、バルコニーの柵を乗り越え、宙に投げ出される。
「ゲボッ……絶対、ブチ殺す……覚え、てろよ」
そしてフリーフォール。ビル数階分の高さを落ち、地面が無情に迫り来る。

――――――――――

衝撃音と共に、心はバルコニーの手摺から見下ろした姿勢で、我に返った。
「ギャーッ!?」
誰かの悲鳴。心の視線の先には、地面に叩きつけられてひしゃげた臨の姿。
「ノ、ノゾッ……!? う、嘘だッ! 違う、私じゃ……」
現実逃避の妄言は最後まで続かなかった。心は手摺を両手で掴み、狼狽して嘔吐した。動揺が胃を突き上げて、心は手摺の向こうに嘔吐し続けた。
「ギャーッ!?」
誰かの悲鳴が再び響いた。心の吐瀉物が理由ではない。地面に叩きつけられ死んだはずの臨が、再び人間の形を成して立ち、駆け出したからである!
「カハーッ!」
「チッ、しぶといヤツねッ!」
臨が赤眼を光らせ、蒸気めいた息を吐いて走る! 一部始終を見守っていた丞子は、悪態をついて遁走! 一人と一柱との鬼ごっこが再び始まった!


ゴスロリ衣装のスカートを閃かし、ブロック塀の上を走る丞子! 追跡する臨は、パンクに破れたパンク衣装をはためかし、背中にナイフのグリップを飛び出させたまま、丞子の背中を見上げて路上を全力疾走!
「シィッ!」
大通りとの交差点! 丞子が念じれば、走行中の車が数台、運転手の意思に反してハンドルを切らされ、次から次へと路地に飛び込んでいく!
「「「ウワーッ!?」」」
ノークラクション、ノーブレーキのコンボイ突撃が臨へと迫り来る!
「クシャーッ!」
臨は鋭く息を吐き、跳躍! アクセルべた踏みで突っ込んで来たミニバンのボンネットに飛び乗り、軽やかにルーフへと駆け上がって事故回避!
のみならず、走る車とは逆方向に、一瞬の疾走から踏み切り、更に跳躍!
ミニバンの後続、軽トラックのキャビンの僅かなルーフを足で捉え、そして三度跳躍! 後続のタクシーへ飛び乗っては踏み越え、後続のハードトップクーペに飛び乗っては踏み越え、車を飛び石めいて踏み渡り、道路上へ!
「何ですってえッ!?」
電柱をよじ登り、電線上を駆けていた丞子が、足元を見下ろして驚嘆!
「「「ウオオオーッ!?」」」
臨、殺人速度で車両の行き交う道路を走る! 正確には車両の屋根の上!
「カハーッ!」
どのような身体能力とバランス感覚を用いてか、前進する車列の推進力をも利用しつつ、時には車より早い速度で屋根から屋根へ飛び渡り、電線の上を走る丞子にピタリと照準を合わせて、恐るべき執念で追跡を続ける!

――――――――――

街外れの耕作地帯・桔梗野! ブドウ畑の並ぶ畑道を、丞子と鬼火狐たちが死に物狂いで駆け抜ける! 背後を臨が、土煙を上げて追跡する!
一行が目指すは、桔梗野稲荷神社!
立入禁止のテープを引き千切り、爆破後の神社の残骸が転がる敷地に丞子と鬼火狐が転がり込む! 息を整える時間も与えず、臨も境内に到着!
「チクショウ! どこまでついてくるつもり!? あんたしつこいのよ!」
「カハーッ、ハ・ハ・ハ……オイ、ツメタ……カハーッ、オイツメタ、ゾ……」
「追い詰めたですって!? 逆に誘い込まれたのよ! 神様を舐めんな!」
「「「ギャオッ!」」」
丞子が二本指を臨に突き出せば、鬼火狐たちが群れを成して一斉に跳躍!
「クシャーッ……」
臨は前傾姿勢で膝を曲げ、襲い来る狐たちを見上げもせず、隙を曝したかと思った次の瞬間……消失! いや、消えたのではない! 圧縮された空気が龍めいて残像を曳き、鋭く振るわれる蟷螂の斧が衝撃波を鳴らした!
「「「グギャオーッ!?」」」
宙に踊る鬼火狐たちが、境内の玉石を踏むことなく、次々と切断! 頭部を断たれる者、胴を裂かれる者、首から尻まで縦に別たれる者! 青白い炎の身体が、ヴェイパーをまとった手刀に斬られる! その様、正に鎌鼬!
残像の龍がダイナミックに宙を踊り、地を蹴って再び宙へと鎌首をもたげて鬼火狐に食らいつく! 吹き荒れる鎌鼬が、立て続けに狐たちを断絶!
青い鬼火の残骸がはらはらと霧散する中、臨は着地して丞子と対峙した。


パンクな破れ衣装を風に靡かせて立つ臨に、丞子は歯噛みして後退った。
「グウーッ! な、何てヤツッ……!」
「ナ、ゼ、ダ……」
「あん? 何ですって!?」
丞子は更に一歩後退り、不満げな表情で臨をビシと指差して、問い返した。
「カハーッ……ナゼ……ナ、ぜダ……どうシて……どうして、僕を狙う!?」
臨の双眸に点る赤黒く濁った光が、ピジョンブラッドめいて澄んだ輝きへと変わった。臨は自分を強いて、一時的に自分の意識を取り戻した。
「なぜって? ハンッ! 気に食わないからよ! あんたら人間のやること何一つとしてねェ! この神殿を御覧なさい! あんたら人間の仲間たちがブチ壊しにしてくれたのよ! あたしのささやかな玉座をねえ!」
丞子は額に青筋を浮かべ、大手を振るって背後の神殿の残骸を示した。
「カハーッ……そレは、可哀ソウに。確カに、同情するサ。だガそれと僕ニ一体何ノ関係があル!? どうシて僕が命ヲ狙わレナきゃなラない!?」
「関係なんかないわよッ! この私の城をブッ飛ばした連中が、近頃神様を目覚めさせて調子づいてるっていうじゃない。私は憂さ晴らしに、そいつを痛めつけてやろうって思っただけよ! あんたはあの田舎神と同じ土臭さが臭ってくる、私の可愛い狐がそう言ったのよ。ただの八つ当たりよ! 私の憂さ晴らしよ! 何か文句があるっての!? あんたが軽く死んでくれたらそれで済んだのに、あんたのせいで街中が滅茶苦茶になったじゃない!」
怒鳴り散らす丞子と向き合い、臨は灼熱の息を吐いて落胆した。


臨の身体が不自然に痙攣。全身がブルブルと震え、空気を奇妙に鳴らせる。
「カハーッ……君ハやり過ギた。無関係ナ人ヲ大勢巻き添えニしタ。ソれが僕ノ最も頭ニ来た部分ダ。君ハ、ココで殺シた方が良サソうだ……」
「殺すですって!? この塩尽の守り神、玄蕃丞子様を、どこの馬の骨とも知れぬ田舎神の眷属ごときが!? 笑止ッ! 叩き潰してやるわッ!」
追い詰められた丞子が血走った眼を開き、紫紺の長髪から狐めいた獣の耳を飛び出させ、ゴスロリ衣装の隙間から青白い光を放って身構えた時。
「ク・カ・カ……グ・ガ・ガ……ガボオッ、グルルゥ、ウゴボボボオッ……」
人狼ならぬ、人狐に変化した丞子の眼前で、破れパンク衣装の臨が獣めいた呻き声と共に赤黒い光を撒き散らし、吐息は禍々しい黒煙へと変わる。
「な……何ッ!?」
「ゴギャギャギャ……ゲロロロロオッ、グボオッ、ゴゲゲゲッ……」
初め、臨の両目が縦に割れ、横に割れ、複眼めいて分裂を繰り返した。
次いで、パンク衣装の肩から、背中から、脇腹から、次々と腕が飛び出た。長い腕に短い腕、蜘蛛の節足めいて長細く、鋭く爪の尖った無数の腕!
人の腕が一対、蜘蛛の節足が左に五本、右に六本! 左右の複眼と、唇から牙めいて肥大化し、上下にはみ出した犬歯! その姿あたかも土蜘蛛!
「クシャーッ……」
黒煙と黒炎を背負って立つ異形……臨、土蜘蛛デーモン形態!
「コロス……コロ、ス……コ、ロ、ス……ク・カ・カ・カ……」
「ヒエッ!? な、何ようッ、何なのようッ……何なのよお前はァッ!?」
丞子は人狐姿で鬼火をまといつつも、獣の尻尾を股下に垂らして後退った!


【カミ様少女を殺陣祀れ!/28話 おわり】
【次回に続く】

From: slaughtercult
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