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カミ様少女を殺陣祀れ!/7話

⚠警告:刺激的なコンテンツ/内容:人体損壊など激しい残虐描写⚠
⚠気分が悪くなった場合は、速やかに閲覧をお止めください⚠
⚠対象年齢:18歳以上/自己責任でお楽しみください⚠

【目次】【1話】 / 前回⇒【6話】

「「「止まれーッ! 止まらないと、撃つぞーッ!」」」
廊下の前方より、警官が3人。リボルバーを腰だめに構えて躍り出る。
「に、逃げてーッ!?」
僕は叫び、隣って歩く爺ちゃんと一緒に、床へ倒れ込んだ。
「「「ウオオオ―ッ!」」」
拳銃乱射! 弾の弾ける音! 裸コートのカミは我が物顔で闊歩し続ける!
「「「ヒギャーッ!?」」」
断裂音! 断末魔! 虫でも捻り殺すみたいに、3人の警官が惨殺死体に!
警察署の廊下は、まるで絵巻物の戦場だ。いやそれよりもっと酷い。

「こんなの無茶苦茶だ……お巡りさんたちには何の罪もないだろうに!」
「ヒャヒャヒャ! 偉ぶってたポリ公どもがこの様とは、いい気味よの!」
腰を上げて周囲の惨状を見回し、爺ちゃんが愉快そうに呟いた。
「そんなこと言ってる場合!? このままじゃ僕たち3人とも、大量殺人で指名手配されちゃうんだよ、日本全国津々浦々に! 状況分かってる!?」
僕の叫びに、カミは足を止めて天井を仰ぎ、痛快そうに哄笑した。
「人の理などで余は縛れぬ! どれほど束になろうと皆殺すばかりよ!」
「だから、それが拙いんだってば!」
「何が拙いのじゃ、ノゾム。お前、余の力を疑っておるのか?」
僕は唇を噛むと、駆け出した。カミの正面に回り込んで、両手を広げる。
「皆殺しが拙いんだって! 今はカミ様が生きてる時代とは違うんだよ!」

カミは縦ロールの黒髪を揺らし、総毛立つ眼光で睨んで、手を伸ばした。
父さんのロングコートの裾から血が滴り、血濡れた右手が僕の喉を掴む。
「冥い穴倉の奥底に囚われて幾星霜……余の怨念は千尋の谷より深し!」
恐ろしく強い力が、僕の首根っこを前に引き、次いで背後に押し出した。
自転車とは比べ物にならない加速度が身体を包む。投げられたのだ!
玄関ドアに背中から激突! フレームがひしゃげ、ガラスが割れる轟音!
脊椎が圧し折れ、手足が変な方向に曲がり、割れたガラスで肉が裂ける。
「諏訪の神とその郎党こそ余の仇敵……この恨み、晴らさでおくべきか!」
駄目だ。闘争も説得も無意味。カミの暴虐は、人間では止められない。
ああ、また死んだ。

――――――――――

カミは顔を顰めて肩を怒らせ、玄関ドアの残骸を跨いで外界に踏み出した。
「愚かな小童よ。タキの末裔の分際で、余に楯突くとは甚だ不愉快じゃ!」
臨の惨殺死体から飛び出す頭部を、カミが無造作に踏み砕く。
背後から迫る足音が2つ。臨の祖父・丑寅と、生き残りの中年刑事・米窪。
「やれやれ、荒神様に人の道理を説くとは。ノゾムも懲りぬヤツよのう」
「翁よ、うぬの責じゃ。彼奴の思い上がりを止め、一族の分を弁えさせよ」
「ワシの孫は頑固者でのう! 父と死に別れ、母と別れてこの方――」
「おい、ちょっと待ってくれ! 約束はどうなった! 酒が来るまで――」
カミと丑寅の会話に割り込んだ米窪を、カミが眼光鋭く振り返る。
「余は約束などしておらぬ! うぬの戯言に耳を貸すと思うてか!」
その時、夜風の吹き曝す街角に、甲高いバイクの排気音が轟いた。

純白の隼めいたSSバイクが警察署の駐車場に駆け込み、ドリフト停車!
電光に白スーツを煌めかし、偉丈夫がフルフェイスヘルメットを脱いだ。
「ハァ~、間に合ったかな? 我、参上!」
夜風に長髪と顎鬚を靡かせ、サタデーナイトフィーバーめいたキメポーズ!
後頭部と背後に二重の後光! 超自然の七色輪光が白服をライトアップ!
「「「誰だ!?」」」
対面するカミたち3者は闖入者に唖然! 背後で臨の死体が再生する!
「……ッテーッ!? そうだ、荒神様を止めなきゃ! でもどうやって!」
臨が残骸の中から跳ね起き、白スーツに後光を纏う胡乱存在を凝視した。
「って、何じゃありゃああああ!? そ、尊師!?」
「違う! 我、諏訪大明神! 神様! この地を治める神ぞ! 崇めよ!」
偉丈夫が誇らしげに宣告すると、レーザービームめいて七色光が迸った!

「また神様か。次から次へと、この街は一体どうしちまったってんだ?」
米窪が呆れ果てて頭を振り、タバコを咥えて火を点けた。
「アヒャヒャヒャ! 神様というより、エルビス・プレスリーじゃのう!」
「プレスリーっていうか、矢澤A吉のコスプレした尊師じゃない!」
「だから諏訪大明神だってば! 諏訪大明神! さては疑ってるなァ~?」
諏訪神は両手の親指で自分を示して後、人差し指で一同を示した。
「グフフフフ、余の不倶戴天の仇敵よ! おめおめと姿を現しおって!」
カミの美少女顔に残忍な笑み! 怒れる獅子めいて咆哮し、駆け出す!
「死ねええええ!」
風めいて疾走! 諏訪神の前まで高速接近! 人間を一撃粉砕する右拳!
拳が突き出される瞬間、諏訪神はワイヤーアクションめいて急上昇!

「おほッ、浮いたぞい!」
歯噛みするカミ、瞳を輝かせる丑寅、頭を抱える米窪。宙を指差す臨。
諏訪神は七色の二重輪光を従え、腕組みしてカミの頭上に浮上!
「ヌゥッ!? こ、小癪なッ!」
「俺は一体何を見てるんだ。頼むよ、夢なら醒めてくれ」
「空中浮遊!? ……って、やっぱり尊師じゃん!」
「いや、だから諏訪大明神って言ってるでしょ! いい加減にしなさい!」
諏訪神は塩尽市の夜空に七色レーザー光を投射し、宙を自在に飛び回る!
「しっかし、隠ちゃんどうしたのその恰好? 前はもっと牛糞の塊みたいな姿だったのが、随分と可愛く盛っちゃってさァ~、我と契り結んどく?」
「馴れ馴れしい名で余を呼ぶな! 牛糞などと、余を侮辱するならただではおかんぞ! うぬと契りなど、反吐が出るわ! 外来の押し込み強盗風情が小賢しくも小鳥めいて飛び回りおって、今すぐ叩き落してくれるわ!」

カミは美少女顔の額に青筋を浮かべ、血濡れたロングコートを脱ぎ捨てた!
「く、か、か。ころす。ころす。ころす……」
全裸巨乳八頭身黒髪ロング縦ロールの麗しい姿が揺らぎ、冷気に靄を放つ。
白スーツの諏訪神は七色の怪光線を放ち、挑発するようにジグザグ飛行!
「隠ちゃん本気出しちゃう? 余り暴れられると、面倒なんだよね!」
諏訪神は七色の残像を引いて急降下! カミとすれ違い様、何か投擲した!
「グヌゥッ!?」
首輪だ! 極太、肉厚の鋼鉄の輪が、カミの首を捉えて一筋の縄を引く!
カミは猛犬めいて唸り、首輪を両手で掴むも、引き千切ること能わず!
それは諏訪大明神お手製の呪具だ! 人智を超越したカミすら無力!
呪具から伝播する何らかの超越人力が、カミの変身すら妨害していた!

諏訪神は後光からスラスターめいて怪光線を放射し、首輪の綱を引き絞る!
「さてと隠ちゃん! 我と、力比べと、行こう……じゃない!」
「ぐッ、ぐぎぎぎぐぬぬぬうううう……ッ!?」
カミは歯軋りし、口から泡を噴いて苦悶! 綱を両手で掴み、引き寄せる!
「ぐぎぎッ……な、め、る、な、よおおおおーッ!」
美少女の裸体に盛り上がる筋肉! 空中の諏訪神を勢い良く手繰り寄せた!
形勢逆転か……否! それすらも諏訪神の策であった!
「うッ、うわーッ!? とでも言うと思ったかい!」
諏訪神はカミに引き寄せられつつ、七色後光スラスター放射で更に加速!
現実時間において、音速の数倍に至る超高速に達して、カミに急接近!
「喰らえッ! 神・仏・習・合・拳!」
対処する間もなく、カミの胸元に刺又めいた超高速諸手突きが衝突!

「かはッ」
防御の間に合わなかったカミは、大きく仰け反って白目を剥いた。
驚愕の顔で見守る臨たち3人の間を、カタパルト射出めいて吹き飛ぶ!
くの字になって警察署の玄関に飛び込み、廊下を突き抜け壁を破壊!
進路上の机を破壊し、部屋を突き抜け、コンクリート外壁すらも破壊貫通!
警察署後方の小高い丘まで飛ぶと、斜面に衝突、派手に土砂を噴き上げた!
「あっちゃ~、ちょっとやりすぎたかなァ。まぁ、これも平和のためだから許してね。人も神も平和が一番、ラブ&ピース!」
諏訪神は怪光線を放ちながら地に降り立ち、屈託ない笑顔で弁解した。
「おっほぉ、すっごいのう諏訪神様! ワシゃフアンになりそうだぞい!」
「うっそ~、本当にぃ~! 我、褒められると調子乗っちゃうんだよな!」
「あ、荒神様ーッ!?」
軽薄な言葉を交わす丑寅と諏訪神を他所に、臨は警察署を振り返って絶叫!

――――――――――

米窪刑事の咥えタバコが燃え尽きる頃、警察署に1台のトラックが着いた。
「おッ、やっと来たか……おーい、荻村ァー! こっちだー!」
錆びついた白塗装の地肌には、剥がれかけた『荻村酒店』の文字。
「さ……酒屋?」
「おうよ。酒ェ持ってきたら、話聞いてくれるって。約束だろ?」
米窪刑事が言うと、運転席から降りた中年オジサンに歩み寄った。
「悪いな、荻村。ところで、酒は用意できたか?」
「おうよ。期限切れのビールに、売れ残りの酒……あるだけ持ってきたぞ」
「き、期限切れのお酒!?」
それってまさか、カミ様の供物に!? いや冗談だろ!?
「いーんだよ期限切れでよ上等だろ。言わなきゃバレねぇやしねえよ」
僕が目を剥いて言うと、米窪刑事は悪い笑みで振り返る。

「持ってきたは良いけどさ、どうすんのヨネちゃんこれ。高くつくよ~」
米窪刑事が笑って、心配そうな酒屋さんの肩を気さくに叩いた。
「いーんだよ気にすんな、どうせ警察が払うんだからよ、国民の税金でよ」
気軽に言うな。僕たちはこんな刑事に街の治安を任せて大丈夫なのか。
「ああそれ、いいよ。我が立て替えとくから」
と思ったら白服の尊師が2人に歩み寄って、掴んだのは……請求書?
「エッ、ちょっとあんた」
「いや立て替えるつったってあんた、どうやって……」
「いいからいいから、神を信じなさい」
尊師はスーツの懐からスマホを取り出すと、おもむろにコールした。
「あ、もしもし? 我だけど。寝てた? ゴメン、起こしちゃったね」
か、神様が……携帯電話……現代文明に適応している……ッ!?

「クソッタレの犬畜生がああああ! 余の首にかけた枷を外せえええ!」
全裸に土塗れのカミが、警察署の壁を破壊しながら猛ダッシュで帰還!
「お、生きてたのう荒神様。ワシゃそれはもう心配で心配でアヒョ」
揉み手で出迎えた爺ちゃんが一撃粉砕! 尊師にゾッコンだった報いだな。
「うん、ちょっとカミと喧嘩してさ、うん。手打ちに供物が必要で」
尊師はスマホで電話しながら、軽快なステップでカミ様の攻撃を回避!
突き、突き、蹴り! タックル、ボディブロー、足払い! 全て躱した!
「お酒なんだけどね、うん。代金、うちで立て替えといてくんない?」
「こんの馬鹿にしおって! 余を見よ! 無視するなあいって!」
カミの首で乱れ踊る縄を尊師が掴み、ムチめいてカミの額を打った!
「請求書? は持って帰るから。ありがとう、また明日ね。恩に着るよ!」
尊師が笑顔で電話を切ると、なおも掴みかかろうとするカミに頭突き!

「このお酒全部、隠ちゃんの物だから。今日のところはそれで勘弁してよ」
「ふざけるな! うぬの酒など、余が二度と口にする物か!」
カミは首輪から綱を引き千切って、尊師に叫ぶなり殴り掛かる!
「えーっと……それで、俺ぁ一体どうすればいいのかな?」
「酒は隠多喜神社まで配送を頼むぞい! ということでワシも一本失礼!」
いつの間にか復活していた爺ちゃんが、荷台から瓶ビールを抜き取った。
爺ちゃんは荷台のアオリで器用に栓を抜いて、酒屋さんから睨まれる。
「まあ、刑事さんも疲れたでしょ。くいーッと一杯、いきませんか?」
「おう気が利くじゃねえか! じゃあ遠慮なく貰っちゃおうかな!」
爺ちゃんと米窪刑事は景気よく笑うと、ビール瓶を回し飲みし始めた。
僕らの回りで、カミと尊師は風みたいに駆け回り、ずっと殴り合っていた。
……え、何これ? どうするの? どうすんのこの状況!



【カミ様少女を殺陣祀れ!/7話 おわり】
【次回に続く】

From: slaughtercult
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