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カミ様少女を殺陣祀れ!/6話

⚠警告:刺激的なコンテンツ/内容:人体損壊など激しい残虐描写⚠
⚠気分が悪くなった場合は、速やかに閲覧をお止めください⚠
⚠対象年齢:18歳以上/自己責任でお楽しみください⚠

【目次】【1話】 / 前回⇒【5話】

隠ヶ平の山中、隠多喜神社・本宮。禁足地の岩窟。
謎の武装組織の暗躍により、古のカミが『解き放たれた』のと同時刻。

塩尽市より遥か遠方、諏訪神社。巫女の舞い踊る神楽殿。
境内を駆けるは、一匹の蛇。どこからともなく現れ、神楽殿へと向かう。
突如として、神社の上空を超自然の黒雲が覆い尽くし、雷鳴が轟く!
どよめく参拝客! 狼狽する宮司! 取り憑かれたように舞い続ける巫女!
蛇は神楽殿の柱を這い上がり、梁を伝って、踊る巫女の頭上に至った。
その場で数度舌なめずりしたかと思うと、蛇はおもむろに宙へ身を投げた!

雷鳴! 一際音高い稲光が、暗闇を閃光で切り裂き、神楽を照らし出す!
次の瞬間、梁から身を投げた蛇が、中空で巨大な球形の稲妻に姿を変えた!「「「ギャーッ!?」」」
怒号! 悲鳴! 狂乱! 騒然!
逃げ惑う者、立ち尽くす者、野次馬根性で駆けつける者!
さしもの巫女も、この余りに現実離れした光景に恐れ戦き、腰を抜かした!

球形の紫電は人の形を成し、神楽殿の床へゆっくりと降り立つ!
閃光が消えると、長髪に顎鬚、全裸の偉丈夫が立膝姿勢から顔を上げた!
その容貌、神の子と映画スターとカルト教祖を足して3で割ったがごとく!
「凶兆を感じる……古に封じられしカミが、眠りから目覚めたか……」
全裸男は床に拳を突き出した姿勢から起き上がり、厳かに呟く。
迸る稲妻! 暗い翳りが、蛇より転生せし偉丈夫の竜神を覆い隠した!
「あれ鎮めるの大変だったんだからな……目覚めさせたヤツは責任取れよ」
周囲の喧騒もどこ吹く風、偉丈夫は神楽殿に仁王立ちして嘆息した。
ここに御座す方こそ誰あろう、諏訪神社の祭神『諏訪大明神』である!

――――――――――

武装神主たちが我が家に乗り込んで、勝手に自滅して、数時間後。
我が家は半壊するし、そこら中が血と臓物塗れで、臭くて堪らないし。
警察は大挙して押し寄せるし、家の上空をヘリが飛び回ってるし。
そんなこんなで、僕と爺ちゃんとカミ様は、車に押し込まれてやって来た。

塩尽警察署。僕の通う高校の最寄り駅に程近い、塩尽市内の中心部。

刑事ドラマでしか見たことがない、取調室のお出迎えだ。
マジックミラーと鉄格子付きの窓と、鋼鉄のデスクとパイプ椅子。
そんな殺風景で素敵な空間の中、僕はこれまでの経緯を思い返していた。

――――――――――

「あの女の子……女の子じゃないんだけど……は、3日前に会ったばかりで」
デスク越しに対面する、七三ヘアーの眼鏡刑事に言うと、腹が鳴った。
「女の子じゃないなら何、オカマ? 君のご家族、友人、知人か何か?」
「いえ全然。その女の子、うちの山の洞窟の神社の中から出て来たんです」
これでいい。嘘は言っていない。拳銃で人を射殺したことは黙っておこう。
「言い伝えでは、そこは本来、カミがいるべき場所のはずなんですけどね」
「そういう胡散臭い話はいいから。神なんてこの世に居るわけないでしょ」
七三眼鏡刑事が笑い、背後の刑事たちもつられて笑う。僕は真顔だった。
「で、女の子の名前は?」
「荒神様と仮に呼んではいましたが、刑事さんたちは信じないでしょうね」
僕の答えに、刑事たちの薄笑いが消えた。

「余り大人をからかうんじゃないよ。彼女に口止めでもされてるのかい?」
「僕はありのままの事実を話しているだけですよ。信じようが信じまいが」
壁際で、身長2メートル近い大男刑事と、中年刑事がひそひそ話している。
「山から下りて来た女の子を、神様として祀ってるとでもいうのか!?」
七三眼鏡刑事が、額に青筋立ててデスクを殴って、甲高い声でがなった。
「頭イカれてんのかオメーはよ! 監禁容疑でぶち込んでも良いんだぞ!」
僕は唐突に胸倉を掴まれ、刑事に怒鳴られて前後に揺さぶられた。
遥かに人道的な扱いだ。唐突に五体バラバラにされることと比べればだが。
「おいおいおい足助! まーちょっと落ち着けって!」
ラガーマンめいた大男刑事が、朗らかな笑みで七三眼鏡刑事を引き離した。
「ハ・ナ・セ、コラァ! テメーガキがァ、大人を舐めんなよ!」
僕が咳き込みながら視線を上げると、壁際で中年刑事が頭を振った。

「大体、あの死体の男たちはどこの誰だ!? 心当たりはねぇのか!」
「それこそ赤の他人ですよ。カミを殺しに来たとか言ってましたけどね」
また腹が鳴った。あの死体の男たちのせいで、夕飯を食べ損ねたからだ。
「かぁみぃ? ハテ、こいつはいよいよ狂ってきたぞ」
大男刑事が七三眼鏡刑事を羽交い絞めにしつつ、困惑した顔で皮肉る。
「分かってると思いますけど、殺したのは僕や爺ちゃんじゃないですよ」
「だったら誰なんだテメーコラァ! 神様だとでも言うのかアァ!?」
「えぇ、その女の子ですよ」
部屋の外で、重機の破壊音めいた鈍い轟音。銃器のような鋭い発砲音も。
「おいおいおい、一体全体何の騒ぎだ!?」
大男刑事が振り返り、七三眼鏡刑事が無理に身体を捻られて目を剥く。

「「「ギャーッ!?」」」
壁の向こうから、男とも女ともつかない悲鳴、豚めいた断末魔が聞こえた。
僕は黙った。刑事たちも黙った。取調室に一瞬だけ静寂が満ちた。
ふと視線を向けたマジックミラーが、次の瞬間、轟音を伴って割れ砕け。
全裸巨乳八頭身ロングコート黒髪ロング縦ロールの美少女がなだれ込んだ。「ノゾムーッ! 帰るぞーッ! 余はもう飽きたーッ!」
カミはLサイズのポテトを握る気軽さで、制服警官の上半身を握っていた。
「何じゃここは、つまらん! こんなところに余を閉じ込めるつもりか!」
カミが警官を放り出せば、丄の字の姿で壁に貼りついて、血を滴らせる。
「「「ギャーッ!?」」」
今度は、3バカ刑事トリオが叫ぶ番だった。
割れ窓の向こうには、屠殺場めいた廊下が見える。随分と派手にやったな。

「お、おおお、お前何をやってるんだァ!?」
大男刑事が七三眼鏡刑事を放し、咄嗟にラガーマンめいて突撃!
カミが静止するように片手の掌を突き出せば、削岩機みたいに上半身粉砕!
大男刑事の上半身が、出来立てのコンクリートめいた流動物に早変わりだ。
「ウオオオーッ! 去ねや、ド外道がぁぁぁ~~~!」
七三眼鏡刑事が激昂するや否や、懐から巨大なリボルバーを取り出した!
「それどう見ても官給品の銃じゃないでしょ、どうなってるんだN県警!」
僕と中年刑事は慌てて耳を塞ぎ、七三眼鏡刑事が巨大リボルバー6連射!
全裸コートのカミの胸元に、6発連続着弾! 腕は良いけど相手が悪い!
カミはエアガンで撃たれたみたいに、顔を顰めるだけで全く効果なし!
「な、何だテメーこの野郎ッ!? この、化け物がァッ!」

カミの手が、狼狽する七三眼鏡刑事からリボルバーを取り上げる!
「その言葉、もう聞き飽きたわい」
金槌めいて振り下ろしたグリップが脳天粉砕! 眼鏡が真っ二つだ!
顔面半ばまで銃がめり込み、銃口からジョウロみたいに血が流れ出る!
「木っ端人間風情が、余を止められると思うてか!」
カミが首を巡らして中年刑事を見遣れば、彼はすかさず両手を挙げた。
「降参。話し合わないか、お嬢さん」
「話し合いか? 貢ぎ物はあるのだろうな。酒じゃ、酒を寄越せ!」
中年刑事は頷くと、服のポケットをあちこち探って何か取り出した。
刑事が放った銀色の水筒を、カミが血塗れの右手で掴み取る。
壮絶な破壊音と共にネジ蓋を引き千切れば、水筒の酒を無心に呷った。
「フン。全然足りぬが、まあ良い。貢ぎ物に免じて、うぬは堪えて遣わす」

「おうおうおう、ひっどい有様じゃのう! ノゾムよ、平気か!」
割れ窓の向こうから、爺ちゃんがひょっこり笑顔を覗かせてピースした。
「いや、僕は平気だけど。どうしようこれ、警察で暴れたのは拙いよ」
「暴れるというか、大虐殺の間違いじゃな! さすがは荒神様の御力よ!」
爺ちゃんがゲラゲラと大笑いして、中年刑事は無表情で肩を竦める。
「荒神様。隠多喜神社の氏神様、我らの救世主様! お願いがあります!」
「何じゃノゾム、願いとな。申してみよ」
僕は血塗れの床に膝を突こうとして躊躇い、デスクによじ登って土下座。
「今しがたこの場で殺した人たちの命を、全員蘇らせてください!」
「頭が高あああい!」
「ほんぎゃあああ!」
僕は卓上で土下座したまま、身体が粉砕されるのを感じた。もうヤダ。

――――――――――

カミの振り下ろした片腕が、臨の身体ごと鋼鉄のデスクを両断した。
「ノゾムーッ! また死んでしもうたか、ヒヒヒ!」
丑寅が割れ窓から顔を突き出して茶化す! 滝のように流れ落ちる鮮血!
笑ってる場合かよ。中年刑事・米窪は顎鬚を撫ぜて煙草を咥えた。
「成る程。お宅が神様だってこたぁ、俺のチンケな頭でもようく分かった」
100円ライターで煙草に火を点し、米窪は紫煙を吐いてカミを見据える。
「余は帰る。遮る者は千と軍勢であろうが、万の軍勢であろうが叩き潰す」
カミは黒髪ロング縦ロールを揺らし、仁王立ちして厳かに告げた。
そして、おもむろに左手の指を弾き――臨の惨殺死体を元の姿に戻す。
「あああ゛ーッ、いっでェっ! ……ハッ、生き返った!?」
米窪は驚きに目を見開いた。煙草が口から零れ落ち、血の池で火が消えた。

「フン、つくづく惰弱で手間のかかる僕よ。帰るぞ、ノゾム」
「お、おい! ちょっと待ってくれ!」
すかさず米窪が一歩踏み出して呼び止めると、カミは眼光鋭く振り返った。
「図に乗るなよ、人間。うぬの生き死には、余の機嫌一つと心得よ」
「違う。いや分かっている。だがそうじゃない。俺が言いたいのはつまり」
新しい煙草を咥え、しどろもどろの米窪に、カミは踵を返して踏み出した。
「望みは酒か? 酒が欲しい、そうなんだろう?」
――足が止まった。カミの値踏みするような眼差しが、米窪を窺った。
「もっと沢山の酒を差し出せば……仲間たちを生き返らせてくれるのか?」
「もうホントお願いしますカミ様、こればかりは洒落にならないんだよ! 生き返らせてくれないと、僕も爺ちゃんも街から追い出されちゃうよ!」
血塗れの床で土下座する臨の頭を、カミが踏み潰す! 血飛沫!

――――――――――

夜の山道を、白き隼……排気量1,300ccのスーパースポーツバイクが駆ける。
「本当は空を飛んだ方が早いんだけど……我、これ結構好きかも」
曇りの無い仕立ての白スーツ、シンプソンの白ヘルメット。
白づくめの装いの下に、偉丈夫の肉体がはち切れんばかりに張り詰める。
「たまには下界に来るのも悪くない」
偉丈夫は呟き、スロットルを開いた! バイクは弾丸めいて加速!
ヘルメットからはみ出した長髪と顎鬚が、矢の尾羽めいて風に棚引く。
山道を縦横無尽に駆け巡り、峠の頂まで駆け上がって視界が開けた。
「やれやれ、酒で眠らせる手段はもう使えないし……どうしようかね」
眼下に広がる塩尽市の夜景を目指し、バイクは爆音と共に駆けていく。


【カミ様少女を殺陣祀れ!/6話 おわり】
【次回に続く】

From: slaughtercult
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