外国語における「ボキャブラリー」とは
今回はボキャブラリーについての話です。
皆さんも、中学生の時英先生から単語帳を渡され無機質な単語を半ば強制的に覚えさせられたのではないでしょうか。そもそも外国語における「語彙力」とは何なのでしょうか? そして外国語の語彙を覚えていくことは子どもが第一言語を覚えるのとどう異なるのでしょうか?
まず、一般に第一言語の獲得と物心がついてからの外国語とでは語彙をマスターする速さがまるで違います。1歳後半~3歳頃には「語彙爆発」と呼ばれる期間が一般に存在し、この時期子どもは10~20単語を1週間で覚えていくそうです(Berk, L. (2003). Child development )。その後も語彙の獲得は凄まじいスイードで進み、あまりにも早くて研究者が皆観察についていけないくらいです。
対して外国語の場合はそのような期間は見られず、これが少し前までの「第一言語と同じような習得(acquisition)と外国語の学習(learning)はまったく違るものだ」という考え方のもとになっていました(今は繋がりが若干あるというのが主流です)。
外国語をペラペラと話す人たちを見て、あの人たちは血の滲むような暗記の反復をしたのだなと思ったのではないでしょうか。実は、外国語の語彙はほとんど無意識的に習得されてるといわれています。
そもそも、”have” ”play”といったシンプルな英単語でも時や状況によって多種多様な使い方や意味がでてくるわけで、日本語の「する」という動詞も「行為」(”performance”)の「する」(「山笠の練習をする」)や「感覚」(”sense”)の「する」(「この明太子いやな匂いがする」)、はたまた「価値」("worth")の「する」(「この明太子は400円する」)などなど・・・・。 単語というのは一対一で覚えて使いこなせず、前後の言葉の関係などと複雑に織りあって作られるいわば「可変的」かつ「有機的な」ものなのです。心の中にあるこうした言語の辞書のことを”mental lexicon”と言います。
ともあれ、私たちはどれくらいの単語を使いこなせれば言語を操れるようになるのでしょうか。どこでその言語を使うかでまったく違ってくるのですが、一般的にはよく使われる語彙のうち約3000語を使いこなせれば幅広い場面で対応可能と言われています。
ただこれはアカデミックなレベルでの「最低」レベルになるので、それ以下だとやはり5000語以上は必要だということです。これほどの量をどうやって使いこなせるようになれるかというと、前述の通りほとんどは意識的な勉強(単語帳での暗記)ではなく、たくさん読んだり聞いたりする中で覚えられていくようです。TPOに応じて習った単語を使えるようになるには、やはりたくさん外国語に触れていくことが大切になります。近年Extemsive rerading(多読)が勧められているのはここに理由があります。ただし、やはり一度のExtensive reradingで学ばれる単語の量は、多くても全体の10%程度らしいです。だからこそできる限りたくさん外国語で読んだり聞いたりしてその10%を積み上げをすることが大切になるんですね。
これについてはHunt and Beglar(1998)の”Current Research and Practice in Teaching Vocabulary”を参考にしているのでぜひ読んでみてください。
https://jalt-publications.org/tlt/articles/1914-current-research-and-practice-teaching-vocabulary
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