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#2 フィリピンらしさが表れる大学の「今」

SL Ambassadorによるnote
第2回目は、「サービス活動と海外留学~フィリピンの大学の新型コロナウィルス対応~」についてです。

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除された今、
みなさんはどのようにお過ごしでしょうか。

新型コロナウイルスは日本でも年明けからじわじわと流行し始めたため、
卒業式や入学式がなくなったり、
縮小化したりして行われたというニュースを目にしました。

私は日本での感染が始まった当時、
交換留学でフィリピンのマニラに滞在していました。

と、いうのも、昨年の8月から私はフィリピンのマニラにある、
アテネオ・デ・マニラ大学に留学していました。
アテネオ大学は常にフィリピンの私立大学の1位の座を争っており、
入学するのに難しいだけでなく、大学のバスケットボールやバレーボールのチームが強く、文武両道なことでよく知られています。

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(友達と大学チームのバスケットボールの試合を観戦しに行ったとき)

ICUから交換留学をするというと、
人気なのはアメリカやイギリスの大学ですが、
交換留学を入学当初からしたいと漠然に考えていた私が、
アテネオ大学に留学したいと決めたのは、
2年生の夏に参加したサービス・ラーニングプログラムの影響でした。

このプログラムで私は南インドのレディ・ドークカレッジという女子大学に、約1ヶ月間滞在し、インドの文化や社会について学び、
またサービス活動として、小学校や中学校で授業などをしました。

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(公立小学校でワークショップをしたときの様子)

その活動を通して私は、
開発が実際にされている社会や地域に自分自身をおくことで見えてくる
貧困のサイクルや社会の複雑さに圧倒されるとともに、もっと開発学を学びたい、
そして、できることなら、開発の現場が近くにあるところがいいと考え、
フィリピンの中でも優秀な開発学のプログラムを持つアテネオ大学を選びました。

実際に交換留学中には、大学で開発学の授業をとり、
NGOやソーシャルビジネスを行っている企業と連携して、
開発プログラムの立ち上げなどのICUの授業では学べないような
実践的な分野を学ぶことができました。

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(ゴミ山が存在するパヤタスで行われたチャリティークリスマスパーティーの様子)

さて、今年の3月中旬、日本ではじわじわ感染者が増えてきた頃、
フィリピンでも、感染者が増え始め、初めて休校になりました。

初めは2、3日の休校でしたが、そのうちに期間が伸び、
オンライン授業が始まりましたが、
次第に、学生のネットワーク環境の不平等さや教授間での対応の違いにより、
1週間ぐらいしてオンライン授業もなくなりました。

その間に、マニラではロックダウンが始まり、
夜間は外出禁止の時間なども決められ、自由に外を出歩けなくなりました。
また、ロックダウンしてまもなく、政府の緊急発表で、
「3日以内に外国人はフィリピンを出ないと、しばらくの間自国に帰国できなくなる」
ということが発表されたため、私はすぐに準備をし、日本に緊急帰国しました。

日本に帰ってきてすぐ、アテネオ大学からは、
通常5月終わりの学期を4月上旬に終わらせ、
学生には、既に落第している場合を除き、
全ての授業で無条件でP(Pass)という成績が与えられる、という連絡が来ました。

これは、公平に行えないオンライン授業だけでなく、
非常事態の中、不安な気持ちを抱えて生活している学生や教授に、
オンライン授業を決行することで、精神的な負担が増えてしまうのではないかと考慮され、決められました。

この決断を受けて、一月から授業を進めてきた私は、
無事に学期を終えることができなかったやるせない気持ちや、
約2週間という短い間に身の回りのことが大きく変化し、
もう留学生としてアテネオ大学に戻ることができないという
絶望感を感じましたが、同時に、メンタルケアのために学期を短くする、
という大学の判断にとてもフィリピンらしさを感じました。

というのも、中間試験や期末試験のテストや提出物の期限を決める際に、
教授はいつも学生と相談し、他の授業の試験と被らないように調節していました。
なんでも、試験が同じ日になってしまうと、
それぞれの試験にむけて十分に勉強ができないのに加えて、
メンタルヘルスにも悪いと言われていて、教授もそれを理解しているようでした。

そのことを知ったときはとても衝撃的でしたが、
フィリピン人の真面目だけど楽観的で今を楽しむ、というような
人生を送っているところを日々みていると、その考え方に自然と納得しました。

そして、この大学の学期を強制的に終わらせるという判断は、
フィリピン国内では話題になり、称賛の声がたくさん大学に寄せられました。
このアナウンスがされた日には、
アテネオの大学名がTwitterのトレンド入りをしたぐらいでした。
そのことを知った時には、日本にいながらも、とても誇らしかったです。

今では日本に帰国してから早くも2ヶ月が経ち、
ICUの卒業論文の準備やインターンシップなどで忙しい日々を送っています。
また、留学中にフィリピンの興味深いトピックに出会ったことで、
大学院進学を決め、その準備にも追われています。

サービス・ラーニングのプログラムに参加してこの夏で2年になりますが、
インドで過ごした1ヶ月は、フィリピンでの交換留学や大学院進学など、
自分のキャリア選択において今でも価値観の中心となっている、
かけがえのない経験だったと思います。

少しでもサービス・ラーニングプログラムに興味があったら、
ぜひ挑戦してみてください!

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written by SL Ambassador Nanako (2018年 Lady Doak College in India 参加)

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