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2019-2020年の生田斗真さん出演作への思いを語る。~前編・東京ドラマアウォード受賞に寄せて~

2000年に生田斗真担になった私が「斗真担として印象深かった年はいつか?」ともし聞かれることがあったら、次の年を挙げると思います。
FOURTOPSと呼ばれるようになり、劇団☆新感線に初めて出演した2002年。「花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス~」で大ブレイクした2007年。映画初出演にも関わらず立て続けに3本が公開され、翌年にその演技で「キネマ旬報」「ブルーリボン賞」新人賞を受賞した2010年。
そして、間違いなく去年・2019年も。

今週、「東京ドラマアウォード2020」にて、斗真さんが「俺の話は長い」の演技で主演男優賞を受賞しました。そして、2019年~2020年前半にかけて出演した連続ドラマ及び単発ドラマ全3作が、全て作品賞を受賞しました。(「いだてん」連続ドラマ部門最優秀賞、「俺の話は長い」連続ドラマ部門優秀賞、「アメリカに負けなかった男」単発ドラマ部門優秀賞)
斗真さんが大きく次へのステップに踏み出したように見えた2019年が、こんな風に「受賞」という形になって認められたことが、本当に嬉しいです。

そして、2019年から上演され、今年新型コロナウイルスの影響で惜しくも一部の東京公演と福岡全公演が中止となった主演舞台「偽義経冥界歌」も、「ゲキシネ」という形で映画館上映されました。

今、こちらのnoteでは20年前から遡って斗真担として見てきた斗真さんのことを書いていますが、今回は去年から今年にかけての斗真さん作品についての思いを書かせていただきたいと思います。

書いてみたら長くなりましたので、前編・後編に分けました。
今回は「東京ドラマアウォード」受賞作品について書きます。

★★トピックス★★

★東京ドラマアウォード受賞作品について
○いだてん~東京オリムピック噺~
○俺の話は長い
○アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂~

★★★★★★★

★東京ドラマアウォード受賞作品について

2019年~2020年前半に出演した全3作は、どれも違うタイプの作品ながら、大きなメッセージが込められた、そして「生田斗真が出ているから」ではなく、単純に「良作として」周りに視聴を薦めたくなるような、そんな作品ばかりでした。


○いだてん~東京オリムピック噺~

東京ドラマアウォード最優秀賞を受賞した「いだてん」は、視聴率こそ奮いませんでしたが、この賞を受賞するに相応しい作品でした。

ちなみに、この賞の主旨ですが、公式サイトで一般に投票を呼びかけた時の文言によれば、「これは海外の方々にもオススメしたい!」「これを見れば海外の方が日本の社会や風潮、日本人の考え方をよく理解することができる」作品とのことです。

これに合わせて「いだてん」を見ていくと、まず題材が「オリンピック」という「国際的な一大イベント」であり、日本人選手だけでなく海外のスポーツ選手やオリンピック関係者にもスポットを当てている点で、海外での視聴を薦めやすいと思います。
また、「オリンピック開催中止」等を描くために当時の国際社会情勢を描いており、近現代の世界史を表現した作品としての意味もあります。
そして、題材は「オリンピック」ですが、日本で「スポーツ選手」の概念が形成され浸透していく過程の背景として、当時の日本社会にあった価値観が描かれています。
前半の主人公が履いていたランニングシューズが「足袋」を改造したものであったというエピソードや、一見本編とは無関係に見える落語なのに、実は有名落語作品と主人公たちの心情が重なるなど、日本の独特な文化も反映しています。

視聴していない人から「オリンピックを賞賛するプロパガンダ作品」と揶揄されることもあったこの作品ですが、視聴してみると、そんな単純な作品ではないことが分かります。
オリンピックはじめ、様々な出来事を「良い点」「そうでない点」と多角的に描いていて、オリンピックに積極的な人たちもそうでない人たちも話に存在していて、「なるべく誰も取り残さない」ようにしている。
そして、実は本当に描きたかったのは、「オリンピック万歳!」ではなく、「その人がやりたいことをやれる社会にするために必要なことは……?」ということだったように思います。

「いだてん」での斗真さんは、三島弥彦という実在した日本人最初のオリンピック選手を演じました。
弥彦さんは「明治時代のスポーツ万能なイケメンパリピ大学生」で、明るい豪快さを持つ一方で、家族に認めてもらえていないのではと思ったり、海外で自分の実力を悟って落ち込んだり、繊細な所も持ち合わせた人です。
「明治時代のスポーツ界のアイドル」だった弥彦さんを、「日本の大手アイドル事務所・ジャニーズ事務所」に所属する斗真さんが演じたことで、斗真さんのバックグラウンドやスキルが存分に生かされました。
キレキレのダンスの動き、ちょっと変わった人なのに誰からも愛されてしまう愛嬌。弥彦さんが活動していたサークル・天狗倶楽部のうちわを持った女性たちが彼をキャーキャー取り囲む様は、まさに今のアイドルファンに通じる光景。
Twitterでもリアルタイムのトレンドに「生田斗真」ではなく「三島天狗」と役の愛称が上がったくらい、斗真ファン以外の視聴者の皆さんからも愛される「三島天狗像」をつくってくれました。

ちなみに、手前味噌ですが、「いだてん」の後日談として、ジャニーズ事務所にいる三島家の子孫と斗真さんが歌・ダンスで共演するという奇跡も起きましたので、もし興味のある方はこちらのnoteへ。
→生田斗真が三島弥彦を演じたら、「君と僕の6ヶ月」が復活した件|https://note.com/skyrainbowclover/n/ne69e170a98c5

○俺の話は長い

4年振りの連続ドラマ主演、しかも日テレ作品では初主演だったこちらの作品。
斗真さんと以前から親交のある脚本家・金子茂樹さんのオリジナル作品で、金子さんもこの脚本で向田邦子賞などを受賞されています。
それくらい脚本に力があるこの作品は、斗真さんの「一般的なイメージ」を見事にぶち破りました。

主人公は、過去に事業に失敗して無職になった30代の岸辺満。何年も家や地域の人の手伝いをして小遣いを貰い暮らす、いわゆるニートです。母親と実家で静かに2人暮らしをしていたところに、新築の家に引っ越すために一時的に姉の家族が同居することで、少しずつ彼の生活に変化が訪れます。
この作品は、凄く大きな事件が起こるわけではなく、彼の日常の世界が描かれ、そこで彼と周囲の人たちが会話の応酬をすることで話が面白おかしく進みます。彼の言い分がとにかく屁理屈で強気。でも、その中に真理を突くものや、時折彼の弱さに触れた本音が出てくることもあります。相手の本音を引き出して変化をもたらしてしまうような、妙な影響力もあります。

「ジャニーズ事務所にいるイケメン俳優」として、華やかな顔立ちからも、一般からは割とキラキラしたイメージを持たれがちな斗真さん。
そんな斗真さんが、屁理屈ばかり言うニートで、基本的な服装が灰色の上下スウェットという一見地味でかなりの曲者な満くんを演じたことで、私自身も周りから「斗真くんってあんな役もできるんだね!」という驚きの声を受けました。

「社会で働きに出ることが当たり前」という価値観がある日本で、その価値観から外れた生き方をする満くん。ですが、果たしてその価値観は正しいのか、また、一度諦めた人がまた動き出すにはどうしたらいいのか、といったようなことも作品には織り込まれているように思います。
また、すき焼きを食卓で囲む風景や、ハロウィンに便乗するのかしないのかなど、今の日本の日常にある光景も随所に出ているし、ニートの満くんがいる一方で、社会で成功して1人で豪華な家に住む女性事業家も描かれるなど、日本の格差社会の一面も見えます。
屁理屈の会話劇ながら、日本の生活や社会の様子を実は随所に反映している、という点でも、この作品の受賞は妥当だなと思います。

○アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂~

笑福亭鶴瓶さんが主役の吉田茂を演じ、戦後日本が独立する過程を描いたこちらの作品。
描かれている時代としては「いだてん」と重なるところもあるのですが、「いだてん」があくまで「スポーツ関係者と一般に暮らす人々」目線で日本の出来事を描いた作品だとすれば、こちらは「政治家とその家族の目線」で日本の出来事を描いた作品です。
この作品を見ると、今の日本の政治の流れがこの頃からの影響をずっと受け続けているものだということが分かります。
また、現在の日本でも様々な意見のある「日米安保条約」へのサインなど、長年に渡って社会問題となる出来事も描かれていて、見終わった後に今の日本についてつい考えてしまうような、そんな重厚な作品になっています。
主人公の吉田茂が、一生懸命に国のことを考えているけれども、口の悪さからいわゆる「炎上」しがちなところも、現在の日本や世界に通じるところがあります。

斗真さんは、吉田さんの腹心として独立のために奔走する白洲次郎を演じました。
オシャレで麗しい「正統派イケメン」の容姿、英語での会話、物怖じせずに吉田さんやGHQに意見する強気の姿勢。斗真さんの華やかな容姿と、年上の方にも物怖じせずに近づいていける彼の性格、そしてコツコツと磨きあげてきた英語力が存分に生かされた作品でした。
主役である笑福亭鶴瓶さんとも、普段からお世話になっている関係ということで、その関係性が役にも活きていたように思います。鶴瓶さんの演技もまた素晴らしく、サンフランシスコ講話条約に向けて緊張する様子や、それを同行した官僚たちが日本語に書き直して次郎が見せた時に涙しながら読み上げる様子など、政治家としての顔の裏にある人間らしさが出るシーンがとても良かったです。

3作品とも、日本にある社会情勢や価値観を反映した作品であり、脚本・演出・演者さんも素晴らしいです。
また、斗真さんに「イケメン俳優」以上のものをプラスしてくれた作品ばかりであったようにも思います。斗真さんの「俳優としての信頼感」を増してくれたような、そんな気がします。
そんな3作品の受賞、そして、斗真さんの主演男優賞の受賞は、本当に本当に嬉しいです。斗真さん、そして作品の関係者の皆様、おめでとうございます!!

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