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私がクソつまらん公務員を退職したワケ Vol.5【公立病院はクレームのはきだめ】
公立病院とは、クレームが集まって当然の職場
私は公務員を退職した。
私が暮らす田舎では、銀行員か公務員になるくらいしか、地元での働き口がない。
現在では銀行員の魅力が下がりつつあるが、公務員についてはまだ一定の人気があるだろう。
ひと昔前に公務員試験をパスした私は順調に勤務していたが、そのうっ憤は募る一方。
なぜなら、公務員として働く環境が良いものではなかったからだ。
その中でも特に公立病院での勤務は、心身ともに支障をきたす最低の数年間だった。
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私立病院との決定的な違い
読者のみなさんが思い浮かべる「病院」というと、たいてい「私立」病院だろう。
町を見渡すと大小さまざまな病院・クリニックがあり、「○○会」などといろんな系列もある。
一方、「公立」病院というと田舎の県では、2、3か所しかなく、中核的な市町村に1か所あるかないかくらいだ。
たいていは私立病院がない地域で、公的サービスの観点から自治体が設立した経緯が主流だ。
また私立病院では採算が取れないような、特殊な病気や症例に特化する公立病院も存在する。
公立病院と私立病院との大きな違いは、公立病院がその自治体の税金で運営されていること。
公立病院でも経営がうまくいけば、もちろん診療報酬で黒字を出すことができる。
しかし、うまくいく病院はかなり少ない。
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そして何より、公立病院の構造は、「地方自治体+病院」
地方自治体と病院分のクレームが、必然的に集まるのだ。
まさにクレームのはきだめ、公立病院でクレーマーからよく聞くセリフは「税金で運営してるくせに」。
今回の実話クレーム集は、公務員に興味の無い方も「笑える小噺」として楽しんでいただけるはずだ。
そして、「公務員になりたい!」という学生の方々は、心して読んでもらいたい。
これを読んでも、公務員になりたいと言い続けられるだろうか。
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公務員を退職した私のこと(プロフィール)
田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。
前職の経歴と風貌から、公立病院のクレーム係などハードな部署に回され続ける。
第二子誕生の際、当時の男性では珍しい1年間の育休を取得。
育児をこなしながらも、今後の人生を真剣に考え公務員を退職して独立。
引き継いだ農地で小規模農業を行いつつ、ブロガーとして歩み始める。
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公立病院の実態
公立病院は、主に私立病院では担わない難病や地域において、公的サービスの観点から設立されることが多い。
運営は地方自治体が担うので、その事務員や看護師はもちろん「公務員」となる。
院長については、その地方の有力大学の医局がお決めになるので、自治体が口出しできない。
しかし経営センスはまるでなく、赤字が出ても税金で補填されるので、一般的に公立病院の経営は赤字が多い。
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地方独立行政法人化が進む公立病院
公立病院の世界は2000年ころに大きな変革を迎えた。
行政改革の一環として、「地方独立行政法人〇〇病院」などと肩書きを変えたところが多い。
それは一定の要件を満たし、厚生労働省から認可をもらえた「優良」とされる病院だ。
それでも「経営補助」の名目で、自治体を通じて税金が投入されている。
看護師は独自に雇用するが、事務員はもとの自治体から「出向」扱いで受け入れることが多い。
近隣住民からすると、建物もスタッフも変わらないのだから、「公立病院」という意識はまるで変わらない。
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独法化した公立病院の悪魔の構造
私は不運にも、この独立行政法人化された公立病院に異動出向となった。
本庁の激務に疲れ、比較的自宅に近い勤務先を探していたので、通勤先としては希望通りだった。
しかし業務内容を体感すると、「こんなとこ来なけりゃよかった」と激しく後悔した。
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担当部署はクレーム係
私が出向した公立病院では、出向してきた職員をクレーム対応の最前線でこき使いつづけていた。
精神的にきついのでだいたい3年で異動となるが、その間はしっかりこき使われた。
一般的に大きな病院には、ろくでもない医師や医療スタッフが一定数存在する。
そのため、それを指摘するまっとうなクレームや改善に役立つ意見もある。
しかしながら、それはあくまでごく一部。
たいていは、クレーマーによる独りよがりであほな内容ばかりだった。
自らの日常や生活で感じた不満を、ぶつけているクレームが多い。
思い返すと意外に面白いものが多いので、みなさんに紹介したい。
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実際のあほクレーム
これから「公立病院に対するあほクレーム」を挙げていく。
そのクレーム媒体は、実際の窓口、電話、担当不在時の伝言などと多岐にわたる。
文中ではクレームを「要求」と定義し、クレーム係に寄せられた要求内容を紹介する。
本来はクレーム係の私が対応する案件ではないのに、「病院の困りごと」がなんでも押し付けられていたようだった。
なお、クレームの順番はソフトなものから順にハードに並べてある。
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クレーム1 「医師の対応が悪い」
「担当の先生が、PC画面ばかり見て話し、患者の方を全く見ない」
患者からけっこう聞かされるクレームだ。
実際に病院を受診して、こう感じられた方も多いだろう。
たしかに電子カルテが導入されてから、患者を横目にPC画面と「にらめっこ」している医師が増えた。
治療を受けに来た患者が、不満を抱くのも当然の話だ。
だが、ほとんどの患者は医師との関係悪化を恐れ、医師には直接言わない。
そのため、会計時に気の弱そうな女性事務員をつかまえ、そのうっ憤を晴らすことが多い。
会計窓口で不満を並べ立てても、当の医師まではなかなか伝わりにくい。
あまりに長引くようだと、クレーム係の私が対応を替わっていた。
ひととおり話を聞き、
「お医者さんは、勉強は優秀なんですけどね」と同情すると、患者は満足した様子で帰っていく。
医者へのクレームは、この殺し文句がとても有効だ。
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病院スタッフにブチ切れ
入院中の患者が「病棟の看護師が話を全然聞いてくれない」として、ナースステーション前で椅子を振り上げているとのヘルプクレームがあった。
椅子を振り上げたのは、高齢男性の入院患者で末期がん。
入院中の寂しさもあり、看護師に話を聞いて欲しかったそう。
しかし、看護師を始めとする病院スタッフも毎日大忙しで、この患者とうまく関係が築けなかった。
これが入院看護ケアの難しいところ。
こういう患者のために、院内に心理士を配置しているところもある。
入院中は寂しいだろうけど、病棟スタッフがそこまでケアできる環境が整備されていないのだ。
クレーム2 「近隣住民だから、ワクチンを融通しろ」
主にインフルエンザが流行りだす冬に多いクレーム。
近隣住民は、「救急外来の救急車の騒音などを我慢しているので、ワクチンを融通せよ」というのだ。
気持ちは分からないでもない。
しかし私立病院ならばともかく、公立病院にそのような優遇を期待することがナンセンスだ。
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クレーム3 「薬や治療の効果がないから、返金しろ」
勘違い患者に多いクレームがこれ、私立病院でも遭遇するかもしれない。
ただ、病院というのは「成果主義」ではない。
検査や薬の処方にコストがかかるのだから、その分の費用は当然必要。
検査しても病気の原因が分からないケースでは、患者に気の毒だが、それでも検査費用は必要となる。
「病院で検査すれば、原因が必ずわかる」
「病院で治療すれば、必ず治る」
という幻想は、患者の想像性が欠如しているとしか言えない。
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外国人患者の増加による新出クレーム
来日外国人や在日外国人によると、「日本の医療は世界一なので、必ず治る」との思い込みが強い。
息子に夜間の救急外来を受診させた、外国人女性。
受診の翌日に、クレームのため再度来院。
「もらった薬を飲ませても、ちっとも良くならない!金返せ!」とわめく。
そんな一晩で快癒しないだろうし、夜間の救外でかなりの出費になったのだろう。
クレーム係の私から事情を説明すると、「もういい!」と診察券を叩きつけて帰っていった。
クレーム4 児童虐待通報を逆恨み
幼児などの子どものケガで来院すると、まずは保護者による虐待を疑う。
特に顔・頭部・性器近くのケガは、問答無用で児童相談所に通報することになる。
「通報」といっても、その保護者がすぐに逮捕されるわけではない。
児童相談所はまさに「相談」するところなので、いろんなサポートメニューがある。
しかし、保護者に「児相通報」の件を伝えると(この瞬間が最も緊張する)、激高する親も存在する。
児童相談所の悪いイメージによるものか、それともつつかれると痛いところがあるのか。
児童相談所のサポートメニューを丁寧に説明しても、全く納得しない。
今回激高した父親は、
「児相への通報は気をつけろ。病院スタッフが刺されることになるぞ」
と脅してきた。(この発言も、児相・警察と共有済み)
このバカ親、絶対やってるな。
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クレーム5 高齢ドライバーの運転
次のクレームは、1階の病院スタッフからのヘルプ。
80歳代の男性患者が、病院の正面玄関まで自家用車で乗りあげてきた。
幸いその車は、玄関ドアの10cm前で停車。
玄関前のロータリーを見誤って、玄関まで侵入したらしい。
少し間違えれば、全国を騒がす「高齢有害ドライバー」のニュースになるところだった。
ロータリーから玄関ドアまで、車で通れる構造もおかしいのだが。
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病院の駐車場は要注意!
全国的にニュースとなる高齢ドライバーによる建物に突っ込む事故。
私が勤務する病院でも、「歩道乗り上げ」や「駐車場の自動開閉バー破壊」などが、毎月発生していた。
命が惜しいならば、病院の駐車場で長居せず、用が済んだら早々と立ち去ることをお勧めする。
また駐車する場所も、少し離れてスペースに余裕のあるところがおススメ。
クレーム6 窓から飛び降りようとする
病院で長期治療したり入院していたりすると、気が滅入る患者が多い。
今回は、「6階の部屋から患者が飛び降りようとしている!」とのヘルプクレームだ。
病気が治癒しない男性患者がヤケを起こし、病院で投身自殺を図ろうとしたのだ。
病院スタッフの説得により、この男性は思いとどまった。
しかし「病院の窓が簡単に開くことが問題」として、クレーム係がすべての窓にストッパーをつけて回るハメになった。
比較的新しい病院だと、窓は少ししか開かないような設計が主流だ。
おそらく投身自殺や患者の転落を受けての、現在の病院建物設計なのだ。
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クレーム7 10年前の薬が「飲めるかどうか」深夜に電話
クレーム係の私が不在の深夜帯に、救急外来に電話。
相手は、けっこう常連のクレーマー男性。
「10年前に処方された薬が、まだ飲めるかどうか知りたい」とのこと。
対応したスタッフも困惑したが、しつこい質問にいら立ち喧嘩別れ。
しかしこのクレーマーは「電話対応が悪い!」として、設立元の自治体にまでクレームを付ける。
先の深夜の電話は、「揚げ足取り」が目的だったようだ。
この対応でクレーム係として、1か月ほどの期間を費やすこととなった。
自治体の担当者がバカ真面目に対応してしまい、このクレーマーを「あしらう」ことができなかったことも関係する。
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クレーム8 深夜の救急外来で暴れる
深夜の救急外来を受診した男患者が、「会計が遅い」としてドアを蹴りつける。
病院が警察通報し、この患者は警察官からも諭されることになった。
深夜の救急外来は、このような迷惑行為と隣り合わせ。
一部の不届きな患者により、地域の大事な医療資源を消耗している状況だ。
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社会的に迷惑な酔っ払い患者
最も迷惑なのは、夜間の酔っ払い患者。
特に、年末の忘年会シーズンに多くなる。
「酔っ払いなど放っておけばよいのに」と内心で思いながら、医療スタッフは対応に当たっていることだろう。
救急搬送する隊員さんにも、同情してしまう。
まとめ 公立病院は外から見ると面白い組織
思い出したクレームを挙げてきたが、イヤな思い出ばかりが蘇ってきた。
クレーム係として前線で対応するのもイヤだったが、スタッフからヘルプで呼び出されるのもイヤだった。
クレーム係がしっかりし過ぎていると、
「なんでもかんでもクレーム係を呼べば解決してくれる!」
とスタッフに甘えが出てしまう。
そもそも私は、公務員の「出向職員」。
外様の身分で、なぜここまではきだめの汚れ仕事をさせられるのか、理不尽に感じていた。
クレーム係は生え抜きのプロパー職員を配置して、病院にしっかりフィードバックさせるべきポジション。
しかし未だに公立病院では出向公務員を、数年間こき使う構造が続く。
若くて優秀な自治体職員が出向してきても、これでは幻滅するに違いない。
そして、可能性があるうちにほかの明るい世界に羽ばたいていく。
はぁー、これは公務員を辞めたくなるわ。
![労働組合,気持ち悪い](https://assets.st-note.com/img/1700007480-O9kiqzJIH2.jpeg?width=1200)
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