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『出会い系』

Dさんは妻子ある40代の男性。ふとした遊び心で出会い系のサイトにはまった時のことを話し出した。

「出会う気もないし、冷やかし程度で始めたんですけどね」

明らかにサクラと思われる、若くて可愛いコたちからのメール攻勢に最初はテンションも上がったが、どれも金目当ての援助交際目的と分かると興覚めしたという。

「少ない小遣いで会えるわけもないし、病気も怖いですし」

それでも惰性でプロフィール写真を見るのは続けていた。可愛い自撮りや、部分部分ハートマーク等のイラストで隠した写真の中、Dさんは奇妙な女性を発見した。

≪○○区 37歳 無職 きのこ≫

鈍いオレンジ色に支配されたトンネル内で、四つん這い姿で映っている女性。顔は正面を向けているが、目の所は黒髪に隠れ見えない。

「気持ち悪いなぁと思いましたが、ポイントも余っていたしネタでメール送ってみたんです、何か会うための条件ありますかって」

返信はすぐに来た。そこには意味不明な単語の羅列が書いてあった。

「会いたいっていう文章の後に、血液だとか体温だとか裂傷だとか脱脂綿だとか…医療用語みたいな単語がビッシリと」

Dさんは気味が悪くなって即座に退会した。


数週間後、ニックネームを変えて性懲りもなく出会い系を再開したDさんは小さく首を振った。

「プロフ検索したら、そいつ、まだ居たんです」

ただし写真は顔のアップになっていて、目の所にドクロマークが張り付けてあったという。

「いくらかマシになったとはいえ、危険な雰囲気マンマンですけどね」

Dさんは苦笑いして、持っていた缶コーヒーを飲み干した。



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