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何でか、この場面が好きである。第10回

この作品中で朗読される「詩」が何だか判明しないまま、当時の僕はモヤモヤと過ごしていた。今考えればどん底だった時代。金は無いが暇だけはあったので、本屋に行っては片っ端から詩集を開いた。

「あぁ汝、寂寥の人」覚えていたのはこの1節のみ。それを手掛かりにランボー、ボードレール、高村光太郎、中原中也など調べてみるが、何処にもない。今考えれば、随分と無駄というか牧歌的というか。「ググれカス」なんて言葉を誰も使ってなかった時代ならではの想い出。

諦めかけていた時、その詩は『萩原朔太郎詩集』の中で見つかった。タイトルは「漂泊者の歌」

「日は断崖の上に登り 憂ひは陸橋の下を低く歩めり」この1文から始まる長い詩を、当時の僕は丸暗記して呟きながら、よく淋しい夜道を歩いたものだ(かなり恥ずかしい過去ではあるが)。

あ、気付けば前振りが異常に長くなってしまった。では恒例の「ネタバレ注意」を告知しつつ、本題へ!


≪寝ましょう、僕も疲れちゃった…≫

大好きな映画だけに好きなシーンを1つ選ぶのは難しいが…やっぱりクライマックスである夜行列車での場面か。

ベテラン刑事役の室田日出夫が銀行強盗である松田優作を追い詰める。拳銃を突き付け自白を迫っていると、そこに相棒である鹿賀丈史が現れる。

鹿賀にライフルを向けられ固まった室田から拳銃を奪った松田優作は、一発だけ弾を残して実弾でのロシアンルーレットを始めるのだが…ここで優作が語るのは「リップ・バン・ウィンクルのお話」。西洋版「浦島太郎」なわけだが、喋り・表情全て、とにかく狂気が笑気を誘うというか、面白くてしょうがない。

実際、若い頃、居酒屋で友人とこのクダリを1時間爆笑しながらやり続けて、周りから大ヒンシュクを買ったことがある。

そのぐらい中毒性があるというか、素晴らしいシーンである。

何気にこの映画自体も、見方によっては「主人公がコンサート中に寝てしまい、その間に見た夢」と言えなくもない。

もう一つだけ、どうしても入れたいのは同窓会のシーン。東大という設定なのだが集まっているのが岩城滉一、風間杜夫そして阿藤海(!)である。この人たちが外務省だったり総合商社のエリートだったりを演じ、物凄く似合わないセリフをやりとりしているのが見ていて最高に楽しい。

あ、サントラの話…いや、キリがないので今回はこの辺で。









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