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心で巡るNew Zealandの旅 vol.1

はじめに

この写真エッセイは、チョット変わった内容になっているかもしれない。よくあるようなガイドブックに書いてあるような、街の詳細が正確に説明されているわけでもないし、写真集のような観光地の景色ばかりが並んでいるわけでもない。
強いて言葉にするなら、旅好きの現地人が各地を歩き、その目で見、聞き、肌で感じた景色をそのまま言葉に起こした、パーソナルトラベルフォトジャーナルとでも言えばいいだろうか。
飾った言葉ではなく、その景色と向き合って心に浮かんだ思いを、ただ綴っていこうと思う。そうこれは、僕の目を通して現地を巡る、あなた自身の旅なのだ。

南島ゴールデンルートとは

かつて僕がツアーガイドをしていた時、環境に来た人々からよく聞かされたのが「南島ゴールデンルート」という言葉だった。
 南島ゴールデンルートは、クライストチャートから美しい氷河湖であるテカポ湖と世界遺産にも登録されている国内最高峰のマウントクックを経て、国際屈指の観光都市であるクイーンズタウンに至るルートのこと。確かに現地に住む僕たちにとっても、ここは別格の美しさを誇るルートなので、「ゴールデンルート」という名称にも素直に頷ける。
 今回はそのルートにある美景を、写真家の目線でご紹介していきたいと思う。スタート地点は、「女王の街」クイーンズタウンだ。

Queens Town 〜女王の名を冠する美の街〜

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僕が初めてこの街を訪れたのは、2008年の夏のことだった。実は初めて見たニュージーランドの街がこのクイーンズタウンだったこともあり、今でもこの国のイメージには、クイーンズタウンの景色がチラチラする。
クイーンズタウンはその名の中に「女王」の文字が使われているほど、ただひたすらに美しい。特にサマーシーズンの美しさは、どんな言葉を使っても現しきれないくらい、ただただ美しいとしか言えない。
でも他の観光地のような、精錬された美しさとはチョット異なる。女王という名にはふさわしくないかもしれないが、言ってみればそれは「手つかずの美しさ」と言ったほうが正確かもしれない。

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クイーンズタウンは、ワカティプ湖と呼ばれる湖の畔にある街だ。この湖を初めて見ると、最初は海に見えるかもしれない。僕も海だと信じて疑わなかった。その理由は、静かに寄せては返す波があるからだ。
どこまでも透き通った美しい水にも、思わず息を呑んだ。まるでクリスタルのように輝くその水は、見るものの心まで透明にしていくようだ。
浜辺にしばし佇み、言葉を失って湖を眺める。それは自分を見出す時間のようにも思える。

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上空から見ると、この街がとてもコンパクトなことがよく分かる。美しい湖を囲むように、山裾の湖畔に沿って広がる街並み。緑豊かなエリアに、湖を愛でるためだけに出来たような、まるで夢のような街だ。

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クイーンズタウンに空路でやってくると、その街が高い峰々に囲まれてできていることを実感する。飛行機は着陸時に、山肌近くをまるで谷底に向かって降りていくようにアプローチしていくからだ。
僕も訓練で何度かこの空港に着陸したが、毎回迫りくる山々にドキドキしたのを思い出す。でもその航路は緊張の連続であると同時に、驚くほどの美にも満ち満ちていた。

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街の周りにそびえる岩山は、荘厳で気高い。来るものを拒むように立つ峰々は、夕暮れ時には特に橙色の陽光を反射し、崇高な煌きを放つ。それはまるでこの街を外敵から守る、ガーディアンのようにも見える。その守りの中で、この街は今日も安らかに美しさを育んでいるのかもしれない。

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街の中心部に位置するビーチには、沢山の人々が思い思いの時間を過ごしていた。ある人は浜辺に横になって、アイスラテを片手に読書に勤しみ、ある人は家族と水遊びに興じ、またある人は愛する人と寄り添いながら湖を見つめている。

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そんな人々をよそに、水鳥がゆっくりと湖面を漂っていく。ゆっくりとした時間が、この街にはいつも流れている。それはまるで僕たちに、「急がずゆっくり生きよう」と語りかけているようだった。

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空を見上げると、抜けるような青空を、一羽のカモメが気持ちよさそうに滑っていく。幼いころ心から、鳥になって広い空をどこまでも飛んでいきたいと切望した。こうして鳥を見つめると、今でもその思いが蘇ってくるようだ。

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人々の喧騒から離れるように、一人ビーチを歩き、人気の少ないエリアにやってきた。ほんの10分ほど歩くだけで、ほぼ貸し切りエリアが見つかるのが、ニュジーランドらしいなと思う。観光地ではどこにいっても人だらけの日本では、考えられない贅沢だ。気持ちのいい木陰を見つけて腰を下ろし、数の歌声を聞きながら、しばしこの街の美に酔いしれる。これ以上の贅沢が、他にあるだろうか。

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ふと湖の沖合に目を向けてみると、ゆっくりと進んでいく船が目に入った。この街にはたくさんの船が行き来する。あの船に乗っている乗客の目からは、今僕が座っているこの浜辺はどのように見えるのだろうか。ふとそんなことを思いながら、ゆっくりと遠ざかっていく船を眺めていた。

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しばらくすると、去っていった船の方向から、ジェットボートがやってきた。湖面に水しぶきを上げながら疾走するジェットボート。そしてそっと空を見上げると、パラグライダーがどこまでも澄み切った青い空の上をふわふわと滑空しているのが見える。あたりには静寂が広がり、聞こえるのは風の音ばかり。煌めく陽光の中で、全てが優しくそして穏やかに見えた。

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湖の対岸に目を向けると、こんもりとした木立を抱いた小さな森が見えた。数艘のボートも繋がれていて、心惹かれる景色だ。まだ十分に時間が有るので、次はあそこへ向かってみたい。

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