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「運動脳」の感想

本書の概要

 本書の作者であるアンデシュ・ハンセン氏はスウェーデンの精神科医である。以前、スマホ脳などで話題となった方であるが、ハンセン氏によると、近年精神科を受診する患者は右肩上がりにあり、抗精神病薬を服用している患者も多いのだという。スマホ脳では、スマホがもたらした人々への影響を述べていたが、今回は運動が如何に脳に良いかということを種々の論文などをベースに語っている。
 ハンセン氏曰く、通常の脳トレ(パズル、ドリルなど)には大きな認知機能改善の効果は無いのだという。しかし、運動を行うことで前頭前皮質や海馬などの血流が増加することで遂行機能や記憶の改善、モチベーションの改善などにつながるのだという。目的によるが、基本的には心拍数が上がるような運動を一定時間行う習慣をつけることが必要なのだという。そういった情報が認知機能のあらゆる側面に対して記述されている。

感想

 私は、前作である「スマホ脳」も読了している。ハンセン氏の著書は相変わらず、わかりやすく、説得力があるなぁと感じさせられた。

 まず、分かりやすさについて。人の認知機能には色々な種類があるのだが(記憶、集中力、創造性など)、本書ではそういった認知機能の種類ごとに、なぜ運動が効果的なのかを端的に説明されている。
私の話になってしまうが、私は本当に物覚えが悪くて、人の名前を忘れるのは当然、5分前に言われたことを忘れて注意されることを常時繰り返す迷惑人間である。そんな私には、特に集中力を司どる前頭葉や、記憶を司どる海馬を鍛えることができる、そして脳の各領域同士の結合が強化されるなんて情報は目から鱗。そこを読む時だけ時間が秒速で過ぎ去ったかのように読み終えた。このように、人それぞれ持っているコンプレックスに合わせて情報を抽出できるのは、本書のとても良い点だと思う。また、本書の終盤には、具体的にどれくらいの強度の運動をどのくらいの時間や頻度で行えばいいかも具体的に示されている。本当に効果が出るかはさておき、いくらバカな私でも、ハンセン様の仰せのままに運動をすると心に誓えば次の日から運動を始められる。運動を始めるモチベーターとして本書を手に取った人にとっては、非常に有用な1冊であると言えよう。

そして、説得力について。先ほども言った通りハンセン氏は精神科医として、日々の臨床業務をおこなっている。精神科医は、言ってみれば脳機能の専門家である。脳の機能などに関する情報は、この人が書くより信憑性の高い情報は無いんじゃないのと思われる。また、本書では数々の研究論文が引用されている。私も医療職の端くれなので何となく把握しているつもりだが、特に医師の仕事の中でエビデンスを把握することは重要である。つまり、医師はその職に就いてからおそらく何百何千と論文を読み、自身も論文を出していることも多いと思っている。そんな医師である著者が本書のために選び抜いたエビデンスが本書には詰まっている。つまり本書は科学的な手順が踏まれた情報の宝庫なのだ。変な運動メソッドなんかより、何倍も信頼できるというものだ。

 また、私の中で特に印象に残っているのは、運動には心拍数が大切ということが色々な章で述べられていることだ。要は心拍数や血圧を上げてあげることで、物理的に脳に流れる血流を増加させてあげる。それにより脳の重要な箇所である海馬や前頭前皮質などに流れる血流が増加し短期的にはそれらの部位が賦活され、長期的にはそれらの部位の毛細血管が発達していく。海馬に関しては、海馬の細胞新生も促進できるというのだ。元々私自身、身体を動かす趣味が多いので、ランニングの必要性は感じていたのだけれど、走ることに関してだけはどうにも続かなかった。でも、運動は体力をつけるだけじゃなくて頭を良くする意味でも非常に重要なのだというのが、身体の中で運動をするとどのような変化が起きるのかというのがロジカルに説明されていたのでモチベーションにつながった。

本書を読んだ皆さん、この記事を読んだ皆さん、そして何より、俺!!
走れ!!走るんだ!!そして心臓を躍らせろ!!


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