見出し画像

「才能の正体」の感想

本書の概要

 本書は、坪田塾の塾長であり、「ビリギャル」の著者である坪田信貴氏が「才能の正体」、「才能の伸ばし方」を教えてくれる書籍である。講師として1300人以上の生徒を教えてきた著者が、自身の経験を踏まえて述べる「才能」についての考え方には感銘を受けるものがあった。本書は4章構成である。以下の中で、私は第1章のような「才能」とは何か?というようなことに興味があり本書を手に取ったので、第1章について主に述べていくが、それ以外の章も非常に面白かったので、興味のある方はぜひ手に取っていただきたい。
1章:才能とは何か?
 一般的に「才能」と呼ばれるものはなんなのか?を述べる。
2章:「能力」を「才能」へ
 どのように能力、才能を伸ばしていくのか?を述べる
3章:「才能」のマネジメント
 才能を開花させ、職場で輝けるような人材を育てるマネジメントの仕方
4章:「才能」と「成功者」、「才能」と「天才」
 才能があると言われる人の具体的な行動例

才能とは何か?

以前別の「才能」について取り扱った本を紹介したので、それに関する記事もぜひ読んでください。
https://note.com/skybook135/n/n194918881ea4

本書では、まず才能について辞書を用いて定義をしようとしている。いくつかの定義を紹介した上で、著者が最もおすすめしている定義は広辞苑の定義だ。

才知と能力。ある個人の一定の素質、または訓練によって得られた能力。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p21.

「才能がある」と言われている人たちは、
"その人に合った"動機付けがまずあって、
そこから"正しいやり方"を選んで、
"コツコツ努力"を積み重ねている。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p27.

ビリギャルのような経験を何度もしてきた著者は、「才能」は生まれ持った素質よりも「努力」が重要ということを身をもって体感している。そして著者は、努力を行うための条件について詳細に説明している。2つ目の引用の中で「動機付け」「正しいやり方」に該当する部分だ。

「認知」「情動」「欲求」がないと、才能は生まれない。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p48.

認知とは、努力しようとすることに対して「自分にできそう」と思えるようになること。情動とはその名の通りテンションが上がること。欲求とは、本当に自分がそれをやりたいと思うかということ(炎が消えにくい安定した状態)。この3つの条件を備えていることが才能が生まれる条件だという。
確かに、以前紹介した「才能の科学」でも1万時間練習したバイオリニストの話が出てきていた。それだけの膨大な量の練習を継続するにはある程度安定した動機付けは、絶対に必要であるというのは、とても納得できる。

ここまで来たらあとは努力の仕方だ。著者は、赤ちゃんの抱っこの仕方講座に出席した時の感動体験を語っている。
赤ちゃんは、この間までお腹の中で丸くなった姿勢でお腹の中にいた。それがいきなり平らなベッドに寝かされることは苦痛である。だから、お腹の中にいた時の姿勢と同じような姿勢を作ってあげるとすぐに泣き止むのだという。赤ちゃんの抱っこという全母親の悩みに対して、これだけロジカルに説明できるということに感銘を受けたのだという。そのような経験を踏まえて、著者は努力の仕方をこのように言う。

赤ちゃんに泣かれない人というのは、何年もやっているうちに赤ちゃんの抱き方をたいとくしていて、赤ちゃんが泣かない状態を知っている人なのです。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p67.
"理屈を習う"と、どんなことでも、より早く効果的に能力を伸ばすことができるということが、赤ちゃんの抱っこの仕方から、僕が学んだことです。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p68.


このように、塾講師などとしての体験を踏まえて才能のについての考え方を提供してくれている。お伝えしたいことは他にもたくさんあるが、今回はここまで。

感想

正直な話、前回読んだ「才能の科学」が良すぎて、読む前は「本当に読む必要があるか?」とかなり考えてしまい1週間ほど置いといたままにしてました(図書館で、わざわざ取り寄せてもらった本なのに)。
でも、読んでみたらめちゃめちゃ面白い。日本人の著者ということもあって非常に読みやすいし、内容も具体的に取り組みやすいことがずっと書かれていてかなり影響を受けた。

才能っていうのは努力から生まれるもので、努力には適切な動機づけが必要であること。動機づけが得られたら理論立てた方法で才能を伸ばす。また、才能を伸ばせるような環境づくりの方法。これらを一挙に学ぶことができた。
これ一冊で、個人の才能を伸ばしたい人にも、組織の質を上げたい人の両方の層にアプローチできる非常にターゲットが広い本だと思う。色々な人にオススメできると思った。

そして最後に、私が最も好きだった箇所を紹介しておしまいにしたい。要は、努力は才能を伸ばすために大切だけど、努力をして辿り着くゴールはどこなの?という話だ。
著者は塾講師として、志望校の合格を目標に生徒と一緒に戦っている。でも、仮に志望校に合格できなければそれは失敗なのか?
私自身も努力をすることは多かったが、確かに努力して何を得られたか?と考えると明確な答えは出ない。でも、志望校に合格できなかったからといって、努力が無駄だったとは言えないことだけは分かる。
これ以外にも答えはあるだろうが、正解の一つとして、備忘録の意味を込めてこの言葉を書き留めておしまいにしたいと思う。

「本当の成功」というのは、「100年かけても達成したい」と心の底から思うものを見つけることや、そういう思いを分かち合える仲間を見つけることです。
坪田信貴:才能の正体.2018, 幻冬舎, p62.

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?