【思い出語り】生まれて初めて出会った漫画、「DQ4コマ漫画劇場」
思い返せば私という幼児は、
世界にまず紙があった。
人はそこに絵を描いた。
次に本と出会った。
ひたすら文字を追った。
という感じの幼少期だったので、最初に親しんだ能動的趣味は絵を描くこと、受動的に楽しんだコンテンツは「絵本、児童書」だった。
当時の私はとにかく文字を追うことが大好きで、下手したら後々ハードカバーでミステリとかを読み漁る大人になっていたかもしれない(なおなっていない)。
その転換期は何か。
小学4年生の時に出会ったDRAGON QUEST4コマ漫画劇場である。
運命の出会い
私はそれまでこのゲームのことを一切知らなかった。だけどある日、古本屋で1巻〜5巻が紐で纏めて売られているのを見て、どうしても欲しくなった。
もう一度繰り返すが、それまで全く知らなかったゲームなのに、である。
唯一見えた情報、1巻の表紙はタイトル部分が黄色で彩られ、Ⅳの勇者、アリーナ、ライアンがスライムを追いかけている絵だった。
楽しそう。
なぜか直感的に思った。
そして、そんな面白そうな本がこの世に5冊も売られていることにドキドキした。小学生の私はしばらく本屋をうろうろし、悩み、そして意を決して親にこの本をねだった。
これがドラクエと私の出会いだ。
ドラクエ4コマ漫画劇場は一見さんにとても親切だった。アイテムと魔法の説明が毎回丁寧に枠外に紹介されている。それを読めば、今登場人物がどういう意味合いでこの呪文を唱えているか、アイテムを使っているかバッチリわかる。
私は夢中でこの漫画を読み進め、ドラクエというゲームのシナリオ群がいくつかのパターンに分かれていることを知った。
Ⅰは勇者一人の物語。
Ⅱは王子二人、王女一人の物語。
Ⅲは勇者と誰か……勇者以外のメンバーは非固定らしい。どうもプレイヤーが好きなキャラクターを選んで組み合わせられるようだ。
そしてⅣは表紙にいた緑の髪の勇者、あと7人の仲間の物語らしい。
私はせっせと魔法とキャラクターの知識を蓄え、何度も出てくるシナリオのパターン(=ゲーム内イベント)を覚え、ついに作者ごとに用意する起承転結で笑えるようになった。
ドラクエミリしら以下の素人が、この本を理解して楽しむようになってしまったのだ。
私はとりわけ、おてんばなアリーナ姫が好きだった。当時はまだまだ「女はおとなしくしとやかに」の時代。それを拳と蹴りでかっ飛ばす、快活なアリーナがかっこよく可愛く素敵に見えた。
「漫画家」との出会い
その後私は、(当然だが)作家によって絵柄やネタに個性があることを知った。最初に好きになったのは石田和明先生。優しい絵柄とほのぼのした作風が好きだった。
当時(コミックス初期)、必ず大トリに鎮座していた柴田亜美先生はさすがに私でも知っていた。絵柄が独特すぎる故、一発で「あっパプワ君描いてる人だ!」とわかった。
後に作家陣に加わり、私が一番好きになったのが幸宮チノ先生。まず名前が可愛い。そして絵も可愛い。漫画をよく知らなかった私は「鼻がない!」ことに衝撃を受け、でもそれがデフォルメであること、「それでいいんだ」ということを知り、虜になった。
私はこの幸宮先生に憧れ、絵を真似するようになった。彼女が描くキャラクターはみんな可愛かったが、特にⅢの女遊び人が印象に残っている。一人称「あたしちゃん」と名のり、常ににこにこしていた。
当時のドラクエ、特にⅢに仲間が話すテキストデータはない。多分彼女の独自設定だと思う。これが本当に良くて。
ボディラインの清楚さ、しかししっかりとおっぱいの盛られた谷間。金髪ロング巻き毛のヘアスタイル。バニー。デザインの大元を決めたのはドラクエ開発サイドだけど、幸宮先生が描くと輝くほど可愛く見えた。
そんなこんなで、Ⅲの各種職業の中で一番推しなのは今でも女遊び人だ。実際プレイしたら絶対選ばないけど。
……話がそれた。あとは個人的に、金田一蓮十郎先生辺りが好きだ。絵柄が可愛い。えっ、この方16歳現役高校生でプロデビューしてるの? 鬼か……?
まぁ、だいぶ先の作家さんの話もしてしまったけど、とにかくドラクエが大好きになった私は、6巻から先を求めてあちこち彷徨った。結果、どこでお宝と巡り合ったかは忘れたけど……5巻セット、古本屋で出会ったこの作品を13巻まで欠けることなくずらりと揃えることが出来た。
……まだだ。まだ足りない。
その後私の欲求は留まることを知らず、4コマクラブ傑作集(編集部に送られた素人作品の中から厳選されたもの)、ガンガン編、1P漫画劇場まで揃えた。持ってなかった知らなかったゲームの作品なのに、この入れ込みようは我ながらすごいと思う。
私はそれだけこの作品が好きになっていた。
ゲームとの出会い
数年後。Ⅳまでしかなかったシナリオ群にⅤが加わり、Ⅵが増えた。その頃にはついに、私の中にもある感情が芽生えた。
このドラクエというゲームを、私もやってみたい!
するとたまたまか神の思し召しか、あるクリスマスにⅥのソフトが我が家にやってきた。私の初プレイドラクエ、Ⅵ! 初めましてⅥ!!
その頃とっくにドラクエ通になっていた私は、したり顔でコントローラーを握った。ロト編三部作が完結し、Ⅳから始まった天空編も三作目。いい加減世間にマンネリという文字が漂う中、どうにかその空気を打破しようと売り出されたⅥ。さぁ、貴方はどんな物語を私に見せてくれる……?!
結論。
子供には色んな意味で難しかった。
というのも、Ⅵは「プレイヤーの自由を極力認める」という作風で、用意されたシナリオをひたすら追いかける形にはなっていなかった。途中、街の人々の「次はここへ行け」という助言が途切れてしまう。だからプレイヤーは自ら知らない土地を歩き回らなくてはならない。
……いや、いっそこれはいい。私は地図を埋めるのが好きなタイプのプレイヤーだった。だからゲーム内の地図が白紙からカラーに変わるのが楽しくて、あちこち歩いては新しい街を見つけて入り、イベントをこなした。
問題はストーリーである。
自分探し、とは。
いやムドー。必死に倒したと思ったら魔王じゃないんかい。あんなに気合い入れた、頑張った気持ち返してくれよ。
あ〜〜ラミアスの剣って何〜〜天空装備じゃないんかーーい、私の憧れ〜〜どうすればいいの〜〜〜〜。
そして最後は、まぁネタバレを恐れても仕方ない。主人公は「本当の自分」を取り戻し、思い出の「幻の大地」、そして共に戦ったバーバラと別れて自分の故郷に帰りました。と。
…………魔王…………?
これで、エンド?
なんか因縁薄いな? Ⅳとかの熱さに比べると……いや、Ⅴだってこんなあっさりしてないよ。少なくとも4コマで読んだ限りでは。
ドラクエって……こんな感じなんだ…………?
もっと言えば、バトルも本当に大変だった。聞けば、歴代の中でも敵が手強い回だったらしい。そうなんだ……真ムドーには本当に苦戦した。オープニングと繋がってるからめっちゃ気合い入って楽しめたけどね。
正直ムドー倒した時は、「もうこれで終わっていいじゃない!」と思ってしまった。これがいわゆる「ふふふ……奴は四天王の中でも最弱……」だと知った時は、本当に膝から崩れ落ちた。私の努力…………。
それでも。結論、ドラクエをプレイ出来て良かった。漫画の中にしかなかった世界をゲームという形で追体験出来た。憧れの呪文を使えた。Ⅲで散々見た職業システムも、Ⅴでお馴染みの魔物を仲間にするシステムも両取りで楽しめた。
Ⅵはあまり取り沙汰されないけど、確かに名作だと思う。
私はドラクエ4コマとの出会いを通して、人生初のRPGゲームをクリアした。今でも良い出会いをしたと思っている。
ドラクエの魅力
その後の私は、借りたりなんだりでⅤ、Ⅰ、Ⅱをクリアした。直後にⅢのスーファミリメイク版が出たけど、自分では買ってない。そしてⅣのリメイクがないまま多感な時期に入り、他のコンテンツにハマってドラクエ最熱期は去ってしまった。
ぶっちゃけ真のファンには申し訳ないけど
、私のプレイ体験はこれきりだ。
でも私は今でもドラクエが好きだ。多分、当時も今もプレイヤーとしてではなく、コンテンツを外から眺める消費者……今で言う二次創作ファンとしての感覚が強いのだろう。
ドラクエは、画期的だった。特に最初に見かけて惚れ込んだⅣは、キャラクターが魅力的だった。
あとから知ったけど、私が「お約束」だと思っていた各キャラクター達の人間関係は、原作には一切存在しない。4コマ漫画の作者たちが生みだしたファンの妄想らしい。
いわゆる非公式設定という奴だ。
ドラクエは登場人物がほとんど喋らない。いや、スーファミまではそうだった、というべきか。ごくシンプルなキャラ立てで物語を盛り上げ、彩ってくれる。
その行間を読み、こうかもしれないああかもしれないと空想を広げて楽しむ。脳内で架空の人物たちが生き生きと笑い、泣き、怒り、大きな志を掲げて躍動する。そんな世界を知ったのは、「見ることが出来た」のは、大いにドラクエ本編と4コマ漫画劇場のおかげだ。
それに加えて、しっかりがっちり練られた設定とシナリオ。幼かった私に舞い降りた「西洋ファンタジー」「剣と魔法の世界」の概念。全てが新しく、わくわくして、私をどっぷり西洋ファンタジー好きにさせた。
ドラクエは私のオタクスピリットの原点であり全てだ。私は今でも西洋ファンタジーの作品が一番好きで、自分でも書きたい。書いている。それだけのものをもらった。
ドラゴンクエスト。大好きだ。
まぁ、正直。Ⅵの次にやったⅤが面白すぎて好きすぎて、小説もゲームブックもドラマCDも派生漫画(天空物語!)も買ったなんて、今考えてもめちゃくちゃ面白いんだけどね。映画も見たよ。すっごく複雑な気持ちになった。
なんという愚弄……なめてんのか……でもあれが「1つの物語として面白い」のは認める……いやでもそのアイデアをドラクエⅤでやって欲しくはなかった……クソっ…………。
ドラクエ。これからもきっともっと発展する。エニックス(現スクエアエニックス)には頑張って欲しい。
私の夢は本を出版して、その本を本屋に並べてもらうことです。本好きとして一度でいいからこの光景を見てみたい! 応援するね!という方、あなたの作品推します!という方、よろしければサポートしていただきたく思います……!