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尊敬するA医師に感謝#2 医師を退く決断

私が尊敬するA医師に癌が発覚してから、A医師は必死に癌に立ち向かっていました。

A医師の治療法がいいのかどうかは、もちろん私にはわかりませんでした。

A医師も「この手術が1番いいという先生からのお話があったから、やってみるしかないよ・・・」
この言葉に、A医師の覚悟が揺らいでいることを感じました。

A医師はまず癌を摘出することを目的とした大手術を終えました。
それから術後の落ち着きを見せた頃、私は職場の仲間とA医師の入院する病院へお見舞いに行きました。

そこでA医師は背中を丸めてベッドに腰掛け、ゆっくり話し始めました。

「俺もまだ自分にできることは何かを考えているんだよ、生きている以上はさ。やらなくてもいいのかもしれないけど、ずっと医者でやってきたし」「でも、こんなになって初めて患者さんのことがわかるよね。考えさせられるよ」と手術の影響で言葉をうまく発することができない状況の中、苦笑いしながら語りました。

A医師は元々ぽっちゃり体型でしたが、体はみるみる内に細く小さくなっていきました。
声も絞り出すように発し、食事も口の中でまとめて飲み込むことに時間がかかり、かなりの労力であったと思います。

A医師は手術をしても放射線治療をしても、明らかによくない病状でした。
それでもなお、自分の職場である病院に足を運んでいました。
A医師は「言葉がうまく出ないから、手話覚えようかな」なんて手話の本まで購入していました。
どこからそんな意欲が湧くのでしょう・・・。

A医師の職場である病院では、自分の担当する患者さんに今後担当医師が変更になること、今後の気になる治療方針など、患者さんが不安を軽減できるように紙に書きながら説明していました。

A医師は癌手術後の聞き取りずらい自分の言葉では、患者さんが理解できないと思ったのでしょう。
A医師は決して綺麗な字とは言えませんでしたが、紙に書き丁寧に時間をかけてお話ししていました。

A医師の代わりとなる医師にも、しっかり申し送りを済ませていました。

A医師は患者さんの前に立つことはもうないと、判断し決断したのです。

私の胸が痛くて苦しくて、何も言葉にできませんでした。
でも、しばらくは完全に退職することなく自分のできることを探して書類のチェックなどをしていました。

なんでそこまで患者さんのために・・・自分の命を本当に無駄にすることなく医師として戦い走り切ろうとする姿は尊敬と、こんな素晴らしい医師がなぜ・・・という想いで悔しさが止むことはありませんでした。

結局、癌の猛威はどこまでも止むことがありませんでした。
A医師も流石に1人で外に出ることが困難になり、家で療養することになりました。

その時が来るまで・・・。

(この続きは、尊敬するA医師に感謝#3でお話ししていきますね)


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