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私はこの春...

私はこの春、社会人になる。

先輩たちのように、3月はヨーロッパに卒業旅行に行きたかったし、みんなで袴を着て卒業式に出たかったし、そして何より、サークルの仲間と卒業公演を打ちたかった。

しかし、そんな風に思い描いた夢も虚しく、卒論に追われている間には二度目の緊急事態宣言が発令されていた。私が半生を捧げてきた演劇は、もう二度とできないのかな、そう思うとやるせなかった。絶望の中、なんとか卒論を提出し終えた私に声をかけてくれたのは、半年先に卒業していたサークルの先輩だった。なんとメッセージではなく、いきなり電話がかかってきた。

3月に公演を打ちたいと思っている。既存脚本、いつものような小劇場は借りられない、お客さんも入れられないので上演は配信で、座組みの人数規模も通常公演よりは格段に小さく。それでも良ければ、役者をやってみないか。

私はやりたいと伝えた。即答だった。幸いなことに同期の食いつきもよく、その日のうちに実現の方向へと話が進んでいった。電話を終えた後は、久しぶりに世界に色が戻ったような気がして、興奮して全然眠れなかった(運動不足すぎたのもあると思う、その後始まった基礎練習で久しぶりに体を動かしたらマジでヤバかった。)

役者ができる!演劇を創れる!


これを書いている今は、絶賛稽古が始まっている。

昔のようにみんなで集まって稽古はできないし、家で稽古をするので場所は狭いし家族にはうるさいと怒られる。そして一番個人的にストレスを感じるのは、常に座組み内にクラスターが起こるリスクへの恐怖と隣り合わせであること。


それでも幸せだった。私は恵まれていると思った。だって私には、身体は遠く離れていても、こうして同じところを目指して創作活動をしてくれる仲間がいるから。


2年ぶりに役者をやる。もしかしたらこれが人生最後の演劇になるかもしれない、そう思いながら。制限は沢山ある。でも、演劇には人々に勇気を与える力がある。大袈裟でなく、そう信じて10年間やってきた。そう信じて今回もやってやる。


私はこの春、演劇を打つ。

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