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一年中いつでもスタンプラリー的遊びができる町

岐阜県不破郡関ヶ原町。なんとカッコイイ住所だろう。

”年賀状に筆文字で書きたい全国住所ランキング”のベスト10に入りそうなくらいカッコイイ。

私はこの町を過去に3度訪れている。だから、この町の良さをすぐに3つ挙げることができる。

第一に、人がいない。他の観光客にあまり会ったことがない。それどころか、地元の人も見かけない。不安になるくらい空いている。素敵。

第二に、何もない。見渡す限り、畑や田んぼ、そして野原。高い建物は皆無。だから空がとても広い。これまた素敵。

第三に、なんとここでは365日、スタンプラリー的な遊びができる。人がいない何もない場所で、スタンプラリー。なんと心が踊ることだろう。

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私が最初にこの町に行ったのは、気まぐれな思いつきだった。

史跡めぐりが大好きな私と娘は、史跡の宝庫である岐阜県と滋賀県を旅することにした。

2泊3日の旅の初日、欲張った私たちは一日のスケジュールをぎゅう詰めにして、次から次へと史跡を巡った。

そもそも史跡、特に城や城跡などは、攻め入られないように高い所に作られている。史跡めぐりとは、大体において山登りでもある。一日に何度も登ったり下りたり、登ったり下りたりしていたら、足腰が悲鳴を上げ始めた。

そして最後に行った安土城址でトドメを刺された。階段の一段一段があり得ないほどの段差なのだ。織田信長は家臣すら登城出来ないようにしたんじゃないかと疑うくらい、嫌がらせのような段差だった。

信長の洗礼を受けた私達の足腰は限界に達し、翌日はベッドから起き上がるのも精一杯だった。

しかし丸一日ベットの中で過ごすのは、あまりにもったいない。

二人とも史跡へは行きたいが、もう登り下りしたくない気持ちでいっぱいだったので、なるべく平らな場所を探してみることにした。

調べてみたら、あった。平らっぽいところが。

それは、天下分け目の戦が行われた古戦場。名前に「原」とついてるんだから、きっとだだっ広い野原に違いない。ここにしよう。

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関ヶ原駅に降りてみると、観光客が来ることはあまり想定していないような雰囲気に、少し不安になった。改札横の古戦場案内の看板も古くなっていて、落書きまでされている。

今では駅前に小洒落た土産物屋さんができているが、初めて訪れた当時は、小さなレンタサイクル屋さんがあるだけだった。

前日に負傷した足が、自転車なんか漕ぎたくないと訴えるので、とりあえずのんびり歩いてまわってみることにする。

メインの古戦場の方へ向かう道をいくと、ガードレール沿いに、合戦に参加した大名の幟旗が立っていて、それなりに気分が盛り上がってきた。

推しの幟旗を発見し、変なテンションになりながら歩いていたら、歴史資料館を発見したので入ってみる。

そこで手渡されたパンフレットが、私たちの心に火をつけた。

関ヶ原町内の史跡を巡るサイクリングマップで、主な武将が陣を張った場所がマーキングされていて、おすすめの周り方が書かれている。

これは・・・。 そう、まるでスタンプラリー!

一気に高まるワクワク感。

足腰が痛いのも忘れて、資料館でちゃっちゃとレンタサイクルを借り、いざ出陣。

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サイクリングマップの、ものすごくざっくりした地図に翻弄されながら各陣跡を探す。

これがまた、一筋縄ではいかない場所もあり、鎮守の森みたいな中にあったり、線路そばの目立たないところや学校の敷地、はたまた人の家の庭先みたいな所にあったりして、簡単に見つからない。

しかし、簡単に見つけられないのが宝探し的に楽しい。

今はGoogleマップを使えば簡単に回れるが、この楽しみがなくなってしまうので、そんな邪道なものに頼ってはいけない。あくまで簡易な紙のサイクリングマップを使い、ちょっと迷子になったりしながら楽しむのが、このスタンプラリー的史跡巡りの肝。

該当の場所には、その武将の幟旗が立っているので、それを見つけた時の達成感がいい。

ちなみに、陣跡を見つけてもスタンプは置いていないので、そっと心のスタンプを押す。

夢中になって探し回っていると、あっという間に資料館の閉館時間になってしまった。まだ、全部まわれていないというのに。

大好きな西軍ばかり巡って、後回しにした東軍の武将たちに申し訳ないので、急遽ホテルに延泊をお願いして、翌日も関ヶ原に出陣することにした。

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翌日は、張り切って資料館の開館時間と同時に入館して自転車を借り、またしても子供のように夢中になって陣跡や史跡を探し回った。

松尾山という小高い山に登らないと見られない陣跡もあったりするので、ちょっとした山登りも楽しめる。

石田三成が陣をおいた笹尾山には、まるで大河ドラマのナレーションのようなワクワクする解説音声が聴ける仕掛けもある。ワクワクしすぎて、3回もボタンを押して聴いてしまった。

全ての史跡を発見してミッションをクリアしても、特に記念品をもらえるわけではない。

それでも、全てまわってみたくなるスタンプラリーのような楽しい古戦場、関ヶ原。

今まで行ったどの史跡よりも、アミューズメント感が満載だった。




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