現役大学生と話してアドバイスはナンセンスだと再確認したこと
とある大学のコーチングの授業の一旦を担わせていただき、大学4年生さん数名を定期的にコーチングしている、彫金作家でコーチのぐっちです。
加えて、最近、定期的にセッションするようになった大学1年生と2年生がいる。37歳2児の母、急激に最近現役大学生とお話しする機会が増えた。
特に昨日は4人重なるというミラクルが起こって、ほとんど日中は大学生とお話ししていた。その学生さんから問われた一言が強烈に印象に残っているのでnoteしてみたい。
初セッションの初日。最初に導入セッションと言って、クライアントさんに結構ボリュームがあるアンケートとモチベーショングラフを書いてもらう。それを一緒に見ながら、どんなことを大切にしている人か、どんな価値観を持っているか、どんな未来を作りたいと思っているかを話す時間を2時間ほど設けている。と同時に、コーチングの説明をする。コーチングでできること、しないこと。私が考えるコーチングのおすすめな受け方の説明もする。
コーチングのおすすめな受け方として熱弁すること
ちょっと話が逸れるが、私は受け方を「キッチリ説明する」。なぜならば、コーチングの受け方って今までの学校教育で学んできたものと全く違うと思うから。
自分の今の気持ちにオープンになる
コーチが喜ぶ答えを探すことではなく、自分の心に忠実になってください。ゆっくり胸に手を当てて本当の自分の声を聴いてください
私たちは学生時代から相手の意図をよんで「整った答え」を「無駄な言葉を削ぎ落としてシンプルに端的に要約して」話すように訓練してきた。
受験に必須な現代文の回答は、「お前がどう思うかは聞いていない。出題者は何を求めていて何を答えて欲しいと思っているのか考えて回答を書け!」私は学生時代そう習った。今の現役学生の授業は知らないけれど、そんなに大差ない気がする。
社会に出ると、「お客様(クライアント)が本当に求めていることは何かを考えろ!お客様の気持ちになって考えろ!今求められている最良の答えを読み取れ!」と言われた。なんなら、そう言う上司の今日の機嫌を読んで、提案書の提出や相談を切り出すタイミングを見計らってきた。
人とのコミュニケーションはそういうものだと思っていたし、相手が望む答え、こういうと喜んでくれるんじゃないかな?と察して、自分の気持ちを整えて何かを伝えるよう訓練してきた気がする。
それらはとても価値あることだと思うし、否定するつもりはない。そうやって相手の気持ちを察したり慮ったりすることで生まれるコミュニケーションだってある。それは間違いない。
だけど、コーチングという、クライアント自身の本当の心の声を自分で知ることや、クライアント自身が描くなりたい姿や目指す方向性を見つけたり、本当になりたい自分ってなんだ?という問いの答えを見つける時間に、
目の前の人が喜ぶ答えを探してしゃべる
というのは全然いらない。そんな時間はもったいない。そんなことコーチは1mmも求めていない。
「あ〝ーーーーーーーーーーー・・・」
「えーーーーーーーーといやまてよ、うんとそうですね〜うーーーーん、なんというかこう、ぐちゃっとした感じ・・・そう、ぐちゃっとしたそんな気がするかな・・・」
日本語として全く成立していないけど、心の底から出てきたクライアント自身の声をそのまんま出す時間がコーチングの60分だと私は強く思っているので、この部分はついつい熱く語ってしまう。
え、アドバイスってしないんですか?意外・・・・
本題はここ。そう、コーチングってアドバイスをしない。
アドバイスってつまり、「上司や先輩、その道に精通している人など、目上の立場から助言すること、また、忠告や勧告」のこと。その道に精通している専門家が繰り出す助言をアドバイスという。
特に大学生から見ると、私たちコーチって「先生」みたいなものかもしれない。大学生さんは私のことを「坂口先生は...」と時々つい言ってしまう笑。都度都度、「先生はやめてよ〜せめて坂口さんにしてよ〜」というと、「あ、そうでした笑」と笑いながら呼び変えてくれるんだけど、それぐらい「何かその道に精通している専門家」っぽい。
もし人生という答えなき道の専門家なんてもんがいるならば、
この先どうしたらいいですか?
どういう道に進めばいいと思いますか?
という質問に対して、
「はい。それはですね、私の経験から踏まえると〇〇がいいでしょう」
と答えるのかもしれない。
でも、そもそもその人の家庭環境や背景、時代もやりたいことも価値観も違う人に対して、他人が「こう生きたらいい」なんていうことって果たして役に立つんだろうか。多少は参考になると思うし、私だって誰かにすがってこうしたらいいよって言われたいことなんて山ほどある。占いに頼って右か左か教えてよー!って思うことはしょっちゅうある。
そういう思いを踏まえた上で、あえて言う。
特にコーチングにおけるコーチの関わりは、クライアント自身が「既に答えを持っているし実は知っている」「その答えを自分で見つけられるように見守る」ことをすることだ。
だから、「あなたはこうすると上手くいくと思うよ」とか「これが足りないから、これをやると解決すると思うよ」ということは言わないし、”あなたのこと専門家”ではない私のアドバイスのような押し付けは無益だと、めちゃくちゃ思う。
そんな話を大学生にしたら、たいそう驚かれた。
「てっきり、何かアドバイスされるものだと思っていました。でもそうはっきりアドバイスをコーチングでしない理由を聞くと、その方が素直に聴けるし話せる気がします」
と彼女は言っていた。
コロナ禍の大学生は私の経験と全く違う
そこから彼女の話を更に聴く。大学の話や将来の話など・・・。すると、より私の経験や知識が全く役立たずで、遠い昔のものだったことを再確認した。
コロナ禍の今、リアルに教室でクラスメイトと会うことはできない。念願の大学に入学して約2ヶ月。キャンパスに行ったことは2回しかない。あとは全員顔出しを控えて画面OFFにしている真っ暗画面のZOOMで、一人画面ONの教授の講義を家で受ける。どんなだらしない格好でも、眠っていても見つからないらしい。でも案外みんな真面目に授業を受けている・・・らしい。お互い画面OFFだけど。
地方から一人で入学した子は、大学の友人はまだいない。入学したら入ろうと思っていた演劇サークルは活動休止状態なので、当然入会はできないしそもそもオリエンテーションみたいなことはやっていない。大学生バイトの定番、居酒屋は営業していないからバイトも探しにくい。一日中、家の中で授業を受けて、部屋着で1日が終わることもザラらしい。
ユースホステルを使って旅をするサークルに入って、未成年の飲酒がこれほど怒られなかった約20年前。新歓コンパで飲みすぎて終電逃して、とぼとぼ歩いて帰ったり、今年から部室での喫煙もNGになったんだよね・・・みたいな先輩のぼやきをへーと聞いて、大学祭準備で学校に泊まりこんで、朝日をちょっと憧れの先輩と見てポッとしたり、出席カードをちょっと集めたり、テスト前に優秀な友達のノートを学食の白身フライと交換したような無茶苦茶な大学生活を送った私に、彼女たちの今になんと「アドバイス」をすることができるだろう。
大学を卒業して15年近く。「キャンパスライフ」を思いっきり満喫して楽しかった大学生を過ごして、求人が上向きで景気がちょっと回復傾向にあった時代に就活した私が、彼らにとってどこが「その道に精通している人、目上の立場の人」なんだろうか。いやいやなんも現状知らないおばさんだかもしれない。もう私の昔の経験なんて古すぎる。なんの役にも立たないんだ・・・とコロナ禍の学生の話を聞いて痛感した。
過去の経験や成功体験からアドバイスはもうできない
緩やかに少しずつ変化していたついこの間までだったら、ちょっと多くの成功と失敗を経験をしているからこその「アドバイス」もできたかもしれない。でも、こんなに180度常識が変わった今、自分のホントの願いを自分で見つけて、進む方向は自分で見つけないと、誰かからのアドバイスなんて、ちっとも役に立たないよね。ということを、今から社会に旅立とうとしている現役の彼らの話を立て続けに聞いて、痛感した。
だから私はコーチは、自分の経験や知識を元に「あなたはこうしたらいいと思うよ」というアドバイスはしない。
じゃあ意見がないかというとそうでもない。「私はこう思うかな?でもそれをどう受け取るかはあなた次第だけどさ、どう?それ聞いてどんなことを思う?」と意見を交えて問うことはある。
今だからできるコーチングの役割
自分だけの答えを、自分で見つける過程を見守って、思考や感覚がとっちらからないように時々整えて交通整理をして、時に突拍子もないネタをぶっ込んで突飛な発想を混ぜ込んで、一人じゃ見つけられなかった何かを一緒に探すのがコーチングの役割でできることかなと思う。
「こうしたらいいよ」というアドバイスをしないのはこういう理由だ。
若者の適応力、半端ないぜ!尊敬だぜ!
リアルな大学生の話を聞いてあまりの変化に衝撃を受けた私は、「そっか・・・予想してなかったね、こんなキャンパスライフ・・・」と思わず言ってしまったら、
「あ、でもだいぶ慣れましたね。もう1年以上こんな感じなんで!」
「なんとかなりますよね、もうすぐワクチン打てると思うんで。そしたらそっから何をするかですよね。」
「今は飛び立つ前にぐっと沈んでる時期だと思うですよね。だからこそ今、何をするかを考えないといけないって思うんです」
だってさ。軽くサラッと笑った彼女は、めちゃくちゃ格好良かった。すごいな適応力。半端ないなその思考!
そんな彼・彼女たちが自分で見つける新しい進む方向は、私の常識をぶっこわした初めて見る新しいものな気がしてならないので、次のセッションが楽しみでならない。
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