日本産漫画・アニメはハリウッドで花咲くか-①
脳裏に過る黒歴史『ドラゴンボール』
あれはもうかめはめ波を撃ちたかっただけなんだよ。そっとしとこう。
それはさておき、「ハリウッド」と限定的に書いたけど、日本の漫画やアニメが海外で実写化されると聞くと
大丈夫かな…?って身構えちゃいません?
でも、『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』の評判は悪くなかったし、Netflixの実写版『ONE PIECE』への期待も熱い。
もしかしたら、少しずつ状況が変わってきているのかもしれない。
というわけで、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の公開も迫っている流れに乗って、日本の漫画・アニメの実写化事情の変化や今後の展望について2回に渡って好き勝手に語っていきます!
国内ですら不安がよぎる日本の漫画・アニメの実写化
ここでぱっと思いつく、酷かった実写化はありますか?
私は断然『ルパン三世』
長年のルパクラ(ルパン三世のファンの呼称)として受け入れがたい。『ひぐらしのなく頃に』も酷かった…。
でも、私は観てないけど、『るろうに剣心(るろ剣)』、『銀魂』あたりは評判いいよね?最近はマシになったのか?
と思いきや、『幽☆遊☆白書(幽白)』や『ゴールデンカムイ』なんて実写化の話が出ただけで批判が噴出している。
そもそも、原作漫画がある場合、漫画→アニメ化ですら時として批判の的となる。
『鬼滅の刃』『SPY×FAMILY』のようにアニメの成功によって、原作人気に拍車がかかるケースがある一方で、『約束のネバーランド(約ネバ)』2期(ファンの間では2期は存在しないことになっているレベル)や『マギ』は、予測検索で「酷い」が出てくるほど。
では、受け入れられるアニメ化・実写化(以下、メディア化)に共通していることってなんだろう…。
私は原作リスペクトがキーだと思う。
前述のシティー・ハンターはラショー監督が日本版の大ファン、るろ剣・銀魂も原作リスペクトが高いと聞く。
他方、実写版『ドラゴンボール』はドラゴンボールってなんだっけ?レベルに改編されてるし、約ネバの2期なんてとても重要なキャラの存在を消してしまっている。
つまり、原作が大切にしている核たるものがメディア化に伴って欠落してしまっていると世の中に受け入れてもらえない作品になってしまうのではないだろうか。
原作者・原作を大切にする日本の漫画・アニメ産業
日本には原作者を大切にする文化があると『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』の著者・板越ジョージは説明する。
え?他の国って原作者を大切にしないの?
板越さんの同書によれば、日本に比べると海外は原作者の影が薄く、作品に関わる権利が企業と強く結びついているよう。
『ドラゴンボール』の原作者は?と聞かれれば、鳥山明と答えられるけど、ハローキティ・リラックマの原作者は?と聞かれるとちょっと答えに窮するのにイメージは近い。
(ハロー・キティはサンリオ、リラックマはサンエックスって企業名なら出せる。)
原作者を大切にする文化があるからこそ、原作リスペクトの作品に高評価がつくのではないだろうか。
しかしながら、原作者を大切にする文化がメディア化のハードルを上げてしまっている。その点について、板越さんの著書を基に説明していきたい。
宝石の原石はあるのになかなか磨けない日本のポップカルチャー
日本とアメリカでは作品の著作権の仕組みがだいぶ違う。例えば、アイアンマンの著作権は一企業が管理しているが、『ONE PIECE』の著作権は作者の尾田栄一郎の他、集英社や東映アニメーションも権利を持っている。
(『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』発行当時の話だから今は違う可能性もあります。)
その作品で何かをしたい!となったときに一つの許可取るのと、三つの許可取るのどちらが大変かと言ったら、一目瞭然。このような権利関係の現状が日本産漫画・アニメのハリウッド進出を妨げている。
たしかに最近の実写化の傾向をみると、漫画やアニメ原作ではなく、『ピクセル』、『名探偵ピカチュウ』『ソニック・ザ・ムービー』、そしていよいよ公開の『マリオ』など作品に関わる権利が企業に結びついているゲーム関連のものが実写化されている。ハードル面で日本産作品のメディア化が難しい現状が如実に表れているように感じられる。
そしてこれらのもう1つの共通点は、原作はストーリー性よりキャラクター性が濃い点だと思う。
映画単体として作品化しやすいキャラクター
マリオやピカチュウを思い浮かべるとき、キャラクターの背景はあまり気にしないと思う。悟空やルフィなら「こんな過去があって、それによってこう変化して」など好きな作品であればあるほど、そのキャラクターが歩んできた道(ストーリー)に思い入れがある。そのため、映画化されてもそれまでのストーリーによって築き上げられたキャラクターがそこにいるかを私たちは重視してしまう。原作に長いストーリーがある作品ほど、それをきちんと落とし込んで映画単体として作品に仕上げるのが困難である。
一方でマリオやピカチュウは、なじみ深いキャラクターの姿がそこにあれば、映画単体でストーリーを楽しめる人が多いのではないだろうか。逆に言うと、大好きなキャラクターの姿が違えば、当然受け入れがたいと感じる人もいるはずだ。そう考えると『ソニック・ザ・ムービー』の初期デザインに不評の嵐が沸き起こったのにも納得がいく。
これまでの話をまとめると、権利関係が複雑で原作のストーリー性も重視される日本産漫画やアニメの海外実写化は『シティー・ハンター』などの一部の例外を除き、今後も困難な状況が続いていくと考えられる。一方で権利関係のハードルが低く、映画単体としてストーリーを構築しやすいゲームを原作とする日本のコンテンツなら、今後も海外で作品化され、良作が生まれることもあると期待できる。
タイトルの問題提起への答えは「日本産漫画・アニメはハリウッドでは花咲けない」となってしまうけど、別のフィールドでは少し明るい兆しも見えている。
VOD、つまりネット配信媒体での実写化である。この点について、次回「日本産漫画・アニメはハリウッドで花咲くか-②」で語っていきたい。
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