日記:夢をみた

祖父が亡くなった日の夢だった。
祖父は日曜日の朝、2時ころに亡くなった。
朝5時か6時くらいには、宮城に住んでいた従兄弟と一緒に地元まで高速を使い、車で帰った。
何時間かかけ、祖父の家に着くとすでに死化粧をした祖父が仏間に寝ていた。
初めて亡くなった人を見た僕は本当に寝ているようだと思った。
しかし、手を、顔を、触ると冷たく、現実ではもう祖父がこの世にいないことを感じるには十分な温度差だった。
その時初めて泣いた。というより、涙が溢れた。

家族には適当な理由をつけ、宮城にまた戻ることにした。
何故だか無性に会いたいと思う人がいたからだ。
自分の心の中にある本音を押し隠し、嘘をつき続けた僕にはいつしか本当の気持ちがどこにあるのかわからなくなっていたが、祖父の死をキッカケに本当の気持ちを曝け出したかったのかもしれない。

ただ、20年近く嘘をつくことに慣れた僕は、相手に本音を伝えるのが怖かった。
それでもあの日は勇気を出し、メッセージを送った。

『いま、電話してもいい?』

直接的な表現はできなかった。
あの時の僕にできた精一杯のメッセージ。
声が聴きたい。会いたい。
そんな想いを込めた精一杯のメッセージ。

こちらの事情もしらないあの子からしたらいきなりこんなメッセージがきて、びっくりしただろう。
夕方になる前に送ったメッセージは既読もつかず、放置された。

変なメッセージを送ったせいだ。
そんな考えが頭の中をめぐり、そもそも僕があの子に会いたいとか思うことがおかしいんだ。
祖父との別れからくる悲しみなのか、まともに女の子へアプローチができない情けなさなのかわからないがひとり高速道路のパーキングエリアで泣いた。

パーキングエリアに何時間いたのだろう。
何時間泣いていたのだろう。
夕日が沈み、夜になろうとしたとき返信があった。
『会社の先輩とバレーを観に行ってた』

何を観に行ってたのかとか、誰とだったかは記憶が曖昧かもしれない。
なんて返信したかも覚えていない。

僕の本当の目的は果たせなかった。
本当はあの時、1秒でも声が聴きたかった。顔が見たかった。

たった一度のすれ違い。
祖父との別れが、そう思わせたのかあの子とも永遠の別れになる気がした。
あの日を境に、あの子に会いたいと思うことがなくなった。

あの気持ちがなんだったのか。
今はもう確かめようがない。
あの時僕がもっとわかりやすいメッセージを送れたら、あの時あの子が少しでも違うタイミングや返信をくれたら。
そう思う後悔が今日夢になったのかもしれない。


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