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意外とできない「これって研究?」を判断するときに注目すべきはココ!

前回のnoteは、多くの専門家がつい、説明なく使ってしまっている「論文」というものがどういうものなのか、中身というよりもその存在意義や位置づけみたいなものを説明しました。

論文がどういうものか、その価値を認識できて初めて、「論文になっている情報は信頼度が高い」という説明の意味が本当に理解できてきたかな、と思います。「スキ」リアクションもいただきありがとうございます。

こういった基本的な用語の解説って必要だな、と感じました。ということで、基本用語の解説をもう少し続けていこうと思います。今回は「『研究』とは?」です。私はよく「信頼できる情報かどうかを見きわめるために、それが研究結果に基づいているか確認しましょう」などと言っています。このときの「研究」とはどういうものを言っているのか、改めて説明します。


●辞書や書籍での説明は?

前回の論文のときと同様、一般の人が思い浮かべる「研究」の意味ってどういうものなのかなと思い、広辞苑(第6版)を無料検索できるサイトで「研究」の語を調べてみました。結果は「よく調べ考えて真理をきわめること」と説明されていました。「研究」を広い意味で捉えるときにはこの説明でよいように感じます。でもこれだと、何かわからないことを調べて疑問が解決するという行動をとったときには、常に研究と言ってもよさそうです。「夏休みの自由研究」なども「研究」になるわけですよね。範囲がかなり広いですね。

●研究者が言う「研究」とは?

一方で、研究の世界にいる研究者が自分たちの仕事である「研究」を説明するときには、もっと狭い意味で「研究」を捉えています。

では、研究者が言う研究とは何か?というと「『論文化をすることを目的にして』よく調べ考えて真理をきわめていく活動」という認識だと思うんですよね。つまり結果を「論文化してあるか」(または「今後論文化するつもりがあるか」)どうかで、研究か、研究でないかを線引きできる、ということです。論文化するために行っている実験や調べものは「研究」であり、論文化の予定はなく行っている実験や調べものは、「研究」ではなく、単なる実験と調べもの、という具合です。ここでいう「論文」というのは、前回のnoteで説明したように、ある研究テーマについて得られた成果を論理的に説明している、専門の雑誌に発表されている文章のことです。何らかの新規性を含んでいて、査読という専門家同士の客観的な評価を経て発表されており、研究者の業績として認められているものです。

日本の研究者の活動を支援するための諸事業を行っている日本学術振興会から出されている文書の中にも「科学者は研究成果を論文などで公表することで、各自が果たした役割に応じて功績の認知を得ます」といった文言があり(文献1)、研究者(ここでは科学者と表記)には論文を公表することが期待されていることが伺えます。

●「研究をする」=「論文を書く」

研究の世界で「研究者」と名乗るには「論文を書いているか、いないか」で判断するような雰囲気があります。私が研究者として活動し始めたころに、指導してくださっていた先生から「研究者であれば最低1年に1報国際誌に論文を受理させることはノルマだと思う」と言われたことは、以前こちらのnote記事で紹介しました。

そういうわけで、研究の世界では「研究をする」=「論文を書く」という式が成り立っている、と言っても言い過ぎではないと思います。今の私は論文を書くような活動を中心にはしていないので、「研究者」とは名乗らないように注意しています。せいぜい、「栄養疫学の専門家」とか「栄養学者(栄養疫学者)」どまりかな、と思ってます。

●これって研究?

となると、どういうものが「研究」にあたるのか、逆にどれが「研究ではないもの」になるのか、だんだんわかってきたところでしょうか。こういうものは専門家が認める「研究」には当らないということで挙げてみたいと思います。 

・体験談や口コミ

試してみて効果があったというのは、その人にとっては自分で試した研究結果と捉えているかもしれません。けれども、他の人に効果があることはまったく保証していません。もちろん論文になることはなく、こういったものは研究ではありません。
 

・テレビ番組などで行われている実験

実験しているので研究っぽいですが、論文化を目的としてはいないので、研究ではありません。その方法で正しく実験が行われているか、第三者の評価がなく、信頼度は低いです。

・卒業研究

大学で行われている卒業研究というものは、卒業論文としてまとめるのが目的です。その後、科学雑誌に原稿を投稿して受理されれば、論文化したものとなり研究になります。けれども卒業論文のままではまだ、雑誌に発表された論文ほどの評価はされていませんので、本物の研究にはなっていないと言えます。研究の練習という感じですね。

●研究か研究でないか、そこが重要だ

私は常々、食情報を見きわめる方法として、最初に「研究結果に基づいているかを確認しましょう」と伝えています。

 このときの「研究」というのは、今回説明した「論文化されている(またはされる予定の)、調べた結果」のことです。これまで、テレビでの実験や専門家が口頭で発表しただけの調査の結果を「研究」だと思っていた人は、今回のnoteで説明した「研究」の定義をしっかり頭に入れておいてくださいね。医療の世界では「ヒトで調べた研究結果の論文」のみが、科学的根拠つまりエビデンスとして使われています(文献2)。
 

●まとめ

今回は、意外と定義があいまいになっていたのではないかと思われる「研究ってなに?」に迫ってみました。研究者などの専門家が認識している研究とは、「論文化をすることを目的にして、よく調べ考えて真理をきわめていく活動」です。論文化されているか、が確認するポイントです。私や他の専門家が様々な発信の中で使う「研究」も、この意味であることをしっかり認識しておいてくださいね!

研究論文作成のために参考になる研究論文を読み勉強することは
研究者にとってはりっぱな「研究」活動


【参考文献】
1. 日本学術振興会.【テキスト版】科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-. 2015.
2. Jenicek M. J Epidemiol 1997; 7:187-97



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