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【完結】ハンセン病療養者の短詩を読む

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『訴歌 あなたはきっと橋を渡って来てくれる』阿部正子・編(皓星社) という本から、 ハンセン病療養者の短歌・俳句・川柳を評付きで紹介します。
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記事一覧

ハンセン病療養者の短詩を読む はじめに

私の手元にある書籍、『訴歌 あなたはきっと橋を渡って来てくれる』の装丁には、変わった点が…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ①視力の喪失 ―夢は見えるから―

清めたる義眼瞼に冷たけれ盲ひて会いしこの季節感 山岡響 洗った義眼が、まぶたに冷たい。そ…

中本速
1年前

ハンセン病療養者の短詩を読む ②手足の麻痺 ―受くる指なし口づけのむ―

ハンセン病は、手足の麻痺をもたらした。また、手足の変形として症状が現れる場合もあり、しば…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ③死との接近 ―葬儀の列は短かかりけり―

ハンセン病の療養者は、常に死と隣り合わせであった。それは自らの病状でもあり、同じく療養所…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ④ハンセン病という背景を感じさせない種類の作品 ―…

ハンセン病の患者が作った作品には、病気が反映されている。読む側も、連続してそれらを読むと…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑤望郷と断念 ―天気予報を聞いて病む―

ハンセン病にかかった者は法律による「強制隔離」の対象となり、社会的には「無癩県運動」が行…

中本速
1年前

ハンセン病療養者の短詩を読む ⑥肉親への思い ―訪いゆく時はなけれども―

ハンセン病患者たちは、肉親の元を離れて、あるいは強制的に離れさせられて、療養所に暮らした。 そのあとの肉親との関係は、必ずしも良い関係とは限らなかった。 患者の肉親であることで、世間の差別を受けたからだ。 患者の側も親族の状況を察するが、察しても思いが消えるものではなかった。 逢ひに来し母と蛙の闇に泣く 片山爽水 母とともに泣く。親子の絆であるが、苦しい絆だ。蛙の闇は、蛙の声のひびく闇だ。たくさんの蛙の声に囲まれて、一組の親子が泣いている。 父もあり母もある子が癩院に

ハンセン病療養者の短詩を読む ⑦夫婦の交流 ―息がこもれる火吹竹―

ハンセン病療養者には、夫・妻のことを語る短歌が多い。限られた人間関係を尊く思っている様子…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑧子供に関する苦悩 ―母乳を夜半に妻しぼり捨つ―

ハンセン病患者は、感染の拡大をおそれて断種・中絶を強いられる場合が多かった。子供を持った…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑨少年少女の生活と心情 ―あたらしき友を迎へて―

ハンセン病療養者の短歌・俳句などの本『訴歌』には、少年少女の作品も収められている。 少年…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑩療養所生活の現実 ―療園の門慕わしく忌まわしく―

ハンセン病患者にとって療養所は確かに療養の場ではあったが、差別によって追いやられた場所で…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑪社会との断絶 ―大がかりで捜して欲しいかくれんぼ…

ハンセン病療養者の多くは、社会に嫌われて、見捨てられて、それでも社会とのつながりを求めて…

中本速
1年前
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ハンセン病療養者の短詩を読む ⑫差別にあらがう ―みづみづと朱き地の唐辛子―

最後に取り上げるのは、世の中の差別についての作品である。そのなかでも特に、なにか差別にあ…

中本速
1年前
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