ハンセン病療養者の短詩を読む ⑫差別にあらがう ―みづみづと朱き地の唐辛子―
最後に取り上げるのは、世の中の差別についての作品である。そのなかでも特に、なにか差別にあらがうことにかかわるような作品を紹介する。
架橋祝ぎて揚ぐる花火のとどろきにわれの裡なる過去砕けゆく 金沢真吾
ハンセン病の療養所は島に作られる場合があった。海による断絶は、社会と患者を切り離し、社会の側はそれで安心したのであろう。その島にようやく橋がかかる。橋は、建造物であってそれにとどまらない。祝いの花火の音に、作者の過去は「砕けゆく」。架橋の感動は、嬉しいとか悲しいとかまだ不安だ