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【心の詩歌】結婚すると歌の心がわかるよと言われたら(その1)

穂村弘の文章に、歌人の特徴を書いたものがあります。「生命と自我の肯定」があると穂村は書きます。たとえばこんな感じです。

いつだったか、或る女性歌人との対談の途中で、目にゴミが入ってしまってしぱしぱしていたら、相手の方が、あらあらたいへんと云いながら、鞄から目薬を出してしてくれそうになった。有り難かったが、申し訳ないので、目薬だけお借りした。
 男性歌人の場合も、初対面なのに、まだ結婚しないの? などと気さくに話しかけてくれる。結婚すれば本当の歌の心がわかるよ、とか。なんだか、親戚のおじさんと話しているようだ。

穂村弘『本当はちがうんだ日記』

これらの親切さはある程度無遠慮な側面を持っています。
他人が目薬をさしてくれそうになったら、怖いです。
「まだ結婚しないの?」は、時代にもよるのでしょうが、無神経な親しさにも思えます。

しかし私がこの文章で取り上げたいのは、歌人の無遠慮さそのものではありません。
何が気にかかるか。
「結婚すれば本当の歌の心がわかるよ」というのが、本当だったらどうすればいいでしょうか?

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