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テレビがない暮らしの一コマ

我が家にはテレビがない。

親や知人に話すとたまに驚かれることもあるけれど、テレビがなくて困ったことは今のところ特にない。ニュースは新聞や携帯のアプリで見ているし、観たい映画やアニメも動画配信サービスの契約で十分。

そんな我が家だけれども、年に一度できればリアルタイムで見たい番組がある。

「近所のお寿司屋さんに当日行っていいか聞いてみる?」

こう切り出したのは夫だった。田舎には珍しく、うちから徒歩で行ける場所にお寿司屋さんがあるのだ。イベントごとや記念日で使わせてもらうことが多く、自分たちは常連客と言えるのかもしれない。そしてこのお店にはなんと大きいテレビが設置されている。

「もちろんいいですよ!」

お寿司屋さんのご主人に遠慮がちに相談すると、快いお返事を頂くことが出来た。

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いざ番組放送の当日がやって来ると、近所へ行くだけなのに旅行前のうきうきした気持ちになっていた。お店に行くと、テレビが見やすい席をばっちり用意してくれていて、ご主人の優しさが感じられた。

番組放送中は、もちろんお寿司や一品料理を頂いた。築地や横浜で修行し、この道一本でやってきたご主人のお寿司はいつ食べても美味しい。料理を仕込みながら、たまにご主人も一緒に番組を見て盛り上がってくれて、あーだこーだと賑やかな会話が続いた。

テレビを持っていなくても、本当に見たい番組だけを取捨選択して、お店や誰かにお世話になることも出来るものだなあと思う。

結局、私たちが訪問した日は他のお客さんが来なくて(前日が混雑したそう)、アットホームな雰囲気で終始時間が流れていった。ご主人の懐の広さがあってこそ成り立ったひと時だった。

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ちなみになんの番組をリアルタイムで見たかったかと言うと、M1グランプリだ(M1は日本全国の漫才師が頂点を目指す真剣勝負で、優勝すると企業タイアップなど案件が爆増するらしく、漫才師の人生を変えると言われている)。

もちろん後日ネット配信もされるけれど、リアルタイムだと審査員のコメントがノーカットで見られるメリットがある。審査員も元または現役漫才師だから、コメントが全部見られるのはこの上なく嬉しい。

今年の結果は「毒舌系漫才」が優勝した。

個人的には非常に良かったと思う。審査員も同じようなことを言っていたけれど、多くの人が心のどこかでふつふつと思っていることを小気味よく言葉にしてくれた感じ。

発言や発信など他人にひときわ気を遣う時代だからこそ、的を射ている「うざい!」は痛快なものがあった。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。