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父と歩く夜の海

先日の父の日に井村屋のあずきバーを贈った。昨今の騒ぎでなかなか実家に帰れないから、郵送のプレゼントで済ませた。

当日の午前中、大量のあずきバーと父の写真が母から送られてきた。

「届きました~!あずきバー!」

無事に届いて嬉しかった。

写真に写っている父は知らぬ間にあごひげを伸ばしていて、ハリーポッターのダンブルドアみたいになっていた。白くて長くて。ひげのことを指摘したら母は反対だと言っていた。

ちょうど夫もひげを伸ばしているタイミングで「結構似合うよね?」とるんるんしていて、男の人ってひげに愛着があるんだなと思った。

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いつも父に贈り物をするときはビールにしている。だけど今回はいつもと違ったものを贈りたい気分だったので、あずきバーにした。

あずきバーを見ると父を思い出す。

実家に住んでいる時、私は父とよく夜の散歩に出かけた。

「今日は山にする?海にする?」

夜の散歩のコースは山と海があって、日によって、まちまちだった。なんとなく気分で決めるけど、海の方が多かった印象。夜の海は真っ暗で幻想的。私と父以外誰も歩いていない日も多かった。

海の音だけが耳元に優しく入ってきて、しばらく座ってぼーっとした。いい時間。

「そろそろ帰るか」

お互いに口数は少ないけれど、私は散歩の時間を楽しんだ。父もきっと。散歩終わりにはコンビニに寄ってアイスや飲み物を買って帰った。

その時よく一緒に食べたのが井村屋のあずきバーだったのだ。

食の趣味はそんなにあってる感じはしなかったけど、なぜかあずきバーだけは同じみたい。硬くて、あずきのしっとりした舌触りが癖になってとても美味しい。二人であずき色のアイスを口にして、玄関にたどり着く。

私が結婚してから家を離れ、もちろん夜の散歩は無くなった。父は今、夜の海を見ているだろうか?あずきバーを食べる時は一人なんだろうか?ちょっと寂しくなる。

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写真 2020-06-24 13 44 02

「今回のあずきバーは普通じゃなくて、ゴールドシリーズだよ」

あずきバーには北海道産あずきを使ったゴールドシリーズがあるらしく、ちょっと奮発してプレゼントはそっちにした。普通のシリーズに使われているあずきはブラジル産だそう。

移住生活も楽しいけれど、ふるさとは何歳になってもやっぱりふるさとで。あそこは自分を形づくった場所だと事あるごとに感じる。

今度あずきバーを食べる時は、父と母と夫と一緒に夜の海を見ていたい。その時はゴールドじゃなくて普通のシリーズでいいや。


そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。