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朝の静寂

「四連休は忙しかったねえ」

バタバタとしていた連休の最終日、ようやく一息つけるタイミングがあって、夫と感想を共有した。

民泊には2組のお客様が来て、2組ともカヌー体験をしてくれた。曇り空は絶好にカヌー日和で、連休中は毎日がそんな感じのお天気だった。湖のうえで舟に乗り、プカプカ浮きながらオールを漕いでもらう。

民泊やカヌー体験以外の時間は、畑と庭仕事に費やした。毎朝ヤギを放してお散歩させている時に「私たちの畑に入ってしまう問題」が最近の課題だったから、畑の周りを柵で囲うことにした。自宅の竹を切って埋めて、何とか作れた。

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やることが多くてバタバタとしている時も、朝だけはとても静かな時間だ。

まだお客さんもヤギも静かに寝ている時にこっそり起きて、庭を歩いてみる。そうすると、コオロギやスズムシが美しく鳴いている。声が間近で聞こえる。8月9月は虫たちが綺麗に合唱してくれて、とても耳触りが良い。

朝は特別な空気が漂っている。

あらゆる生き物たちがひっそりとして、活動を始めるタイミングを待っている。人もそうだ。日の出と同時くらいに起きると、まだ空はうっすらと明るい程度で、ゆっくり朝を感じたくなる。

朝や夜の時間帯は、不思議と異世界にいるような感覚になる。いつも生活している畑や庭でさえもそう感じる。なんとなく自然を貸切状態で堪能させてもらっている気分だ。宇宙人と交信するチャンスがあるなら、朝の時間帯を選ぶと思う(心的通信状況が良さそう)。

そうやって朝の静寂を楽しんでいたら、偶然ヘビに遭遇してドキッとした。

ヘビも驚いたと思う。うちには何種類かヘビがいて(もちろん野生)、その日ばったり遭遇してしまったのはカラダ全体が灰色の子だった。あっという間に横歩きで竹やぶへ消えていったから、しっかり観察することはできなかった。

今この季節にしかいない虫たちの鳴き声を耳にしなくなると、冬がやってくる。そう考えると寂しい。賑やかな虫は寂しがり屋の気持ちを和らげてくれる。

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「ねえねえ、ヤギさんって何本毛が生えているの?千本くらい?」

朝の静けさが終わった頃、宿泊客の子供がヤギ小屋へやってきて聞いてきた。

「うーん、毛の数?どれくらいだろうねえ」

少なくとも千本よりはあるだろうなあと思いつつ、正確な数字が分からないのではぐらかしておいた。子供はいろいろなことに対して素朴な疑問を持つなあ。ヤギの毛の数なんて興味を持ったこともなかった。

こうして徐々に朝に感じた静寂は消えていき、いつもの一日が始まるのだ。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。