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遠くても行きたい場所

遠くてもどこに行きたいかというと、それは「歯医者」である。

最近知ったことだけど、口内環境は全身の健康状態に影響するそう。特に虫歯や歯周病は要注意で、動脈硬化、糖尿病、肺炎など、意外なところで症状が出るのだとか。インフルエンザや風邪なども、虫歯があるだけで重症化する確率が上がるらしい。

最低でも半年に一度は定期的に検査をして、虫歯はないか?歯石(歯医者で取るしかない汚れ)はないか?を確認する必要があることを知った。

湖と畑と田んぼの景色がデフォルトの田舎で暮らしていると、買い物ついでに歯科医院を見かけたからたまには寄ってみようかしら?なんて偶然は生まれない。わざわざ自分から「歯医者へ行く」という用事を作らないと、まず行くことはないだろう。

今なら分かる。面倒でも歯医者さんは定期的に通った方がいい。たとえ住まいが田舎で、病院が遠かったとしても……!

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思えばここ数年、いろいろな場所を転々として、定住とはかけ離れた生活をしていた。約2年前、湖畔に家を買って、ようやく定住っぽさが出てきた。それでもまだ自覚がない。

そんな事情もあって、まさか自分にかかりつけの歯医者さんがいるはずもなかった。

「なんか下の奥歯が変な感じする」

何を食べたか忘れてしまったけれど、とにかく酸っぱいものを食べて歯がしみて、「なんか変だ」ということに気が付いた。

田んぼの間を通り抜けながらドライブすること15分。女医さんが院長の病院だった。

先生は私の歯を見るなり、歯と全身疾患の繋がりについてとくとくと説いてくれた。ああこの先生が同じ町にいてくれてよかったと感じた。良い先生に巡り合えることも重要だ。

それからというもの、約3カ月間その医者に通ったのだった。

なんと自覚していなかっただけで、大小含めて6か所の虫歯があった(お恥ずかしい……)。丁寧にハミガキをしているつもりだったし、自分の歯は綺麗だと思っていた。とんだ勘違い野郎だった。

歯の治療はとても痛かった。

ツゥゥゥンと神経に触れるような痛みで、キンキンした。いつも治療の時はこぶしを握っていた。もう体験したくない。でも我慢した。そうこうしているうちにすべての虫歯を治してもらった。

ついでに歯の汚れを落としてもらったり、歯ぎしり用のマウスピースも作ってもらった(先生的には虫歯よりこっちの方が気になったそう)。

普段はあまり考えない歯のこと。いつの間にか歯医者さんは遠くても行きたい場所になっていた。

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せっかく作ってもらったマウスピースを毎晩装着しながら眠っている。

マウスピースの洗浄には、入れ歯と同じ洗浄液とブラシを使うそう。薬局で初めて入れ歯コーナーへ向かう。

ちょっとだけ入れ歯を使う人の気持ちや、維持にかかるお値段を知ることで、視野が広まったような気がした。視野が広まると優しくなれる。それだけでもマウスピースを作ってもらってよかったかな。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。