見出し画像

いちご狩りの夜に

一日を楽しく過ごせたか、楽しく過ごせなかったかは、鏡の中の自分を見ればすぐに分かる。一日の中で自分の顔をよく見るのは、起床時とお風呂前。

特にお風呂前の自分の顔はとっても正直だ。

その時の顔がいきいきしていると、単純に嬉しい。反対に、眉間にシワが寄っていたり、表情筋を使えずにむくんだ顔を見ると悲しい。自分のことなのに、他人事のように「今日は楽しかったんだね」とか「今日は悪かったんだね」とか、そういうことを言いたくなる。

いつでもお風呂前の顔が幸せそうな生き方をしていたい。

***

1月になり、いちご狩りのシーズンが到来した。

ここから5月くらいまではいちご狩りが楽しめる。道路沿いの畑には「いちご狩り」と書かれた旗がポツポツと立つようになった。地域で配布される広告にもいちご狩りの情報が掲載され始めている。

せっかくだからということで、先日夫と二人でいちご狩りをしてきた。

ハウスの中はとてもあたたかく、寒さが厳しい今の季節にはとてもありがたかった(運営者側の燃料代は馬鹿にならないそうだけど)。太陽光が当たったいちごはあたたかかくて、それはそれで美味しく感じた。

口の中でいちごの果汁が弾ける。

何度も何度も口の中でいちごの甘さが弾けるものだから、それがクセになってしまって、まるでいちご中毒みたいになった。快楽を求め続ける自分を冷ややかに客観的に眺めながらも、次々といちごを摘み取っていく。最終的には大小合わせて50粒がお腹に収まる結果となった。

いちご狩りをしたのはよく訪問する町で、特別珍しさもないはずだった。それでも「いちご狩り」という非日常的なアクティビティを経験することによって、まるで遠くまで旅をしたような気持ちになった。

その日の夜。お風呂前に鏡をのぞくと、いい顔をした自分がいた。

よく考えればいちご狩りをしている最中、ずっとわくわくしていたし、夫とあーだこーだ言いながらいちごを摘み取っていた。あまり感じなかったけれど、笑顔が多い一日だったに違いない。

「一日の過ごし方でこんなに人の表情って変わるんだ」

分かっていそうで分かっていなかったことに気が付いた。お風呂前の鏡に写った自分がいつもいきいきしていられる生き方っていいな。そうなるにはいつも自分の胸がわくわくしていないといけないな。そんなことを考えた。

***

いちご狩りのなかで、いろいろな形のいちごに出会った。

特に驚いたのは、ボックス形のいちご。立方体みたいな不思議な形をしていた。こういうささやかな「わあっ」という感動も胸が躍るきっかけだ。

この記事が参加している募集

最近の学び

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。