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今日を懐かしむこと

何がある訳でもなく、落ち込む日がある。

これと言って大きな事件はないけれど、今やっていることや進めていることの何もかもが間違いだったのでは、と後悔の念が押し寄せてくる瞬間がある。月のめぐりなのか、太陽のめぐりなのか、自分ではコントロールできない感情に埋もれる。

こういう風に理由もなく陰っている時は、不思議と昔のことがよく思い出される。ふるさとのこと、昔の職場のこと、昔の旅先のこと。なぜだろう。

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昔のことは大抵「恐ろしく美化されて記憶されている」ように思う。それは、現実や今現在起きていることからの逃げでもあるようだ。

この性質を使って、今すぐ鬱蒼とした気分を晴らし幸せを感じられる方法がありそうな気がして、とりあえず試してみた。結果うまくいった。その話をしてみたい。題して「その不幸を今すぐ幸に変えるには」。

まずは好きな音楽(なるべく穏やかな曲がいいと思う。クラシックとか優しいインストとか)をイヤホンで聴く。その時何もしないで目をつぶる。音楽を聴きながら、数か月前~今日までの記憶を探る。楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、怒ったこと、全部。

すると、不思議なことに自分の人生史のはずなのに、少し俯瞰して見ていることに気が付く。たくさんの出来事や感情に揉まれて、なんて人間味のある時間だったんだろう、と思えてくる。自分とは関係のない小説のなかの主人公の人生を見ているみたい。

「音楽と思い出す時間」があるだけで、不幸が幸に変わる不思議な体験だった。

人は「思い出す」行為を経て幸せになる生き物なのかもしれない。たった数日前、昨日、今日の午前中のことでさえも、時間をかけて穏やかに思い出すだけで「ああ、人間だなあ。色々あって人生だなあ」と感じることができる。

そう考えたら、今手元にこびりつく不幸に見える物体も、手品のように幸へと生まれ変わる。

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懐かしむことは悪くはないと思う。でも懐かしんでばかりいても仕方がないと思う。私はわりと昔のことをすぐに忘れてしまう。今楽しい方が重要だから。それでも月のめぐりで昔を少し懐かしみかけることもある。

そんな時、懐かしむ期間を短くすることで、今の幸せを最大限にすることが出来るように思う。思い出すと何でも綺麗に見えちゃうものだから。

目の前の幸せを大切にするにはその日のうちに「今日を懐かしむ」ことだな、と気が付いた。9月は誕生月で、誰かからのお告げのような気がして書き記した。


そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。