試しに参加した注目のICOプロジェクトは残念ながら詐欺だったようだ

「ICOは8割が詐欺」

昨年、夏前頃の米国の規制を皮切りに新規のICOを規制するルール作りが先進諸国で一気に進んでいった。しかし、まだまだルールには抜け穴が多い。遂には"「ICOは8割が詐欺」 投資家が注意すべきこと"という随分と刺激的な記事が2018年4月末頃にForbesから出てしまっている。

Forbesの記事の元になっている発表を行ったのは、ニューヨークにあるICO(新規仮想通貨公開)およびデジタルアセットのアドバイザリー企業「Satis Group LLC」である。

同社によれば大型のICOプロジェクトのうち81%は詐欺という。本当に有望なプロジェクトは1.8%とのこと。

ICOにより時価総額が5000万ドル(約54億4200万円)以上に達したプロジェクトのうち、・81%は詐欺・6%は資金調達が完了する前に事業を中止・5%は資金を調達しても、仮想通貨の取引開始に至らなかった・4.4%は資金調達後、仮想通貨の取引を開始・ プロジェクトとして成功するのは1.9%・ 将来有望なプロジェクトは1.8%

つまり、95%以上はプロジェクトとして失敗である。

https://forbesjapan.com/articles/detail/20810

Top 10 ICO of 2018 

世の中にはどのようなICOプロジェクトがあるのだろうか。下記サイトは2018年のこれまでのICO調達額Top10を公表している。1位のTelegramの調達額$1.7B(1860億円程度)は異常な調達額であるが、10位のOlympus labでも$60M(65.6億円程度)と相当な調達額である。

さて、このTelegramという会社あまりに規模が大きいので調べてみた。ロイター通信の記事(関連記事参照)によれば、ロシアのメッセージアプリ運営会社らしい。

アクティブユーザは1.7億人、1日あたり700億件のメッセージがやりとりされているという。データ保管のクラウドサービスから日常の買い物の決済サービスまでをカバーするブロックチェーンとして育てるつもりだという。VISA CardやMaster Cardにかわる決済手段となる事が目標らしい。なるほど、他案件に比べて圧倒的に実態がある、故に期待値が大きいのだろう。

しかしながら、私は懐疑に見ている。第一に暗号化通貨は金額の変動が激しい。なので決済に使うには非常にリスクが高い。昨年末200万円を超えていたBitcoinの価格は現在100万円をきっている。基本的に主要な暗号化通貨の値動きはBitcoinに近い。1日で10%近く上下することなどしばしばある。あなたが資金を受け取った次の瞬間に10%落ちてる場合もありうるのである。

次に、第三者が暗号化通貨のProof of Work(取引承認)を実施するというのであれば現在話題になっている51%問題等、セキュリティのリスクを考慮する必要がある。しかし、Proof of Workをプライベートネットワーク上で自前で行うのであれば、それはそれで効率が非常に悪い。ブロックチェーン技術を利用する意味も薄れる。

第三に、ロシアの実施したICO規制である。ロシア連邦情報技術・通信省は全面禁止は控えると見られているもの、ICOはロシアルーブルの使用を不可欠にするなど政府がハンドリングしやすい方法をとっている。夏前に発表されると見られている正式な規制のいかんによっては大きく規制を受ける可能性がある。

https://bitrazzi.com/top-10-icos-of-2018-so-far/

Envionというプロジェクト

さてさて、私が参加したICOはTop5にランクインしている$100Mを集めたenvion(関連記事参照)というプロジェクトである。このプロジェクトは、暗号化通貨のマイニング作業を行うコンテナの開発である。再生可能エネルギーの発電所近くに設置し、電力を無駄なく効率的にマイニングするためのコンテナを提供し、利益を投資家へ還元することを目的としているプロジェクトである。

ICOの仕組みに興味があったので、試しに何か買ってみた。やはり買ってみなくてはよくわからないな、という軽い気持ちで参加したのである。年末年始にいくつものICO案件のWhite Paper(株式で言うところのIPO時の目論見書に該当するドキュメント)を読んだ中で、たまたま理解できる内容のプロジェクトがenvionだったのである。

私の心に響いた点は自然環境に配慮しており実現可能な技術を有している点である。あとはお金があれば作れる状態であり、大きく失敗もないものと思った。そもそも、暗号化通貨のマイニングは大量の電力を消費するため、石油や石炭などの化石燃料を燃やして作った電気を使うのは全く賛同できない。地球環境に優しい再生可能エネルギーを使ってやるべきと常々考えていた。

だが、結果としては残念ながら「史上初のアナログICOハック」事件に発展しまったようだ。

マイケル・ラッコウ氏率いる創業チームは、envionと同社CEOのマティアス・ウーストマンの株主に対して法的措置を講じている。ラッコウ氏と彼のチームは、ウーストマン氏が契約上の義務に違反してenvionの過半数の株式を不当に確保し、数ヶ月のコミュニケーション障害により会社機能が麻痺したと主張

概要はCEOのウーストマン氏が他の創業者たちに内密で第三者割当増資を行い会社を乗っ取ってしまったようだ。しかし、コンテナを製造するための知的財産権はラッコウ氏らが所有しているため、ウーストマン氏は投資者へ約束したコンテナの製造ができない状態になっていると言う。

資金を投じて損をした事よりも、これだけしっかりしていると思われた案件でもこのような事件になってしまう事に愕然としてしまった。やはり、そもそもの事前審査も必要だろうし、調達規模に応じた規制もなくてはならないだろう。$100M(110億円程度)ものお金が持ち逃げされました、で済ましてはならない。

http://www.the-blockchain.com/2018/05/22/envion-legal-battle-is-latest-swiss-crypto-bust-up/

最後にひとこと

勉強がてら買った程度なので大した痛手ではないものの、詐欺に引っかかったというのが実に後味が悪い。

と言うわけで、ICO関連の投資話にはくれぐれもお気をつけください。

関連記事

https://jp.reuters.com/article/column-ico-telegram-idJPKCN1HB13D

https://www.envion.org/en/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?