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夜のドライブ

友人が夜のドライブに連れて行ってくれた。
私は夜のドライブが好きだ。世界からエスケープし、どこか未知のところへ連れて行ってくれる気分。寝静まった街を静かに走っていく。
私の家は両親が車を持っていなかった。だから免許を取ってからは車がどれだけ素晴らしいものかを運転するたびに感じている。スバルのCMなんか好きだ。私も父の運転する姿を助手席から見て育ったなら、もう少し父がかっこよく見えたのだろうか。子供ができたらたくさんドライブに連れて行ってあげたいと思う。

Gステーキ

まずは夕飯のステーキを食べに行った。
岩出にある、ここら辺では有名なお店。売りは何といってもそのコスパ。
200gのステーキがたった1000円。そしてライス、スープ、サラダがおかわり自由。
程よい店舗サイズと基本セルフサービスというスタイルがこの価格を実現しているのだろう。

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券売機で発券し、従業員のお姉さんに渡してから5分ほどで出てくる。
熱々のプレートに乗っている、表面を油が飛ばないように紙で覆われた分厚い肉。ガッツリという感じで食欲をそそられる。
肉は全てレアで、富士山の溶岩でできているプレートに押し当てて好みで火の入り具合を調整する。

ナイフを入れると肉汁があふれてくる。肉はとても柔らかい。ソースやわさび、にんにくなど豊富な調味料がよりうまみを引き立たせる。こんなに安くていいのかというくらいのおいしさであった。
今回は定番であろうGステーキ200gを頼んだが、他の部位や種類、グラムもあるのでそれもまた食べに来たい。

小石高原

星を見に行きたいという私の要望で、岩出から車で一時間ほどの小石高原へ向かった。紀美野町にあり、一面のすすきで有名な場所であるが、シーズンが終わったためすでに刈り取られているようだった。途中かなり細い道もあり、昼間などはすれ違いもあって大変だろうなと思った。山の中を進むので、途中鹿三頭が目の前を歩いていた。友人は初めての体験だったようでとても興奮していた。

駐車場に着くと、私たち以外に3組ほど人がいた。夜の小石高原は穴場スポットだと思っていたが案外そんなこともないのかもしれない。

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3,2,1で顔を上げた。二人とも最初に出た言葉は同じだった。
「うわぁ…」ため息のような声であった。
都会で育ってきた私たちは目にすることのなかったほど明るく数の多い星々。軽く雲がかかり、まるで天の川のようだ。山際に見える三日月もおぼろげにかすんでいる。眼下にはきらめく夜景が広がっていた。遠く神戸のあたりの橙色まで見える。

地上の光の数だけ人の営みがある。夜空の星は一つ一つは小さい光だが、それが集まって大きな美しい景色になる。たくさんの小さく、しかし輝いている物語。空から見れば人一人の能力や才能なんて変わらない。自分を悲観することなく、個性を磨き強い輝きを放ち手を取り合っていくことが大事なんだということを気づかせてくれる。

しばらくの間、お互い無言で景色を見ていた。本当の無音の中で、冷たく透き通るような空気と柔らかい風の音。星空に抱かれているような感覚に浸っていた。これはきっとヴァーチャルでは代替できない、本物と呼ぶべきものなのだろう。こういうものに青年期までに触れておくことが、清い心を育てるのではないかと思う。都会に暮らす子供たちにも、こういった機会をたくさん与えてあげたい。

寒くなってきたので車に戻った。いつかまた大切な人を連れてここに来たい。ともに楽しい時間を共有し、喜びを分かち合いたい。これからの人生をそんな幸せな思い出で埋め尽くしたい。

夜中の奈良公園

小石高原を後にして助手席で寝ていた。起きたら奈良公園であった。日付をすでにまたいでいた。友人がなぜここに来たのかよくわからないが、夜中の奈良公園なんて二度と来ないだろうからまあいいかと思い車を降りて散歩に出た。

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鹿は起きていた。夜行性らしいので当たり前ではあるが、それではいったい彼らはいったいいつ寝ているのだろう。鹿苑などの方へ入っていないためたくさんは見れなかったが、出会った鹿たちは私たちに全く興味がなさそうだった。こんな時間に何の用だ、と警戒されるかと思っていたがよくあることなのだろう。友人は、鹿が本当に夜起きているということを確認できて興奮していた。

驚くべきことに、園内には私たち以外にも観光客と思われる人がちらほらいた。若いカップルが多かったように思える。私の友人も含め、いったいどんな理由で来ているのだろうか。ぜひ話を聞いてみたかったが、DQNが多そうなので近寄らないことにした。10人くらいの若い男女グループがいたが、彼らはとてもうるさく騒いでいた。神の使いである鹿を追いかけ、鹿に二―ブラした奴が勝ちという訳の分からないゲームをしていた。世界は広いなと思った。

旅の終わり

次に目を覚ますと家のすぐそばのガソリンスタンドだった。朝8時くらいだったので随分と寝ていたらしい。家まで送ってもらった。友人はドライブが好きで、今度は一緒に徳島へ行く。観光学部生は観光をするのが勉強、本当に楽しい学部だ。いろんな所へいってその土地の素晴らしいものに触れる。そして歴史や風土、町にとっての幸せのかたちに思いを馳せると同時に自分かの感性を磨き、そうして養ったものをいつか仕事を通じて社会に還元できればなと思う。




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