フィギュアスケート選手 【腰痛 NO.1】 の理由は 背中を反る(伸展)動作で痛みが蓄積する!

伸展型腰痛とは?

まず「伸展」とは何かを説明します。

伸展とは腰を反らす動作のことです。

つまり、伸展型腰痛とは、

「腰を反らすことによって出現する腰痛」

のことをいいます。分かってしまえば単純ですね。

また、一口に伸展型腰痛といっても多くの種類が存在し、種類により痛みの原因部位が違ってきます。

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そのいくつかある種類の伸展型腰痛の中でも、フィギュアスケート選手に多く見られる伸展型腰痛として、

椎間関節性腰痛

が挙げられます。

椎間関節性腰痛とは、「椎間関節」と呼ばれる部位を痛めることによって腰痛を生じるものです。

・椎間関節とは?

人間の背中には小さな骨が連なってできた柱状の「脊柱」と呼ばれる部位があります。

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脊柱は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨の4パートに分かれており、それぞれ7個、12個、5個、1個の椎骨と呼ばれる骨が積み重なって構成されています。

椎骨と椎骨の間には左右1つずつ関節があり、この関節を「椎間関節」と呼びます。

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人間はこの椎間関節がそれぞれ少しずつ動くことで身体を反らしたり、曲げたり、ねじったりすることができます。

椎間関節腰痛が起こる原因とは?

椎間関節腰痛とは腰椎にある椎間関節が痛むことにより生じる腰痛のことです。

椎間関節を痛める原因の1つとして「腰が強く反る」ことが挙げられます。

腰が過度に反るともちろん腰椎も過度に反るため、椎間関節に大きなストレスがかかることが分かっています。

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そのため、このストレスが反復して起こったり、一度に強い反るストレスがかかると椎間関節を痛め、腰痛を引き起こします。

これが椎間関節腰痛のメカニズムになります。

伸展型腰痛ではこの椎間関節が原因となっていることが非常に多いとされており、今回の記事における伸展型腰痛に関してもこの椎間関節腰痛を中心に説明します。

椎間関節性腰痛の症状

痛みの範囲

痛みの出る部位として①腰、②お尻、③太ももの外側、④太ももの裏側(お尻に近い部位)、この4つが痛みが出現する部位として多いです。

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どんな時に痛みが出るの?

伸展型腰痛は腰を強く反らす時や、反らす動きが反復された際に腰痛が生じやすいです。

そのため、フィギュアスケートでは、

長時間のスケーティングで腰痛が出てくる

ジャンプの踏切や着地の際に腰痛が出る

ビールマンスピンやレイバックスピンなど反るポーズを取ると腰痛が出る

このように長時間腰を反らす姿勢を取り続けた際や反らす動作を行った時に腰痛が生じやすいです。

伸展型腰痛になる原因

大きく下記の4点の身体的な要素が原因として挙げられます。

■胸周り(胸椎)の動きが硬くなり腰に負担がかかる
■股関節の動きが硬くなり腰に負担がかかる
■フットアライメントが崩れることにより腰に負担がかかる
■体幹や殿部の筋力や腹圧が弱くなることで腰が動きすぎて負担がかかる

専門用語なども入って分かりにくい部分もありますので、それぞれ説明します。

■胸周り(胸椎)の動きが硬くなり腰に負担がかかる

背骨には「頚椎」「胸椎」「腰椎」「仙骨」の4パートから構成されます。

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それぞれがバランス良く動くことによって体を大きく反ったり捻ったり、曲げたりすることができます。

この中でも「頚椎」「胸椎」「腰椎」の3パートがバランス良く動くことが腰痛予防に大切です。

腰痛がある人で多いパターンとして、脊柱の胸椎と呼ばれる部分の動きが悪くなり、その分を腰椎が代わりに動くことでカバーします。

こうなると腰椎が過度に動いてしまうため、腰に負担がかかり腰痛を引き起こします。

では、実際に腰痛がない人の体の反り方を見てみましょう。

胸椎伸展


頚椎、胸椎、腰椎それぞれがバランス良く動くことで一部分に負担がかかりにくい理想的な反り方になっています。

次に、腰痛がある人の体の反り方を見てみましょう。(図3)

胸椎伸展不十分

この場合、胸椎がほとんど動かず、その分を腰椎が代わりに行っています。
こうなると、腰椎が反りすぎて、腰に大きな負担がかかります。

この動かし方が癖になると腰に負担が溜まり、最終的に腰痛が出てきてしまいます。

また、フィギュアスケートでは”ビールマン”や”レイバック”などの体を反るポーズ、またはジャンプ時の踏み込みや着地時の瞬間的に腰が反りやすい場面などでこの現象が起きやすいです。

このような場面で「腰が痛む」という選手は、もしかしたら胸椎が硬くなり腰椎が反りすぎてしまっているかもしれません。

このように、

胸椎が動かない代わりに腰椎が動きすぎて腰に負担がかかる

このパターンが本当に多いです。

そのため、フィギュアスケート選手の腰痛において、

胸椎の動きは重要なポイント

この場合の腰痛改善には胸椎の柔軟性、つまり胸椎の動きを取り戻すことが大切になります。

胸椎が動かなくなる原因として、

① 胸椎自体が硬くなる
② 胸椎の動かし方が分からなくなる
③ 腰椎が柔らかくて動きすぎてしまう

これら3つの原因が挙げられます。

これらの原因で胸椎の動きが悪くなり腰に負担がかかることにより、腰痛が出現していることが多いです。

「もしかして自分の腰痛は伸展型腰痛かも?」と少しでも思った方がいれば、下記事内のPT checkでセルフチェックしてみて下さい。

もし、セルフチェックで問題があった場合、推奨するセルフコンディショニングをしてもらえると腰痛が改善する可能性があるかもしれません。

※セルフコンディショニングの記事のURL


■股関節の動きが硬くなり腰に負担がかかる

胸椎の時と同様に股関節の動きの硬さも腰痛の原因になります。

体を反る時は脊柱だけでなく、股関節も反る動きが必要になります。

下図のように、腰の負担を減らすためには股関節が反る動きも必要な動きになります。

股関節伸展十分

続いて、股関節を反る動きが動かなくなることが腰にどう負担がかかるのか?

股関節伸展不十分

このように股関節が反る分の動きを腰椎が代わりに反らなければいけなくなります。

腰椎が動き過ぎる分、腰に負担がかかり腰痛を引き起こします。

そのため、体を上手に反るためには股関節の反る動きも非常に重要になります。

股関節が適切に反れているかをチェックするためには下記事内で確認してみてください。

■足部アライメントが崩れることにより腰に負担がかかる

足部アライメントも腰痛予防にはとても大切な要素になります。

※足部アライメントとは?
アライメントとは、骨・関節の配列のことで、骨の並び、位置関係のことになります。つまり、足部アライメントとは、足の骨・関節の配列や位置関係のことです。

●●●足の写真

このように足は細かい小さな骨が集まってできています。

片足だけでも28個の骨が集まり、骨と骨の間は全て関節が構成されています。

この骨と骨の配列や位置関係はある程度決まっており、正しい配列や位置関係にある場合は正常な足部アライメントと言えます。(足骨正しいアライメントの絵)

反対に、この配列や位置関係が崩れた足部を足部アライメントが崩れた状態と言います。(足骨アライメント崩れた絵)

この足部アライメントが崩れている状態でよく見られるものとして「扁平足」「開張足」などが挙げられます。

土踏まず

そして、これら「扁平足」や「開張足」は腰痛の原因になります。

これらがなぜ腰痛に関係しているのか?「扁平足」を例に説明します。

「扁平足」とは、足の内側の土踏まずが潰れてしまっていることを言います。

この土踏まずが潰れていると全身に影響を与えます。

全身に影響を与える理由として「運動連鎖」と呼ばれる現象があります。

※運動連鎖とは?
足のアライメントが変化することにより、連動して膝や股関節、骨盤などのアライメントも変化していきます。

足の土踏まずが潰れることで運動連鎖により下のイラストのような姿勢の変化が起きます。

上行性運動連鎖

このように扁平足がある側の下半身〜骨盤にかけて姿勢や骨の向きが自然に変化してしまいます。

この現象と腰痛がどのように関連するか説明します。

例えば、片足だけ扁平足などで足部アライメントが崩れたらどうなるか?

先程のイラストのように扁平足側の骨盤のみが捻れるような形(寛骨前傾)になります。

片側のみの骨盤が捻れた形になることにより、骨盤の形状の左右差が生まれます。

腰椎は骨盤と連結しているため、この骨盤の左右差が生じると腰椎も捻れるような形になります。

この腰椎の捻れた状態が腰に負担をかけ、腰痛の原因になります。

そのため、骨盤の捻じれの左右差により生まれた腰椎の捻れが腰痛の原因になっている場合、どれだけマッサージやトレーニングをしても改善することはありません。

腰痛改善には足部アライメントを改善し、足部からの運動連鎖による悪影響を断ち切ることが必要です。

しかし、アライメント改善のためのコンディショニングを行っても、足部アライメントの崩れが強かったり、慢性化していると効果が出るまでに時間がかかってしまうケースがあります。

その場合はインソールなどを使ってみることをオススメします。

インソールのメリットとしては、

・足元の根本から解決できる
・即時効果がある
・パフォーマンス向上

という3つのメリットがあります。

「痛いけど練習をなるべく休みたくない」
「なるべく早く痛みの改善をしたい」
「今後、足や腰、膝などの痛みが出ないように予防したい」

など考えている人は一度インソールを使ってみることを推奨します。


■体幹筋力や腹圧が弱くなることで腰が動きすぎる

腰痛の大きな原因として、腰を大きく反る動きが反復されることが挙げられます。

そのため、腰が反り過ぎそうになった時に腰の反りを止めてくれる筋力や体の使い方が腰痛予防には大切です。

そのために必要な筋力の1つとして、腹斜筋や腹直筋などのお腹の筋力が重要になります。

腰が反りすぎそうになった時に、これらのお腹や殿部の筋肉が働き、腰が過度に反りすぎるのを止めてくれます。

このような筋肉の働きは、腰が過剰に反ることを予防し、腰に過度な負担がかかるのを防いでくれます。

また、もう1つ大切な機能として、「腹圧」と呼ばれるものがあります。

これは腹横筋、横隔膜、骨盤底筋、多裂筋の収縮により生み出される、言わば、お腹の中の風船のようなイメージです。

腹圧を高める

腹圧ありなし


腹圧が高まっている、つまり風船が膨らんでいる状態であれば腰に負担がかかる動作を行っても腰に負担がかかりにくくなります。

逆に腹圧が高まっていない、つまり風船が縮こまっている状態で腰に負担がかかるようなことを行うと、腰に大きな負担がかかってしまいます。

そのため、この腹圧の機能を高めることも腰痛予防には大切な要素の1つとなります。


以上が伸展型腰痛の4つの原因になります。

冒頭でも説明したように、腰の違和感や痛みが気になりだしたら早期改善がとても重要です。

多くの場合、放置しておいて改善することは少ないと考えています。

少しずつ症状が悪化し、最終的には競技ができなくなるくらいの腰痛になってしまう選手が多くいます。

このことを頭において、腰痛の重症化を未然に防げるよう、正しい対処とコンディショニングを身に着けておくことをオススメします。

また、自分にとって必要なコンディショニング内容は何か?

この点が分からない人はSK8INSOLL腰痛コンディショニングの記事も参考にしてみて下さい。

腰痛の原因となっている要素をセルフチェックで見つけ出し、それに合わせたセルフコンディショニングをご紹介しています。

少しでも腰痛改善の助けになれれば幸いです。

それではまた次の記事でお会いしましょう。



執筆者
理学療法士 澤田悠介


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