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思い出話9 想い出の同級生

小学生の頃の同級生に、あき子という女子の生徒がいた。
実はこの同級生、中一のある日突然、脳出血で亡くなってしまった。

地元の同じ中学に入ってからはクラスが違ったが、小学五年、六年は同じクラスであったあき子さん。

急死したことを翌日先生から聞かされた時のことは、今でも覚えているが、当時の先生の話しによると、あき子さんは前夜に突然、
「頭が痛い!」
と両親に訴え、すぐに病院に運ばれたが、そのまま夜遅く帰らぬ人になってしまった、ということでした。
あまりに急な知らせに、私はとてもショックだった。

あき子さんは、芸能人で言うと、女優の石田ゆり子さんを中学生の頃のようにぐっと若くしたような、とてもチャーミングな感じのいい女生徒だった。子どもながら美人でした。

「なんであの子が・・・」
という信じられない思いであった。

それは小学校の頃から一緒だった、という気持ちがあったからだとは思うが、いやそれだけでなく、あき子さんとはある特別な思い出があったのです。

小学六年生の頃、卒業を前にクラスの中でいくつかのグループに分かれての学芸会があった。私とあき子さんは、五年の頃からの顔見知りでもあり、偶然にも同じグループになっていて、私たちはその発表会で、母と子の役を演じることになったのです。

シナリオは、たぶんそういうことが得意な誰かが書いたのだと思うが、今ではほとんど覚えていない。子どもが考えた演劇でした。

私たちのグループ六、七人は、その中のある農家の人の家に集まって、演技の練習をしていた。私は「一」(はじめ)という息子役で台本を渡された。

あき子さんは、演技の練習中、
「はじめちゃーん!はじめちゃーん」
と、親しげに甘い声を出して私の頭をなで、台詞通りの母子の会話を私と何度も繰り返した。

発表会は、練習の甲斐もあり何とか無事に済んだが、それ以降、私は、彼女のことを好きになっていたのかもしれない。特に意識するほどの恋愛感情ではなかったが、中一になり、クラスが別になったことで、なんともいえぬ寂しさを感じていたからです。
あとになって考えてみると、そんな気がしてくるのです。

たった十二歳で逝ってしまったあき子さんの机には、いつまでもきれいな花が花瓶に活けられて置かれていた。その教室の情景は、今でも微かに頭の中に残っている。

あれからもう何十年かの歳月が流れているが、私はいつも何かで苦しい時、彼女のことを思い出すようにしている。

そしていつも、
「彼女から見れば、もう〇○年も余計に生きているのだから・・・」
と、自分に言い聞かせて感謝をし、己を鼓舞するようにしている。

その年数は毎年ひとつずつ増えていく。


水元公園で撮ったチューリップたち

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