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主な対象はアーリー・ミドル期 凸版印刷のCVCによる投資戦略


デロイト トーマツ ベンチャーサポートは凸版印刷を招き、スタートアップ企業に向けてプレゼンテーションを行うリバースピッチを実施した。同社はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じ、創業間もないアーリー期や事業が軌道に乗るミドル期を中心に60社以上のスタートアップ企業に投資。少額出資によって、既存事業の補完ではなく新たな事業領域の創出に力を入れている点が特徴で、今後はデジタル・トランスフォーメーション(DX)分野に加え、医療やヘルスケア、更には環境・エネルギーといったサステナビリティー・トランスフォーメーション(SX)分野への投資を加速している。

自社の社員を出向先に派遣し、経営に参画


凸版印刷のCVCでは国内のベンチャーが投資の対象となる場合、取締役会などに諮らず独立の委員会で判断する。その際に重視しているのは事業シナジーを生み出すこと。その一環として相手先に自社の社員を出向し、経営に参画する手法を取り入れている。
例えばクリエイティブスタジオを運営するコンボには、2020年12月に設立された当初から人材を派遣。社内規定の策定などを支援する一方で、クリエイティビティなどのノウハウを獲得した。また、需要予測サービスを提供するメトロエンジンとは、新型コロナウイルスの感染拡大を機にフードデリバリー需要の高まり対応。様々なフードデリバリーサービスからのメニュー・注文状況を一元管理できる、飲食店向けサービス「デリくる」を共同で開発し、両者で新規事業開発にも挑戦している。
 

ヘルスケアに代表されるSX領域への出資を強化


凸版印刷は事業ポートフォリオの変革を進めている。その核となるのがデジタル・トランスフォーメーション(DX)と海外生活系、フロンティアを合わせた重点事業。2021年度の営業利益に占める割合は3事業の合計で20%に過ぎないが、25年度には50%以上に引き上げる計画だ。
それに向けて重要なカギを握るのが、DXやSX領域のスタートアップ各社への出資だ。
既存事業であるマーケティングやセキュアビジネスなどの重点テーマに沿って足りていないリソースを補完するためのミッシングピース型の投資に力を入れていく一方、ムーンショット型のアプローチとして特に重視しているのがヘルスケア。例えば電子処方箋への対応、匿名加工した医療情報を活用できる次世代医療基盤法の導入など、法規制の改定などで新たな成長が期待される市場へ一早く参入するための施策として、スタートアップ投資活動に力を入れていく。
 

凸版印刷との連携でバリューを高められるかがカギ



今回のリバースピッチは凸版印刷事業開発本部ビジネスイノベーションセンター長の朝田大(あさだ・ひろし)が対応。投資に対する基本姿勢などについて聞いた。聞き手はデロイト トーマツ ベンチャーサポート Sixbrainユニット長の外山陽介
 
――スタートアップの企業価値は、どのように見極めているのか
朝田 スタートアップにとって厳しい市況が続いており、特に上場が視野に入ったレイトステージにある企業ほど厳しい状況が続いていると認識している。そうした中、海外を見据えて事業を構築したり、高いコスト意識を持ち新規株式公開に向けて愚直に資金調達に取り組んでいる企業と、こうした姿勢がない企業との間では、かなり差が出てきている感じがする。これに伴いM&Aをめぐる動きも活発化している。
 
――出資する際、凸版印刷に取り込んでいくことを視野に入れるケースも多いのか
朝田 (事業の中で明らかに足りていない部分を補う形の投資パターンである)ミッシングピースの場合、M&A(合併・買収)やジョイントベンチャーを念頭に置きながら話を進めていくことがある。一方、(具体的な事業活動ではない分野への投資パターンである)ムーンショットは、その領域に当社の知見がなく、市場がどのように動いているのかを把握するケースが多い。そういった領域の企業のM&Aはなかなか難しいのでは。
 
――M&A時に重視することは
朝田 どういった形で事業シナジーを生みながら階段を上っていけるのかを、大切に説明するようにしている。
 
――となると、攻めたM&Aではないかと
朝田 ある意味、能動的なアプローチを大切にしている。単独で事業を進めていくのは厳しいかもしれないが、凸版印刷のケイパビリティ―(組織の推進能力)と組み合わせることによって、「こういった事業拡大、将来展望があるのではないか」ということを、こちらから積極的に説明するようにしている。
 
――アーリー・ミドル期のスタートアップへの出資に力を入れる理由は
朝田 シード期が少ない理由は、市場に受け入れられているかどうか(PMF)があまり見えず、技術の目利きは一定程度出来るかもしれないが、特にスタートアップの経営スキル、人的資源といった視点においては我々だけでは判断が難しいため、特にVCの皆様に教えを請いながら検討すべきだと思っている。「凸版印刷とどういった形で連携すればバリューを高められるのか」といった観点から投資のタイミングを鑑みるに、アーリー・ミドルへの出資が基本なのかなという感じがする。
 
――出向制度を導入している理由は
朝田 悩みに悩んだ結果、取り入れたのが本音だ。相手先の経営状態を知らないままに「こういったことをやってください」「これをお願いできませんか」といった一方的なやり取りが続く。この方法を変えていかなければ、ステージが上がっていかないということを現場のメンバーから意見があがり、出向によって最初に課題を明確にした上で支援することが協業に向けた早道なのではという仮説に辿り着いた。ただ、すべての会社に当てはまるわけではない。ここと思っている会社に、この手段を適用している。
 
――出向させるかどうかの判断基準は
朝田 どういったところで協業できるかというオポチュニティ(機会)が多ければ多いほど、支援の可能性が高まる。
 
――凸版印刷のリソースを活用すれば伸びるぞ、といった会社ですね
 

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