#27 誤りから貴重なものを汲み取れ
このマガジンでは、哲学者のヴィトゲンシュタインの言葉をお題にして、思いつくままに文章を書いて気づきを得るということをしています。
今回は「誤りから貴重なものを汲み取れ」いう言葉をお題にして、思いつくままに文章を書いていきます。
ヴィトゲンシュタインは、著書の中で次のように語っています。
人間は、若いときほど失敗を怖れるものなのだと思います。
なぜかといえば、若いときほど失敗することに慣れていないからです。
しかし、ある程度年齢を重ねると、様々な失敗をした経験から予測しながら行動できるようになるし、失敗の対処法を心得ていることから、余裕を持って行動できるようになり、怖れを減らしていけるようになるものです。
また様々な失敗の経験から自分の得意不得意を知ることが出来るようになっているため、無理して失敗するようなこともしなくなるものです。
そう考えると、失敗が人を成熟させるものであり、失敗の数は経験値に換算することもできます。
「若さ」とは、真っ白なキャンバスのようであり輝きがある反面、繊細であり、その繊細さ脆さでもあります。
その一方で失敗という経験値は人を強くさせるものです。
日本プロ野球の伝説となっている広島カープの達川さんのデッドボール・アピール(体にかすってもいないボールを「当たった!」と言い張り何度も出塁しすること)みたいなことは、繊細な心を持った若者には決して出来ることではありません。
しかし、おそらく達川さんは野球人生の中でたくさんの失敗があったのだと考えられるし、そういった失敗が達川さんのハートを強くさせたのだと思います。
人は失敗をしないと学べない生きものであり、失敗を通じて自分を知ることが出来るようになるといえるかもしれません。
失敗が人を成熟させる。
成熟した人の陰にたくさんの失敗がある。
そういうふうに考えることが出来るようになると、生きることが楽になるものです。
また、失敗は自分の「好き嫌い」を教えてくれるものです。
例えば、何度も失敗してもそれに挑戦できることは「好き」を意味することだし、失敗を繰り返していくうちにやる気がなくなることは「嫌い」を意味するといっていいでしょう。
つまり、失敗を通じて得られる感情から、様々な「貴重なものを汲み取ることができる」といえます。
人が失敗を受け入れて生きていけるようになると、「受容」の精神を養うことができるようになります。
自分の失敗はもちろん、他者の失敗を受け入れられるようになると、受容の心を育むことになり、結果よりも過程を重視するようになっていきます。
結果重視の社会は厳しい世界ですが、過程重視の世界は優しい世界です。
結果重視は人の精神を挫くものですが、過程重視は人の心を育てるものです。
そこで私たちが失敗に優しい社会を創ることが出来るようになったなら、個人だけでなく人類として成熟できるようになるのかもしれません。
いずれにせよ、ヴィトゲンシュタインがいうように、誤りから貴重なものを汲み取っていくという視点を持って生きていけるようになると、個人としても社会としても成熟できるようになるのかもしれません。
*お題として参考にさせてもらうのは、ディスカヴァー・トゥエンティワンさんの「ヴィトゲンシュタイン 世界が変わる言葉」という本の中で紹介されているものです。
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