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ベビーシッターを雇うと2億円がもらえる

子どもが新生児の頃、私達夫婦がベビーシッター代に月100万円近く支払っているというと、多くの人が驚いた。そして、ほとんどの人が「お金あるんですね」と同等の表現をしていた。

たしかに、小さい金額ではない。しかし、私達はその金額に十分満足していた。そもそも、ベビーシッター代は無限に払い続けるわけではなく、主には最初の3ヶ月間への集中投資と考えていたし、そもそもベビーシッター代というのは、単に「その時間」子どもの面倒を見てもらうためのお金ではない。ベビーシッター代は、未来への投資である

①生涯賃金の維持

女性が正規雇用の場合を考えと、以下のようになる。

・出産等の休業がない場合、生涯賃金は約2億6千万円(ここを基準に仮定)
・育休を2回取得した場合、生涯賃金は約2億3千万円(マイナス3千万円)
・出産を機に退職してその後パート勤務になった場合、生涯賃金は6千万円(マイナス2億円)

ニッセイ基礎研究所
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55013?site=nli

<育休を取得しなければ3千万円もらえる>

まずは育休を取得した場合としなかった場合で考えてみる。育休を取得しない場合、主にかかる費用はシッター代と保育園代である。ただ、保育園代はほとんどないようなものである。認可保育園は保育料が安く、両親の収入(によって決まる特別区民税額)によって料金が決まるが、どれだけ収入が高くても上限が決まっており(例えば新宿区の場合は月額74,700円)、かなり安いからである。

私は、シッター代に100万円×3ヶ月=300万円払っても、3千万円以上のプラスになるのだから、収支は大幅な黒字であると考えていた。また、育休2回取得でマイナス3千万円ということは、子ども一人につき1500万円ということになるので、子ども一人あたりのシッター代が1500万円よりも少ない場合、その金額は安いといえるし、投資対効果が抜群に良いといえる。

<仕事を辞めなければ2億円もらえる>

「子どもがかわいくて、どうしても子どもと一緒にいたいから」仕事を辞めるのであれば、まあわかる。価値観は人それぞれなので、子どもとの時間が生き甲斐なのであれば、そうした方が良いだろうと思う。

一方で、「一人の時間もほしいけど、仕事も続けたいけど、仕事と育児の両立は大変だから」、「ベビーシッターを雇うほどのお金はないから」出産を機に(特に2人目の出産を機に)仕事を辞める人が私の身の回りでは結構多い。しかし、冷静になって考えてもらいたい。シッターさんに育児をお願いして仕事を辞めなければ、2億円もらえるのである。上述の金額は平均年収くらいでカウントされているので、医師や弁護士などの専門職や、大手企業の総合職として勤めている女性であれば、おそらく損失額はもっと大きくなると思う。東大女性が仕事を辞めた場合、ほぼすべての人がこれよりはるかに大きい金額を失うことになると思う。


②良質な睡眠の確保

ここまで、シッターさんに育児をお願いする(それによって仕事を続ける)ことが優良な投資案件であることは理解いただけたと思う。投資するにあたって重要となるのは、新生児期の初期投資である。

<育児の大変さを決める主要な要因>

育児の大変さを決める最も主要な要因の一つは、「寝る時間が確保できるか」ということだ。一般的な人は昼に仕事をして夜に寝ている。当たり前のことである。なので、昼に育児をして夜に寝るということであれば、(それでも私はかなり大変だとは思うが)こなせる人は多いと思う。つまり、子どもが夜にまとめて寝てくれるようになれば楽だし、いつまでもまとめて寝てくれなかったり、夜泣きが激しかったりすると育児の大変さ度合いは一気に跳ね上がる。

新生児育児で最も辛いのは、夜に眠れないことである。というのも、夜に泣かない新生児はいないからである。私自身、母親から「お姉ちゃんは夜泣きすごかったんだけど、あんたは全然夜泣きしない子で楽だったわあ」と言われていた。そのため、私は「夜泣きしない子どもが存在する」という認識でいた。

しかし、これは「夜泣き」の定義が違うことによる誤認であったことが産後になってわかった。夜泣きとは、「生後半年頃から1歳半ぐらいの赤ちゃんにみられる、夜間の理由のわからない泣き」を指している。多くの場合は、(少しはまとめて寝られるようになった赤ちゃんが、)突然再び泣いて寝なくなる現象のことをいうのである。つまり、新生児期が夜に泣くのは当たり前のことであって、「夜泣き」とは言わない。新生児期に泣かない赤ちゃんは存在しないのである。

<子どもはいつになったら夜にまとめて寝るのか>

新生児期に100%泣くのはわかったが、では、子どもはいったいいつになったら夜間、一度も起きずに夜通し朝まで寝るようになるのか。一般的には、生後6〜7ヶ月頃になると夜通し寝られる可能性が出てきて、平均は生後13ヶ月というデータがある(ちなみに遅いと4歳という恐ろしいデータもある)。つまり、平均的には1年以上の間、親は夜にまとめて寝ることができないのである。

私達夫婦は、新生児期の最初が最も重要だと考え、そこに集中投資して0歳0ヶ月~0歳3ヶ月までの間は毎日シッターさんに昼夜交代でシフトに入ってもらうことにした。シッターさんがねんトレ(赤ちゃんが自分で夜通し眠れるようになるための眠りのトレーニング)を行ってくれた結果、子どもは生後91日目(約3ヶ月)には夜の0時から朝の7時までまとめて7時間眠るようになり生後115日目(約4ヶ月)には夜の20時から朝の7時まで(カーテンを開けて朝日を当てなければ朝9時まで)11時間まとめて眠るようになった

子どもが夜の20時から寝てくれるようになると、かなり自由な時間が増え、育児は圧倒的に楽になる。仕事にも集中できるし、夫婦でゆっくり過ごす時間も持てる。昼は保育園に預けているので、合間の時間で子どもと触れ合いつつ、一日を通して出産前とほとんど同じ生活を送ることができるようになるため、初期投資の重要性を再認識し、投資して良かったと心から思っている。

なお、夜通し眠れるようになることは、赤ちゃんの発育にとっても非常に良い効果がある。正常な脳の発達には良質な睡眠が必要不可欠で、脳の正常な発達に応じて子どもの睡眠サイクルも変化していく。特に新生児期は睡眠時間の約半分がレム睡眠で、これによって脳の神経回路を作っているといわれている。脳幹が活発に活動するようになり、将来頭の良い子どもに成長する確率も高まる。

③産後うつの回避

新生児はほとんど24時間泣いているので、自分で育児するのであれば、夜は眠れない。コロナ禍では1歳未満の赤ちゃんがいる母親の4人に1人が産後うつになるといわれているが、その主要な要因は睡眠不足である。2-3時間しか眠れない細切れ睡眠が何ヶ月も続けば、誰でも頭がおかしくなるだろう。死んだら元も子もないのは自明なので、これについてはこれ以上の説明は割愛する。

④夫婦円満

ほとんどの人にとって育児は大変なので、新生児育児期の夫婦は喧嘩が絶えなくなることが多い。私も今まで友人夫婦から様々な不満を聞いてきた。普通に考えて、眠れなかったり、うつになったりしたらお互いを思いやる気持ちの余裕が持てないのは当然だし、自分の時間が大幅に減ったら不満に思ったり、仕事を辞めたら後悔したりして、そのやりきれない気持ちを身近な相手にぶつけたくなるのは自然だと思う。新生児育児に投資することで、夫婦円満な関係を保つことができる。

結論

新生児期に集中的に育児のプロにお願いすることで、生涯賃金を維持して確実な投資を行うことができる。子どもが寝るようになれば、産前とほとんど同様の生活を送ることができるし、産後うつを回避でき、夫婦円満のまま仲良く過ごすことができる。

前述したように、私達夫婦が払ったシッター代の話をすると多くの人が「お金あるんですね」と言うが、それは単純に価値観の問題だと思う

私の周りでは、結婚式に300万とか、500万とか使う人が結構多い。もちろんそうしたい人はそうしたら良いと思う。私自身は、結婚式はやりたいが、たいして仲良くない人を何十人も呼びたいという気持ちはなかった。お互いの親族と、生涯の親友たちだけを招待して、ご祝儀なしでお祝いの気持ちだけで来てもらった。会場は某高級ホテルの素敵なチャペルで、お気に入りのドレスを着て、理想通りの式ができたが、60万円で済んだ。

私は家も車もいらない。サービスの行き届いたマンションに住んでしまうと、24時間ゴミ捨て場や宅配ボックスがない、メンテナンスが大変で冷暖房効率も悪い戸建てをほしいという気持ちはわいてこない。大学1年生の夏に運転免許を取ってから、車はただの一度も運転していない。

派手な結婚式も、家も、車もいらない。

ただ、自分の自由な時間がほしい。夫との時間がほしい。仕事を楽しくできる時間がほしい。そして夜は眠りたい。それにお金を払いたい。

自分は何にお金を払いたいのか。それをよく考えることが重要だ。


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