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かずきの大剣 第3話:漆黒の剣士アザゼル

3話「漆黒の剣士アザゼル」
それはリアと旅に出て1年後のある大雨の日

いつも通り俺達2人は西の国を目指して山道を登っている所だった。西の国へは遠い。飛行魔法や転移魔法があればすぐに着くが、リアはその魔法を習得していない為と、西の国の1番大きな騎士団収容所が最西端あるので、そこに向かうには2年の月日が必要だった。アスピアが居る可能性としては、そこが1番高いと踏んでいる。

かずき「よし。この山を下ったら西の国と東の国の国境付近だ。」

リア「そうね。やっと西の国に入るのね!」

かずき「ああ。長かったけどまだこれから西の国の最西端まで行かないといけない。」

リア「西と東の紛争が一時休戦状態になって良かったわね。休戦してる間は厳重チェックの元だけど出入り自由みたいだし!」

今この世界のふたつの国は一時休戦状態で一定の交流をしているみたいで、このまま何事も無ければ2つの国は和解する方向に行くそうだ。すれ違いで西の国から来た商人が口々に言っていたから間違いないだろう。

かずき「そうだな。でも油断は出来ないから明日には国境付近まで行こう。今日はこの山を上った峠の町で泊まろう。」

リア「久しぶりの宿ね!今日はディープな夜になりそうね。(ニヤニヤ)」

かずき「あ、ははは…(笑)」

他愛のない話をしていると、左側の森からもの凄い地響きと共に1人の女剣士と巨大な魔物が飛び出してきた。咄嗟の判断でリアはバリアシールドを張る。俺も伊達に1年何もして無い訳じゃない。戦闘力は中堅冒険者のレベルには達していた。すぐに剣を引き抜き戦闘の態勢を取る。

ズジャーッ

身体を擦りながら体勢を整えて次の攻撃に備える黒い防具を身にまとったボロボロの女剣士の目の前には全長3mにもなるだろう巨大ゴブリンが立っていた

リア「ゴブリンキングね…!しかもゴブリンキングの中でも上位中の上位…つまりこの辺りの生態系トップクラスの魔物よ…!」

かずき「どうしてそんなやつがこの大雨の中地上に出てきてんだよっっ!!!」

俺は足に踏ん張りを効かせて飛び上がり、
ゴブリンめがけて剣を突き刺す。

かずき「はぁぁぁぁあっっ!!!」

渾身の力で突いたが、ビクともしないうえ、傷1つ付かない。鍛え上げられた肉体、そして殺意意外を連想させない目。今まで戦ってきた魔物の中で間違いなく飛び抜けて強い。
次に足が着いた時には恐怖で足がすくんで、今にも倒れそうだった。
女剣士も必死に抵抗するが、こちらも防御が精一杯のようで、焦りが隠せていない。
その時、リアは2人にこう呼びかけた。

リア「お二人とも10秒ほど時間を稼いでください!私が高位の魔法をゴブリンめがけて撃つのでそれまで耐えて下さい!!」

かずき「わかった!!」

女剣士「…はい。」

10秒…それは人生で体験した事ないレベルで長い10秒だった。1つ判断をミスると間違いなく殺される。そんな意識の元、必死にゴブリンキングの攻撃をリアに当てないように守り抜いた。

リア「大地に降り注ぐ大雨よ私に力を。大地を震わす氷の刃となり、敵をうがて!!」

!!!!ヘルストーンブリザード!!!!

ズドドドドーーーン!!!!
辺り一帯の雨粒が氷の剣のようになり、ゴブリンキングめがけて一斉に突き刺さる。

ゴブリンキング「ヴヴヴァァァ!!!」
ゴブリンキングは呻き声と共に消えて無くなった。

戦いが終わったと悟ると、俺は膝を着いた。

かずき「勝った…のか?」

リアはそれに続いて言う

リア「大雨が降っていて良かった!!降っていなかったらあの魔法は出来なかったし、勝てる見込みが無かったよ…」
それを言われて気がついたが、
リアの魔法の影響で周辺の雨がやんでいた。膝を着いている俺の前で、座っている漆黒の防具を着けた女剣士が居る。見た目は俺の1つ、2つ程上の様だ。すごく気の強そうな顔立ちをしている。少し怖いが、俺は話しかけてみた。

かずき「さっきのゴブリンえぐかったな…名前、なんて言うんだ?」

女剣士「…私は、アザゼルです…さっきはありがとうございます…」

見た目とは裏腹に喋り方は気の弱い喋り方をしていた。驚いたが、話を続けた。

かずき「あのゴブリンってどこで襲われたんだ??」

アザゼル「…獣道を…歩いて小さなモンスターを狩ってたんですけど…小さなモンスターをビビらせる為に投げた小石が…ゴブリンキングに当たっちゃって…」

彼女は見た目によらず、気弱でドジな性格だった。歳も歳上だと思っていたが、俺の1つ下で、16歳だった。彼女は俺たちの目指している峠の町の冒険者だそうだ。そして、俺達の旅の目的も話し旅について来て欲しいと言うと、アザゼル自身次の目的も無いそうなのでパーティに入ってくれることになった。
そんな他愛のない話をして峠の町に3人で向かった。

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