第二話 「保育所時代」
当時私は、保育所に通っていた。毎朝母が漕ぐ自転車の後ろに乗り、母の大きな背中を感じながら、ただ、これから仕事に行く為ピリピリしている母に、甘えられない、そんな空気を感じながら、保育所までの道のりは、ただただ母との距離を確認するだけの苦痛の時間だった。
保育所での生活は、何一つ、楽しかった思い出が無い。冗談ではなく、何一つだ。当時撮った写真を思い返してみても、全て無表情。遠足の時も、運動会の集合写真も。そもそも運動会に母が来たのは年長の時の一度きりだった様に思う。しかも写真だけ撮りに。どんなに記憶をたどっても、嫌な記憶しか無い。怖いくらい、何も出て来ない。はっきりと覚えているのは、保育所に行きたくなくて駄々をこねた事と、お迎えがいつも最後で寂しかったこと。である。
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