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第五話 「入学」

ただただ苦痛だった保育所時代が終わり、私は最寄りの小学校に入学することになる。最寄りといっても結構な距離を歩いていたと思う。ひたすらまっすぐに、そして大きな川に掛けられた大きな橋を渡り、たまに土手沿いを歩き…といったように、今思えば、非常に景観の良い通学路だった。橋は何本か掛けられており、橋の上でジャンプをすると、橋全体がうねるように揺れるのが体感できた。好奇心旺盛の小学生にとってあの橋は絶好の盛り上がりスポットだった。

保育所時代が噓のように、小学校は楽しかった。休み時間になると校庭やら多目的スペースみたいな所で走り回って遊んでいた。初恋の女の子もできた。

「○○ちゃん、好きです」

みたいなことを書いた手紙を渡したような記憶がある。どこでそんなことを覚えたのかと恥ずかしくなる。淡い思い出だ。しかも一年生で。幸いあっちも好意を持っていてくれたようで、学校ではその子とばかり遊ぶようになった。

学校の勉強も全く苦じゃなかった。なんなら面白いぐらいに思っていた。

家に帰ってからは、家の斜め前に住む同級生の男の子といつも遊んでいた。毎日暗くなるまで近所を探検していた。

そう、家以外は楽しかった。

まったくと言っていい程、家での楽しかった記憶が出て来ない。記憶を絞り出そうとするが、すぐに考え直す。楽しいわけがない。なにせ私は拾われた子だから。たまに、母と関係のあるらしい男が現れ、近くの焼き肉屋に家族で食べに行くことが何度かあった。が、別に楽しいとは思わなかった。それ以前に、父親じゃないならこの人は誰なのだろう。

後になってわかることだが、この人は当時母が好意を寄せていた男性で、私のランドセルもこの人が買ってくれたのだそうだ。

はぁ…それはどうも。よくわからんこの家は。

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