見出し画像

「身体の形状からくるいじめだったので、主人公の磯部が自分と似ていると思った。」宮台真司先生 | 映画『アマノジャク・思春期』全国公開記念 第一回:

今週末の2020年2月1日(土)より新宿K`sシネマから始まる映画『アマノジャク・思春期』の全国劇場公開を記念し、2019年7月28日(日)下北沢トリウッド公開上映2日目、社会学者・映画批評家宮台真司先生とのアフタートークの一部始終を文字起こししました。これから四回に分けて記事化しています。こちらは、第一回目の記事です。ネタバレ部分は【一部割愛】します。

本作は2/7(金)まで午前11:00に新宿K’sシネマで上映されています!4月は大阪、5月以降に横浜での上映も決まっています!
★新宿K`sシネマ 『アマノジャク・思春期』公開イベント情報

映画『アマノジャク・思春期』応援コメント/宮台真司先生

画像1

<登壇者>
宮台 真司 社会学者・映画批評家
岡倉 光輝 映画『アマノジャク・思春期』脚本・監督
<モデレーター>
錦山 理沙 映画『アマノジャク・思春期』プロデューサー

見かけによって、いじめられていた小学校1・2年生

画像2

錦山:本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます。本作『アマノジャク・思春期』のプロデューサー・錦山と申します。よろしくお願いします。公開二日目の本日は、30分ほどのトークイベントを開催します。それでは、登壇者のお二人をご紹介しますので、皆さま拍手でお出迎えください。始めに、本作の監督・脚本を担当された岡倉光輝さんです。

岡倉:岡倉光輝です。よろしくお願いします。

錦山:続きまして、本日のゲストは、社会学者・映画批評家の宮台真司先生です。

宮台:よろしくお願いします。

錦山:今回のトークイベントは、宮台先生からいただいた感想を元に構成する、フリーディスカッション形式です。まずは本作の感想から、お願いします。

宮台:僕は乳児の時に右手にひどい火傷を負いました。今でも大きな跡があります。昔は指の間がくっついていて、こんな状態でした(当時の指の形状を再現して、観客席に向ける)。運動神経はある方でしたが、この手のせいで鉄棒ができないとか逆立ちできないとかがありました。何より見かけが良くなかったので、小学校1・2年生の時はいじめられました。幼稚園では一年上の女の子が守ってくれて、その子の名前“マリコ”でした。

岡倉:実はここだけの話、(本作のヒロインの)モデルになった女の子の下の名前も、“マリコ”っていうんですよ。

宮台:なるほど。“マリコ”っていう名前には、弱者に寄り添う何か宿っているのかも(笑)

岡倉:12月25日に生まれたので、マリア様からとって“マリコ”って名前なんです。いや、24日だったかな…。とにかく、それくらいの時期です。

宮台:僕の妻のクリスチャンネームも“マリア”です (笑)。僕は小学校一年から一年ごとに転校して、最初は誰も守ってくれる人がいなかった。集団で「死ーね、死ーね」って主人公が言われるシーンがあるけど、ああいう目に遭いました。みんなにチャリンコで追い駆けられて、ぶつけられて田んぼに落とされたり。似た経験をされた方もいらっしゃるでしょうが、僕は身体の形状から来るいじめだったので(主人公の磯部が)自分と似ていると思いました。

何があってもいつも『やくざの子たちの側に立つ』『女の子たちの側に立つ』と決めた

画像3

宮台:ただ、小学校の三年くらいからは知恵がつきました。
当時は京都に住んでいましたが、どの学校にも番長・副番長みたいな、やくざの子たちがいました。ウチに高価なおもちゃがいっぱいあったので、彼らを家に呼んで遊ばせてあげた。これは母の知恵でした。一緒に晩御飯を食べさせてあげるとかも。片親の子も多かったので、すごく喜んでくれて、それで僕を守ってくれるようになりました。
あと、女の子と遊ぶようにしました。そうしたらゴム跳びが得意になりました。東京ではゴム段ですね。ゴム跳びやドッヂボールって学校ごとにローカルな技がありますが、僕は転校を繰り返すことでそれを蓄積して、 “奇跡の天才”の異名をとれるようになりました。それで、何があってもいつも『やくざの子たちの側に立つ』『女の子たちの側に立つ』と決めて、ポジションを失わなくなりました。

代わりに、今度は変なことをするようになりました。たとえば、僕をいじめた“渥美君”っていう金持ちの子がいて、そいつが学校を休んだ日にたまたま自習時間になったんで、学級委員だった僕は『渥美を懲らしめに行くぞ!』って言って、彼の家に出かけてみんなで石を投げた。そしたら、お巡りさんが来ちゃって、駆けつけた担任の遠藤先生も泣いちゃうし、とんでもないことになりました。
いずれにせよ、辛いことがあった時にあれこれ考えて知恵を身につけました。一つが屋上に出ること。この映画にも屋上が登場します。僕は天体望遠鏡を買ってもらい、夜は星を見ていました。SFが好きでした。虫も好きで、今も家にカブトムシとクワガタが6匹います。コーカサスカブトムシとかパリーフタマタクワガタとか。3人の子どもにプレゼントしましたが、本当は僕が好きなんです。望遠鏡もSFも虫も、それをきっかけに友だちを作れました。小6でアマチュア無線の免許を取ったのも、 屋上で友だちと一緒に無線交信するためでした。

小学校でいじめられた時に身につけた知恵が30年後の仕事につながった

画像4

宮台:【一部割愛:この映画は、主人公の磯部が、~で終わります。その前の場面では、峰岸が公園で~物言いをしています。】僕は『磯部、どうするんだ、頑張れよ!』って感じになりました。やくざの子や女の子と仲良くしたり、 屋上で一緒に望遠鏡を覗いたり無線をしたりと、僕は知恵を身につけたけれど、磯部もたくさん本を読んでいるのだから、知恵をつけて上手くやってくれよって思ったのです。
映画に寄せたコメントに書いたけど、やくざの子たちとつながる知恵が、後にケツモチしてもらいながら風俗のフィールドワークをする営みにつながりました。援助交際を見つけた時も、1993年秋に朝日新聞に書いたら取材が殺到、女子高生のネットワークをマスコミつなげたら彼女たちが連日連夜テレビに出演し、援交ブームになって僕が戦犯とされたけど、この時も僕には『女の子に恩を返す』気持ちがありました。小学校でいじめられた時に身につけた知恵が30年後の仕事につながりました。そういうこともあるので、磯部に『これからだぜ!』と呼び掛けたのです。【一部割愛:~で終わったのは素晴らしいエンディングでした。】(本作で描かれた)小学生のいじめ体験に思い当たる人は多いでしょうが、どうリカバーするかは個人個人で違う。僕は自分の話をしたけれど、それは僕の話。いじめられた体験は似ていても、どう這い上がるのかはみんな違う。リソースが違うからです。その後どうなったのかを詳しく描いちゃうと『自分は違うな』と感じる人も出てきます。

錦山:どうもありがとうございます。本作は、監督自身の“生き辛さ”を背景に描かれていると聞いていますが、それについてお話ししていただけますか?

岡倉:自分にとって身近な、少年期にあった出来事を脚本に据え、本作を作っていきました。自分は受け口の問題で悩んでいて、小学校、中学校と周りに溶け込むことができませんでした。活舌に影響が出て、喋り辛かったり、声がくぐもって聞き取りづらかったりして。高校でも、不登校になって中退してしまったり。
18歳ころには手術をしたかったのですが、母親の反対に遭って、結局できませんでした。顎に矯正用のワイヤーをつけたり、手術に向けて歯並びの矯正だったりが必要だったのですが、それがストップしてしまって。父親は自分の側に立ってくれたんですけれど。
でも、19歳ころに手術を受けて、受け口ではなくなりました。その翌々年、大学へと入学することができたんです。僕の場合、顎のかたちが普通の状態に近づくことでしか、救われることはなかったんです。
第二回「僕も約束を忘れる、といった習性がある。広汎性発達障害といじめ。」宮台真司先生 へ続く

<新宿K`sシネマ公開記念特別カラービジュアル>

画像5

<映画『アマノジャク・思春期』とは>
ある少年の「受け口」の容姿への悩みを通し、彼の周辺で繰り広げられる騒動を描いた作品。また2005年4月の発達障害者支援法の施行前、「発達障害」の周知がない時代が本作の背景となっており、その少年は隠れた発達障害をも抱えている。本作では「いじめ」という普遍的かつ社会的なテーマを中心に据え、子どもの純粋さと同時に残酷な側面、そして、いじめの標的となる当事者の個別の事情を、実話に基づいて、生々しく描く。

・カナザワ映画祭2017「期待の新人監督」【審査員特別賞】
・第18回TAMA NEW WAVEコンペティション【特別賞】
・福井駅前短編映画祭2018【グランプリ[フェニックス大賞]】

<映画『アマノジャク・思春期』劇場公開情報>
・2月1日(土)より新宿K`sシネマで午前11時上映回で1週間上映されます。
・2月2日(日)午前11時上映回にて、宮台先生にアフタートークご登壇予定です。
・新宿K`sシネマ公開イベント情報は下記をご覧ください。
http://www.ks-cinema.com/information/10453/
・映画『アマノジャク・思春期』公式HPは下記をご覧ください。
https://www.amanojaku-sishunki.com/

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

4
受け口という身体的コンプレックス、隠れた発達障害を抱える少年と周囲の関係性を描いています。 監督:岡倉光輝|出演:山本楽 千野羽舞 古山憲太郎 河野知美 三坂知絵子 市原叶晤 大塚巧 拓羊 2020年2月1日(土)11時~ 新宿K`sシネマより全国順次公開です!

この記事が入っているマガジン

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。