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肩甲骨の後傾を活性化するには?~下部僧帽筋と前鋸筋にフォーカスした運動戦略~

肩甲骨周囲筋の中でも
特に下部僧帽筋(LT)と前鋸筋(SA)は
肩甲骨の後傾、上方回旋、外旋に関与し
肩関節の安定性と機能に重要な役割を果たします

これらの筋力低下や機能不全は
肩関節インピンジメントや腱板断裂
肩関節不安定症などの様々な肩関節疾患の
リスクを高める可能性があります

専門家にとって
肩甲骨の後傾に関わる筋を効果的に活性化し
強化する運動療法を選択することは
肩関節疾患の予防とリハビリテーションにおいて
非常に重要です

そこで本記事では
下部僧帽筋と前鋸筋を効果的に活性化するための
運動戦略について考えていきたいと思います

1. 下部僧帽筋と前鋸筋の筋活動と体幹安定化の関係

Haら(2012)は
異った腕を挙上する運動においての
下部僧帽筋LTと前鋸筋SAの筋活動を比較した研究を行いました

この研究では
健常者20名(男性10名、女性10名)を対象に
以下の4種類の運動中のLTとSAの筋電図を測定しました

  1. 立位腕上げ(WAL): 壁に面して立ち、前腕を壁につけたまま腕を上げる運動

  2. 腹臥位腕上げ(PAL): うつ伏せになり、腕を斜め上に上げる運動

  3. ロッキングバックワード腕上げ(BRAL): 四つん這いから後方に揺動しながら、腕を真上に上げる運動

  4. ロッキングバックワード対角腕上げ(BRDAL): 四つん這いから後方に揺動しながら、腕を斜め上に上げる運動

C)ロッキングバックワード腕挙上(BRAL)
D)ロッキングバックワード対角腕挙上(BRDAL)

その結果
ロッキングバックワード対角腕挙上(BRDAL)がLTの
ロッキングバックワード腕挙上(BRAL)がSAの活性化に
それぞれ最も効果的であることを明らかにしました

四つん這いの姿勢から
後方にゆっくりとお尻を踵に近づけながら腕を挙上する
ロッキングバックワードを行い
これによる体幹の安定化が
LTやSAの選択的活性化を促した可能性が考えられます

体幹が不安定な状態では
他の肩甲骨周囲筋が代償的に活動し
LTやSAの単独収縮が阻害される可能性があります

ロッキングバックワードでは
体幹を安定させることで他の筋肉の代償的な活動を抑制し
LTやSAの活動を効果的に高めていると考えられます

2. 肩甲骨のポジションと筋線維の方向

BRDALとBRALにおけるLTとSAの活性化の違いは
肩甲骨の外転角度と筋線維の方向が
関係していると考えられます

BRDALでは肩甲骨が約145°外転されたポジションで
LTの活動が最大化されます
このポジションはLTの筋線維の方向と一致し
より効率的な筋収縮を促すと考えられます

一方、BRALでは肩甲骨を180°まで外転させます
このポジションは肩甲骨外転の最終域にあたり
肩甲骨後傾が最大となるポジションとされています
また、SAの筋線維はBRALにおいて短縮位となるため
より効率的な筋収縮が促されると考えられます

3. まとめ

肩甲骨の後傾に関わるLTとSAを効果的に活性化するには
体幹を安定させた状態で行う
ロッキングバックワードが有効と考えられます

特に

  • LT: ロッキングバックワード対角腕挙上(BRDAL)

  • SA: ロッキングバックワード腕挙上(BRAL)

がそれぞれ効果的です

これらの運動療法を選択する際は
肩甲骨のポジションと筋線維の方向を
考慮することが重要となります

下部僧帽筋(LT)と前鋸筋(SA)を活性化し
肩甲骨の後傾のともなう
肩関節の安定性に
ぜひ参考にしてください

※今回、参考・引用した文献はこちら↓


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