見出し画像

「あのこは貴族」がよかった

 本当は、2月に観た映画の感想でもまとめようと思ったのだが、土曜の朝一に観に行った「あのこは貴族」が想像以上によかったので、その話をしたい。

 あらすじについては、ざっくりいうと東京生まれ東京育ちの華子と地方で生まれ上京した美紀という対照的なふたりがそれぞれ少しずつ自由になっていく話。(だと思っている)いわゆるシスターフッドムービーというやつらしい。ちなみにこの映画で初めてこの単語を知りました。(笑)

 二人が出会う中盤までそれぞれの物語で進む。東京生まれ東京育ちで、中流階級で生きる華子は周囲に結婚を急かされ、お見合いや知り合いのつてで紹介をしてもらうがなかなかいいひとに出会えない。仲良しグループの大半は結婚し、残るは華子とバイオリニストの逸子だけ。逸子は「いつでも「ひとりで生きていける人」になりたい強い女性だ。やりたいことも明確にあるし、意志もはっきりしている。一方で華子は周りに流されるように婚活を続ける。そして、その中で出会った幸一郎と結婚する。一見幸せそうに見える華子の生活はどこか息苦しい。 一方の美紀は、大学入学を機に上京したものの、親の都合で学費を払うことが困難になり、水商売で学費を稼ぐことに。結局、バイトと学業の両立はできず大学を中退する。その後、客に紹介された会社に就職。こちらも一見は田舎から出て自立した生活送っているように見えるが、美紀自身はくすぶっている。私はこの映画の中盤までが見ていてとても苦しかった。一度は大学で上京(正確には神奈川だが)し、その後地元で就職した。地元に戻ってからは周囲から結婚の話ばかりされ、一度はお見合いもした。華子と美紀の一部は私の一部と同じなのだと感じてしまったから苦しかった。この状況から出たいのに、何をどうしたらいいのかわからない。これで本当にいいのだろうか。そんなことを考えて進めない。結局、都会にいても田舎にいても苦しいのは変わらないのではないか、とここまでを見て思った。

 しかし、二人が出会ってからはすこしずつ状況が変わっていく。華子は疑問を抱きながらも結婚し、幸一郎と生活するが徐々に距離を感じ始める。同じ頃、美紀は地元の友人と起業することを決め、くすぶった日々から脱却する。正直、映画をみるまで私は、華子と美紀、まったく対照的な二人が仲良くなって、お互いが大切な存在になって、男なんて関係ない!楽しく生きようせ!女は強い!みたいな展開になるのだと思っていた。だが、違った。華子と美紀は初めて顔を合わせてから、終盤で再会するまでまったく関わりなくお互いの生活をする。華子も美紀もお互いのグループの親友と絆を固くしていく。それが、とても現実的でいいなと思った。現実は、結局同じ階層の人間と生きていくのだ。そして、終盤で再会した二人は、華子の家のベランダで東京タワーを見ながらアイスを食べる。義母からなかなか妊娠しないことを心配されて「体温めてね」と言われた後に嬉しそうにアイスを食べる華子がよかった。このベランダのシーンが私は好きだ。美紀の「そっちの世界って、うちの地元と似てる。生まれたところから一度も出ずに親の人生トレースしてる」という台詞が刺さった。田舎と都会、正反対の場所にも関わらず、中で生きる人は全く同じことをしている。上京した美紀のほうがよっぽど東京を満喫している。この台詞を聞いて、それは田舎でも同じことだなと感じた。都会からきた人のほうがよっぽど田舎を楽しんでいる。結局みんなどこに行っても同じで、最初からあったものには目を向けていない。どこにいても苦しいだけと思ったのは、自分で自分を苦しくしているから。どこにいたって同じなら、ここでも自分次第でなんとでもなるんじゃないかと思った。映画を見終わったころには、久しぶりによく晴れたせいもあってかなんとなく心が軽くなった気がした。

 あと、この映画はいいかんじの台詞が多かった。上で言ったベランダのシーン以外にも、「みんな落下傘部隊みたいに結婚した」「男は女のこと、愛想を振りまいて空気を循環させるサーキュレーターかなんかだと思ってんじゃないの」の比喩表現が好きだ。それから、美紀と友達が起業を決心するときに話していた「アソコの脱毛したほうがいいよ。そうしたら介護してもらう時にきれいにお尻を拭いてもらえる。今するべき自己投資は脱毛!」と言っていたのもとても好きだった。

 今、同じ年代で同じように悩む彼女たちを映画館で見ることができてよかったと思う。これが、数年後30歳を過ぎた頃に自分が見ていたらここまで刺さっていなかったかもしれない。数年若くてもたぶんあの頃の私では、ここまで心が震えなかっただろう。今、この時、ここにいる私が見れてよかった。そう思える映画だった。


 最後に、映画の話とは逸れるが、2月はインプット中心の月にしようと思って、映画を見て本を読んだ。そして、偶然が重なった結果だが、いろんな人とじっくり話す機会が多かった。その中で感じたことや思ったことを何か形にしたい。そう思うと今の私ができる手段は小説だった。今、私は猛烈に小説が書きたい。それが二次小説であろうとオリジナルであろうととにかくこの想いたちはすべて小説の中で吐き出したい。でもとりあえずは、眠いので寝よう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?