【リバース:1999】カモメと6の悲しき物語【元ネタ考察&解説】【reverse1999】
今回は『完全』を追い求めた籠絡の美男『6』の原型について、考察を交えて解説をしていきます。
では初めに『6』のキャラクターモチーフになっている人物に考察していきます。
まず本源の『知恵の伝承』から考えていきますが、文化1の『ピタゴラスの継承者』から察するに『黄金の詩』に関連性がある人物であることがわかります。
『黄金の詩(Golden Veses)』とはピタゴラス教団が創ったとされる啓蒙的な教えのことであり、この教えは新プラトン主義によって引き継がれていきました。
ということは『6』のモデルとなってる人物は、新プラトン主義者で『責任』が求められ『戒律』と関連性のある人物になります。
この条件に当てはまるのは新プラトン主義の創始者であるプロティノスの弟子であった『ポルピュリオス』が妥当ではないかと考えました。
ポルピュリオスのいちばん有名な話は、師であるプロティノスが書いた本の『エンネアデス』の編集を行っていたことですが、他にも彼は哲学分野で多くの貢献をしており、
ホメロスの『オデュッセウス』とプラトンの『洞窟の比喩』の類似性を解いた『ニンフの洞窟』や、アリストテレスの思想を汲み取り独自の考察を取り入れた『ポルフィリアンの木』は現代の生物分類学の基礎となりました。
また彼は多くの戒律を創っており、中でも有名なのは『反キリスト教論』です、キリスト教徒の考えを否定する本を15冊も執筆しております。
そしてこの話は『6』の台詞の『パンを裂いてはならない』と言う発言と関係していると考えられます。
ユダヤ教やキリスト教においては、パンを裂いて分け合う『Break bread』という風習があります。
つまり6の台詞はキリスト教の教えと反していることから、ポルピュリオスの反キリスト思想を表しているのではないかと考えました。
次は6の神秘術の元になっている人物について考察をしていきます。
まずは本源の『洞窟の賢人』とミディアムの『均衡』に関連性のある人物を辿っていきます。
まずミディアムの『均衡』ですが、これは文化2に書いている『自然の均衡』という言葉が大きなヒントになっていると考えました。
”自然の均衡”は『自然法』を意味していると考え、『自然法』のルーツに当たるプロトンのティマイオスが関係していると考えました。
プラトンは言わずもながら第5章のテーマになった『洞窟の比喩』を書いた人物で、本源の『洞窟の賢人』とも結びつくので、6の神秘術の元になっているのは古代ギリシア哲学者のプラトンが妥当であると考えました。
プラトンの大きな実績にはピタゴラスのイデアの思想から確立した『イデア論』が有名です。
そして彼もピタゴラスと同じく幾何学を神聖なものだと考え、幾何学体からなる立体を宇宙を構成する5つの元素に見立てた『プラトン立体』をティマイオスにて提唱しました。
ちなみに6が持っているのは20個の正三角形からなる『水』を表すプラトン立体です。
次に彼が被っている王冠に関して洞察を深めていきますが、おそらくこれはプラトンが『国家』にて提唱した『論理の冠』であると考えました。
『論理の冠(crown of ethics)』とはプラトンがピタゴラスのイデアの発想から構築した『善のイデア』という概念の事です。
ここで言う”善”とは俗世的な概念ではなく、超越的な存在である一者(神)との同一化を善と定義した考えで、プラトンは生涯にわたって超越について探求しておりました。
ちなみにこの『善のイデア』から派生して『洞窟の比喩』が生まれたり、新プラトン主義に引き継がれプロティノスによって『エンネアデス』が提唱されました。
次の疑問に6の台詞に多く登場するカモメについてですが――
このカモメは彼の『冠』を奪い去ったり、幾何学体を好むと言っております。
ここで私はカモメには『騙される人』というスラングが有ることから、”プラトンの思想を好み、”騙された”逸話のある人物”であると推測しました。
そしてこの要素に当て嵌まったのがプラトンの弟子であり恋人でもあったとされる『ディオン』という人物でした。
ディオンは簒奪者として恐れられていたシュラクサイの暴君ディオニュシオス1世の義兄弟でした。
ディオンもまたシュラクサイの王子であったため粗暴な性格でしたが、シチリア島で偶然出会ったプラトンに感化され、彼の”善"の思想に当てられて心が燃え上がったと言います。
そしてディオンは暴君のディオニュシオスもプラトンと話せば自分と同じように改心するだろうと考えシュラクサイにプラトンを呼びました。
しかしプラトンは自身が作った『哲人王』の話を持ち出し、暴君を否定したことでディオニュシオスの怒りを買い、プラトンは奴隷として売られてしまいます。
程なくしてディオニュシオス1世は亡くなり2世が跡を継ぎますが、政治に対し無関与で傀儡の王となっていたので、ディオンは王を矯正するため再びプラトンに強く懇願し、再びシュラクサイに戻ってくるようお願いしました。
プラトンは一度ひどい目に合ったにも関わらず要請に答え、2世の教育は彼に『暴君にはならない』と誓わせるほど成功しました。
しかし2世に気に入られたプラトンは城に幽閉され、一方ディオンは2世の嫉妬を受けて、プラトンとの関係を断つために追放されてしまいました。
プラトンは2世にディオンに対する非道な仕打ちを辞めさせるように訴えディオンを引き戻しますが、プラトンは2世からの異常な愛や情勢を鑑みてシュラクサイから身を引きます。
一方、ディオンはプラトンの説得を無視しディオニュシオス2世に反旗を翻しクーデターを起こし2世から王の座を奪います。
しかしながらディオンの友人で同じプラトンの弟子であったカリプスが、ディオニュシオス2世のスパイになり、ディオンは彼に裏切られて暗殺されてしまいました。
こうして悲劇は幕を閉じます。
プラトンにとってこの一連の騒動は酷く悲しい出来事ではあったが、この経験を得て彼は『自然法』のルーツとなる『ティマイオス』を書き上げました。
プラトンが何度も危険な目にあったにも関わらず4度もディオンの召喚に応じた事や、ディオンが主君や友人に裏切られた事から、『カモメ』はディオンを表しており、『冠』はプラトンの比喩になっているのではないかと考えました。
最後にユーディモの『ハヤブサ』ですが、これはおそらくギリシア悲劇の一つ『オデュッセイア』が関係していると考えました。
オデュッセイアとはトロイ戦争でトロイの木馬作戦を立案したオデュッセウス王が主人公の物語で、彼は戦争の後様々な混乱に巻き込まれ、妻と20年間離れ離れになってしまうという悲劇です。
道中でオデュッセウスはキルケーという洞窟に住まう魔女に好かれて幽閉されるのですが、キルケーとは古典ギリシア語で『ハヤブサ』を意味することから、洞窟の中にいるハヤブサは『キルケー』の比喩になっていると思われます。
補足としてポルピュリオスがこの『キルケーの洞窟』の物語とプラトンの『洞窟の比喩』の類似性に対して言及していることから関連性は高いとおもいます。
またオデュッセウスは劇中で『曲がりくねった男』と形容されていることから、6が手にしている湾曲体はオデュッセウスを表しているのではないかと考えました。
では最後に6のルーツをまとめていきますが――
【本源】知恵の伝承=ポルピュリオス
【本源】洞窟の賢人=プラトンの洞窟の比喩
【ミディアム】均衡=ティマイオス
【王冠】倫理の冠=善のイデア
【カモメ】恋人?のディオン
【展示場所】エーゲ海=アイギナ島
【展示開始】80年代2月13日=???
【ユーディモ】ハヤブサ=ハヤブサ星雲
キャラクターモデルは新プラトン主義創始者であるプロティノスの弟子、ポルピュリオス
神秘術のルーツはプラトンという事になります。
つまり彼は自らをバジレウス(王)と名付けたポルピュリオスや、哲人王を説いたプラトン、そして哲人王になれなかったディオンやシュラクサイの王達、それからトロイ戦争の英雄であるオデュッセウス王などの…
これらの繋がりから、6は『王』をテーマにした存在であると考えました。
最後に彼のイベントである『長夜の行跡』についてですが、大本の話はギリシア悲劇の中でも最も悲惨な物語『オイディプス王』が元になっています。
『オイディプス王』はアポロンから『お前は父を殺し、母と目合う運命である』と神託を受け、それを回避するため奔走するが、結局は神託通りの運命になり、絶望したオイディプスは自身の目を切って盲目になる、という物語です。
オイディプスは生まれて直ぐ親に洞窟に捨てられ、足をブローチで貫かれ鎖で繋がれていたりと、6の特徴と関連性は高く、彼自身も運命から逃れられない『オイディプス』と自分を重ねておりました。
しかしながら最終的に6は自分が『オイディプス王』ではないと否定しました。
そして最後に彼が不意に思い出した文章ですが、断言は出来ませんが『オデュッセウス』が溺れた時に女神レウコテアに助けられるシーンなのではないかと思われます。
タイトルの『長夜の行跡』からしても、6が選んだ寓話はやはり運命に立ち向かった『オデュッセウス』なのではないかと考えました。
ちなみにプロトンが『国家』の中で『オイディプス王』を嫌らう発言をしていたので、そこからインスピレーションを受けた物語になっているのではないかと推測しました。
今回の考察は以上で終わります。
黄金の鎖
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