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戸田真琴さんと渋谷の大盛堂書店でトークイベントをします。

7/26(水)に、新刊『彼女と僕がしたセックスは動画の中と完全に同じだった』を集英社より発売することになりました。その刊行記念イベントを、渋谷の大盛堂書店さんで開催します。日時は7/29(土)の15時からで、ゲストは、元セクシー女優で、現在は文筆家・映画監督である戸田真琴さんです。

戸田真琴さんとは特に面識がないので、急に戸田真琴さんとトークイベントをするのは突飛な印象を受けるかもしれません。まぁ、トークイベントは別に突飛であったとしても何の問題もないとは思うのですが、実際のところは突飛なことではなく、個人的に、戸田真琴さんは大きな影響を受けている作家の一人であります。

新刊の『彼女と僕がしたセックスは動画の中と完全に同じだった』は、相手のことが好きという気持ちと、自分のことを受け入れてほしいという気持ちと、セックスをしたいという気持ちが全て一緒だった自分のセックス観ついて、他人と関わる中であれこれ悩みながら書いた本です。

僕が文章を書く際に、もっとも重要で、もっとも大変で、もっとも気力が必要だと思っていることは、いかに自分が自分の経験した出来事に対して、あるいは、自分の中に生じた感情の動きに対して、目を曇らせることなく、素直な気持ちで言葉を使って捉えることができるのか、という点にあります。

そのために、ご飯を食べたり、運動をしたり、部屋を片付けたり、部屋の照明の具合を変えたり、お酒を飲んだり、音楽を聴いたり、散歩をしたり、カラオケに行ったり、なんとか集中して自分と向き合える精神状態になれるよう、様々な試行錯誤をしながら文章を書いているのですが、その中の大きな一つの行為として、読書をするということがあります。

文章を書く際にする読書の仕方は、普段の読書とは異なるものになります。なにか新しい知識がほしいとか、新しい考え方を取り入れたいというよりかは、その本がいかに自分自身と向き合う力を与えてくれるか、ということが本を選ぶ際の目的になり、そのような力を与えてくれる本を傍らに置きながら、自分の文章を書くようにしています。

『彼女と僕がしたセックスは動画の中と完全に同じだった』を執筆している時に読んでいた本が、戸田真琴さんが2020年3月に出版された『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』というエッセイ本でした。

この本は、戸田真琴さんがAV女優であった時期に書かれたもので、他人から性愛の対象として消費されることに疑問があり、処女を守っていた戸田さんがなぜAV女優になったのか、また、AV女優になってから更にぶつかった消費されることの苦悩などが、飾らない素直な言葉で書かれていました。

そう、この業界の中で、絶対にすり減ることのない何かを胸の内に持っていられたならば、私の勝ち。そう思った。
これから私は、たまたま自分と家族の心の方針で守り続けてしまった「処女」という付加価値さえも武器にして、この業界で、「消費」という概念へ戦いを挑むのだ。(p30)

戸田真琴『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』

戸田真琴さんという人は、机の上で頭でっかちに考えるのではなく、身体を使って理性でモノを考える方なのだな、あるいは、なにをしようがその光を消すことのない理性というものに全身を賭して挑戦する人なのだな、と読みながら思いました。僕もセックスについてなにか文章を書くのであれば、そんな文章を書く戸田真琴さんに、あるいは、戸田真琴さんが書く文章を読むような人が、少しでも何か想うようなところがあるくらい強度のあるものを書かなければ、と、勝手に自分の仮想読者のように思いながら、自分の文章を書いていたことを覚えています。

人との出会いがそうであるように、本との出会いにおいても、自分が出会うべき瞬間に出会えたな、と思えることがあります。僕にとって戸田真琴さんの『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』は、自分が読むべき瞬間に出会えたと思える本でした。

そんな戸田真琴さんですが、今年の5月に『そっちにいかないで』という私小説を出版されました。

刊行のタイミング的にも、私小説というテーマ的にも、近しいものがあったので、トークイベントをしたら面白くなるのではないかと思い、ゲストとしてお声がけさせて頂きました。

しかし、イベントを開催するにあたって、ひとつだけ心配事があります。

文章をたくさん書くイメージから読書家だと思われがちだけれど、集中力がないので本を読むのがとても苦手で、年間に1冊読むか読まないかといったレベルだし(p192)

戸田真琴『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』

果たして戸田真琴さんは、イベントまでに僕の新刊を読んできてくれるでしょうか!?
こんな風に本の中の文章と本人を重ね合わせて心配になってしまうのも、ありのままの自分について文章を描いている戸田真琴さんの本だからでしょう。

私小説を出している者同士なので、当日のトークは、本の話をしているのか、自分の人生の話をしているのか、よくわからないものになる予感がします。そんな不思議な会話をする機会は普段はないので、楽しみです。

イベントは予約抽選制で、下記の渋谷大盛堂書店さんのホームページから申し込みできます。申込期間は、6月28日(水)00:00 ~ 6月29日(木)23:59です。ご興味ある方はぜひお申し込みください。よろしくお願いします。


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