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新宿最高!新宿最高!

日本の首都は東京で、県庁所在地は新宿だ。

新宿はゴミと美しいものがミックスされた闇鍋だ。鍋の中では汚いものも美しいものも全て等しく無価値だから、わたしは安心して人混みを泳ぐ事ができる。

新宿はかっこいい人や可愛い人が多い。より正確に言えばそれを自分の武器として認識し、携帯している人が多い。素敵だけど抜き身の刃物たちが歩いているみたいで、その自意識に興奮するしゾクゾクする。その切れ味でわたしをズタズタにしてほしいとさえ思う。

新宿は人生の墓でありゆりかごだ。ここで人生を自らの意思で(あるいはどうしようもない事で)終わらせる人もいれば、新たな出会いと共に新しい人生の一歩を踏み出す人もいる。わたしは人生が終わる寸前の人のかがやきを見るのが好きで、自分でも新宿で人生終わりそうな事をたまにする。詳細は言えない。破滅主義なのかもしれないし、新宿が大好きなだけかもしれない。
新宿は(少なくとも、お金を持った状態で)死ぬのには向いていない。わたしは夜中一人で新宿を歩いた事がある。誰かにグチャグチャにされたくて、もう人生が終わってしまえばいいと思って。あるいは凍死も考えた。
でも人間は楽な方に流れる。欲望の塊のような街、新宿では、死ぬのにだって覚悟が必要だ。
わたしは気がついたら西口近くのケンタッキーにいて、チキンを食べていた。死にたいときでも皮肉なことにチキンはおいしかった。
新宿はクソだし最高だ。
愛だって食べ物だって暖かいベッドだって、あるいは人だってこの街ではお金で買える。
わたしは新宿にいる全ての欲にまみれた大きな子どもたち(年齢関係なく)が大好きだ。かわいいから。
一番好きなのはトー横の子たちかもしれない。
わたしも子供の頃家や学校に居場所がなくて、ネカフェで寝泊まりしてた時もあったから、彼らの気持ちはわかる気がする。気がしているだけだけど。
セックスでしか愛を感じられない子、常に来る明日への不安と戦い続けながらエナドリを煽る子、手を繋いで飛び降りる子、あれはかつてありえた私達の分岐の一つだ。
別に彼らを取り巻く状況を肯定してるわけじゃない。幸せの形はいくつあってもいいけれど、行き着く先が死や一生消えない傷跡ならそれは幸せじゃない。社会の無関心に新宿の子たちはどれだけ傷つけられただろう。わたしは彼らがずっと自分の手で幸せになれるような環境を作って欲しいと願っている。わたしも遠くで善人の顔をしているだけだけど。
新宿って街っていうより生き物みたいだ。
そこにいる人たちの感情も欲も全部飲み込んで糧にする巨大なぬるぬるした生き物。たぶん両性具有。
この街にいる全員が幸せになる事なんて決してない。あるとするならたぶん水道に麻薬でも流れている。それでも、わたしはこの街の人が好きで、幸せになってほしいと思っている。
わたしが五万人くらいいて、新宿の男も女もそうでない人とも全員と話してわかりあってセックスできたら楽しそうだなと思う。頭がおかしい。
けれどそれくらい、わたしは新宿が大好きだ。
新宿に、短歌を二つ贈ります。

この沼の底から温い手が出てる
服を脱いで頭から潜る

会社員キャバ嬢ホスト学生もみんな一緒に滑り落ちてく

わたしを遊びに誘うときは新宿でお願いします。連絡待ってます。

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