020 一過性のいい思い出みたいに振り返っているのに
男に染まる女なんかつまらないって、誰が言ったんだっけ。スマホに目を落としたまま呟いた「わかる〜」。ほんとはあんまり考えてない。好きなもの?あなたの好きなものを好きになりたいな。自分の好きなものを捨ててしまうわけじゃないけど。好きになれないものもあるけど。だってどんなにプレゼンされてもトカゲは可愛く見えないし、どんなに奇妙がられても地雷盛りラインは辞められない。それでもさ、付き合うまではあなたの気を引くことばかりを考えていたよ、私。重い女は苦手そうだからLINEの返信は少なくして、「今なにしてる?」なんて聞いたりしない。通知はわざと消してあなたからの返信を待たないように気をつけてたよ。ほんとはあなたのSNS、リプ欄まで覗いては可愛い子のホームまで飛んでいたけど。そんな粘度の高い私のことは知らなくていいからね。都合の良い部分だけ見ていてね。付き合ってからもあなたに嫌われないことばかり考えて、結局私ってあなたに染まっているというよりは、はみ出さない・動かない・置物みたいに空気に馴染むように息を止めている。そんな生き物。
なのにさ。私のなにが悪かったの?全部?だってあなたって本当に芯から自立している根っからサバサバしたすっぴんメイクが際立つ女の子が好きでしょ?どうしたって、私はそんな女の子にはなれないよ。真逆の生き物みたいな私にまんまと今でも騙されているの?なにそれ、ウケるね。トカゲのどこが可愛いのかは今でも全然分からないけど、またこうやって振られてからはあなたにそぐわなかったことばかりを考えているよ。執着心ばかりのドロドロとした私のことなんて一瞥もしなかったあなたは、きっと私のこと一過性のいい思い出みたいに振り返っているのに。ね。
020 一過性のいい思い出みたいに振り返っているのに
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