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おそらく恋みたいな話
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2024年7月の記事一覧

032 彩度の高い夏が嫌いだ

032 彩度の高い夏が嫌いだ

六月某日。夜はまだティシャツ一枚じゃ肌寒くて、寒い寒いと燥ぐ隣でパーカーくらい着てくればよかったねと腕をさすった。一歩先、振り返って「温めましょうか?」と腕を広げて見せる君に、「公道ですので遠慮します」と返しながら追い抜く。「フラれた〜」と結局後ろから抱き締められて、歩き辛いと文句を言いながらふたりで笑った。買ったばかりのアイスがビニール袋越しに素肌に触れて、冷たいはずなのに丁度よく感じた。暖かか

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