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アリューシャンのパドルをつくる【日記:2023/11/27】

・先週、車の故障でハイウェイで立ち往生してしまった時に助けに来てくれたジェイとマサがバンクーバーに帰る。空港まで送ってあげる。

・カナダ人男性にありがちないわゆる「男らしさ」の薄い、ほんわかした笑顔がチャーミングなジェイと、日本人のハーフで可愛いカタコトの日本語でいつも話しかけてくるマサ。一番可愛いカップルである。ヴィクトリアの近く、ソルト・スプリング島で農家をしているふたり。来年ハイダグワイを漕いだ後、バンクーバー島近辺を漕いで会いに行きたい。

・ふと思い立って、日記をnoteでつけてみることにする。

・いつも週報を書く時はしっかりと読み応えのある文を書こうと頭を悩ませ、時間を溶かし続けてしまう。週報を書く上でのメモになるような箇条書き的文章の羅列で日記を残しておけば、あとあと週報を書くときの助けになるかもしれない。noteに投稿するハードルを極限まで下げる。

・この箇条書きスタイルはいつもポッドキャストをニヤニヤしながら聞いているダ・ヴィンチ・恐山さんのnoteの投稿スタイルを取り入れさせていただいた。

・お昼にはヘラジカのローストをパセリや玉ねぎと炒め、オープン・サンドウィッチをつくる。ヘラジカは島で獲れない。本土に帰っていた同居人が父親が狩ったヘラジカ肉を持って帰ってきてくれたのだ。おやじさん、ありがとう。

・先日の嵐で庭が落ち葉や枝で荒れ放題になっている。大きな熊手のような道具で庭をrake(レイク)する。これもカナダに来て学んだ動詞。秋に「落ち葉をかき集める」を指す。知ってそうで知らない単語だ。英語にもまだまだ知らない部分がたくさんある。

・ある程度庭をrakeし終わったところで、ふたつの木材をトラックに積んで友達の家に向かう。カヤック職人であるキーランといっしょにパドルを彫るのだ。

・キーランと出会ったのは九月にあったパドル作りワークショップ。あのワークショップではハイダ・カヌーで使われるシングル・パドル(ブレードが片方にしかついていないパドル)を作った。今回は彼に直談判し、カヤック用のダブル・パドル作りを教えてもらう。

・カヤックはグリーンランドやアリューシャン列島といった極北の島嶼部で生まれた乗り物。場所によって用途も異なり、使われるパドルも異なる。今回は来年に計画している長距離ツーリングにぴったりなアリューシャン式パドル。

・水をつかむブレードが大きく、全体として短いグリーンランド式の
パドルに比べて、アリューシャン式はブレードは細めかつ全体として長い傾向にある。

・オリンピック競技のようにパドルを立てて全力で漕ぐのには向かないが、体幹を使って大きく漕げば腕に負担をかけずに長距離を漕ぐことができるのが、アリューシャン式の利点だ。

・キーランは自分の家の増築のため、今日はポート・クレメンツで大きな木材を収穫してきたらしい。巨大なピックアップ・トラックに乗せられた丸太を三人がかりで製材マシンの近くに下ろす。泥だらけである。

・「腹ペコだ。まず何か食べてからパドル作ろうぜ」棚から鹿肉の瓶詰めを取り出し、スパゲティソースを手際よく作る。よく下処理され、瓶詰めされた鹿肉は4、5年保つという。鹿狩り天国のハイダグワイならではのご馳走だ。

・キーランと一緒に丸太探しに行っていたフィンも一緒にスパゲティを頬張る。フィンは来年五月五週間かけて北海道を自転車旅行するらしい。楽しそう。

・食事を終えた後、パドル作りにかかる。シアトルやアラスカでカヤック作りに携わってきたキーランは職人モード。身長とカヤックの横幅からして、90インチ(2.3メートル)の長さで彫り上げることにする。なかなか長い。

・今回素材に選んだのはイエロー・シダー。日本のヒノキに近い木材だ。レッド・シダーに比べて圧倒的に密度が高く、硬い。そのため、細く薄く彫り込んでも丈夫なのだという。逆に、レッドシダーは脆いが極めて軽く、防腐性も高い。一長一短。

・ブレードの形、持ち手部分の形状などを相談しながら決め、木材に印をつけていく。

・一時間ほどかけてセンターラインと大まかなパドルの形状を木材に書き込む。今日はここまで。水曜日に村の学校の製材機を貸してもらって切り出すことにする。

・キーランと別れて帰宅すると、前の家に灯りがついている。お隣さんが帰ってきたんだ!

・ルークとレイチェルに会うのはもはや三ヶ月ぶり。ふたりは看護師。レイチェルの新たな資格習得のため、BC州内陸のど田舎でインターンをする必要があり、九月からハイダグワイを留守にしていた。

・娘のエレーナは十八ヶ月になっていた。もうがんがん喋る。アンクル・コウヘイと言わせたい。

・ハイダグワイで生まれ育った生粋の島んちゅであるルークにこの三ヶ月のことを話す。博物館のビストロで働き始めたこと、いろいろなポットラッチに参加したこと、サーフィンや釣りにチャレンジしたこと。自分ごとのように喜んでくれる。「そんなに楽しんでくれて、本当に嬉しいよ」

・三ヶ月ドッグ・シッティングしていたサルサとの共同生活はいったんおしまい。寂しくなる。自分で飼う犬はゴールデン・レトリバー一択になってしまった。

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