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大切なことは学校では学べない【24.1.27】

・ストーブに火を入れることから1日が始まる。いつもの通りパンケーキとスクランブルエッグで朝食にする。僕はルーティンに則って生活を送ることを心地よく感じる人間である。

・四連勤の最終日。午前中は昨日ダニエルに借りたインディアン法の本を読み始める。これでも一応法学部で国際法を勉強していたということを思い出す。

・空にはうっすらと雲がかかっていて、霧のような雨がうっすらと降っている。風はほとんどない。長距離ランをするには最高の1日だ。

・ルークがいつも練習していると言うコースを走る。今日はトレイルやビーチではなくハイウェイと砂利道を走るので、普通のロードランニング用シューズを履く。

・15キロを一時間半かけて走る、ロング・スロー・ディスタンス方式のトレーニングだ。僕の筋肉は始動が遅く、温まるまでに時間がかかる。短距離や突発的な運動には向かない。逆に、筋肉が温まって一度テンポを掴めば、継続的に長時間心地よく動いてくれる体なのである。

・こんなこと、21歳で自発的にトレーニングを始め、走り始めるまでは気づきもしなかった。高校までの体育の時間は(水泳以外)大嫌いで、いつも自分は「運動神経が悪い」と思っていた。そもそも、小中高の授業で学んだ大切なことなんてほとんどないように思える。学校で学べることは、「大切なことは学校では学べない」ということだ。

・生まれ育った大阪を後にし、進学で上京し、抱えきれないくらいの自由を得た。そこで気がついたのは、僕は自分が好きなことを、自分が好きなように、自分が好きなだけやらせてもらえれば、ある程度の成果を出す(出るまで頑張る)ということ。それは勉強や語学、日常の生き方とルーティン、ひいては毛嫌いしていた運動というものにも当てはまった。

・尊敬している人物や親しい友人の影響で何かを始め、感覚を得てバランスを掴み、好きになる。日々のルーティンのなかに組み込まれ、少しずつ毎日成長する実感を得る。そのようにして、ささやかながらも少なくない数のものを身につけてきた。「走る」ということは、その顕著な例だ。

・走りながらいつもは何も考えないのだが、今日はたくさんの思考が頭の中を巡った。このところ、ずっと強者・多数派による弱者・少数派への加害、そしてその歴史を語ることについて考えている。カナダの先住民抑圧、構造的レイシズム、ハイダグワイにおける個々の家族の現状。人間の尊厳に関わる問題だ。自分の祖国も他人事ではないのかもしれない。いや、そのまえに自分は日本のこともカナダのことも知らなすぎる。4月に旅するスカンディナヴィア北極圏のサーミ族の状況はどうなのだろう。

・もっともっと訪れられるべき場所があり、もっともっと読まれるべき本がある。会わなければならない人もいる。焦ってはいないけれど。

・そんなことを考えながら、巨大なスプルースの立ち並ぶ砂利道を走っていると、あっというまに一時間半が経った。酷使した筋肉を川に飛び込んでクールダウンさせる。

・昼ごはんにはタンパク質を多分に摂りたかったので、鹿肉の酒蒸しハンバーグと卵かけご飯をつくる。いつも鹿肉ハンバーグにはベーコンのみじん切りを少し混ぜていたが、今日は切らしていたので鹿肉ミンチのみでつくる。やっぱり少し旨みに欠ける。

・出勤するまえにスーパーに寄る。白菜の漬物を作りたくて大ぶりの白菜(2キロほど)を買ったら、十五ドルもする。どうせ白菜だし、とあまり値段も見ずにカゴに入れていたので仰天する。いくら酷いインフレのカナダといっても、これはいくらなんでも高すぎる。

・バンクーバーで買ってきた料理酒を切らしてしまったので、酒屋に日本酒を買いに行く。月桂冠の750ml瓶が十ドル。安い。バンクーバーで買った同じ容量の料理酒が九ドルほどだったので、お買い得に感じる。セゾンスタイルのクラフトビールも買っておく。

・職場に向かう。クライアントのふたりは午前中に村のレスリングクラブの試合を見に行っていたようで、ご機嫌だ。夕方から一緒に生地をこねてピザを作り、焼きたてピザを頬張る。寝るまで読み書きを一緒に勉強する。平和な1日だった。

・帰宅後はセゾンをひと缶開け、ゆっくりする。となりのタモが送ってくれたドキュメンタリーを鑑賞する。彼の一作目の映画。

・登場するのは、彼自身スノーボーダーのタモをはじめとして、BC州に拠点を置き、自然の中でのスポーツに打ち込むアスリートたち。彼らは純粋にスポーツを追求するということより一歩奥に踏み入り、先住民たちが主導する自然環境保全と脱植民地化のための運動に参画していく。さまざまな先住民コミュニティとアスリートたちの関係が描かれている映画だ。

・自分たちの守るべきものがあるって素敵なことだな、とつくづく思う。自分には彼らほど、自らを賭けて守りたいと思えるものがあるのだろうか。

・特定のひとつのものにすべての労力と時間と人生を賭けられる生き方は、今の僕にはできない。挑戦したいことも、守りたいものも、行きたい場所もまだまだあまりある。今はより大きなPictureで世界を見て、人々の生き様を目に焼き付けて、本当に守りたいものを見つけていきたい、と思うのである。

・好きなチャンネルが新しいビデオを公開していた。いつもトランジションがユニークで、27分間も英語のスペリングについて解説している動画なのにも関わらず、飽きずに見切ってしまう。


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上村幸平|kohei uemura
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